第250話 リク達の夕食と城への帰還
「リクさん、以前父さんに案内された時の事は覚えてる?」
「え? うん、覚えてるけど?」
「その時、美味しい料理を出す店に連れて行ってもらったわよね? その店ならどうかしら?」
「あぁ、そうだね。あの店なら良さそうだ」
「……どんな店なんだ?」
「マックスさん達が、王都で美味しくてよく行ってた店を教えてもらってたんだよ」
モニカさんが以前マックスさん達に紹介された店の事を言って、俺もその店の事を思い出した。
そう言えば、以前ユノのご機嫌を取るために連れて行った事もある。
……なんで忘れてたのか。
「へー、そんな店があるのね。美味しいの?」
「うん、紹介された時食べたけど、獅子亭に負けないくらいの味だったよ」
「獅子亭に……それは是非ともいかないとな!」
「あそこなら、色んな料理もあるし……肉メインの料理も豊富そうだったわね」
フィリーナに答えたら、ソフィーが激しく反応した。
そういえば、ソフィーは獅子亭の……マックスさんの料理のファンだったっけ。
他の皆も異論はないようだし、今日はその店で美味しい肉料理を頂く事にしよう。
あ、そういえば。
「あそこって確かデザートがあったね。な、ユノ?」
「あったの。美味しかったの!」
「「「デザート!」」」
デザートという言葉を出した瞬間、モニカさんとソフィー、フィリーナまでもが反応した。
唯一あまり反応が無いのはアルネだけか……まぁ、女性陣にはやっぱりデザートという言葉は魅力的なのかもね。
「早く行くわよ、リクさん!」
「そうだ。のんびりと歩いていては、デザートも料理もなくなってしまう!」
「明日は……少し少なめに食事を頂くとして……今日はいっぱい食べるわよ!」
「わかった、わかったから。ちょっと落ち着いてー」
「……はぁ……まぁ、美味い店という事なら、問題はないだろう」
デザートのために急ごうとする女性陣を追いかける。
アルネは溜め息を吐いているけど、特に反対でもないみたいだ。
まぁ、女性陣の反応に呆れてるだけ、かな。
「キューを、早くキューを用意するのだわー」
「わかったわかった。エルサの分のキューも用意するから、少し落ち着いてくれ」
頭にくっ付いて、キューを要求して騒ぐエルサを宥めながら、王都の店へと急いだ。
「はぁ……美味しかったわ……」
「デザート……素晴らしい物だ」
「美味しかったわね。エルフの集落には、こんな美味しい物ないわ……」
「肉料理も、あまり食べないが……これなら何度でも食べに来たくなるな」
「美味しかったのー」
「キューはやっぱり最高なのだわ。おかげで口の中がスッキリなのだわ」
皆が肉料理やデザートを食べる中、エルサだけはキューを食べてた。
店に来る途中、センテから取り寄せて販売してるって店を見つけて、その店で大量に買ったからね。
ワイバーンの焦げ肉を大量に食べたのにも関わらず、数十個も積まれたキューを食べるなんてねぇ……。
おかげで、エルサは満腹とキューを食べられた満足感からか、テーブルの上でお腹を上にして転がってる。
……相変わらずだけど、本当にそれで良いのかな……食いしん坊ドラゴン……。
「それじゃ、また明日。城を訪ねるわ」
「わかった、それじゃあね」
「ではな、リク」
「また明日ねー」
「では」
「おやすみなのー」
「バイバイなのだわ」
食べ物屋を出て、城へ向かってる途中でモニカさんやソフィー達と別れる。
皆と挨拶をして、俺とエルサは城へと歩いて行く。
昨日はユノが俺の部屋に泊ったから、今日はモニカさん達と一緒らしい。
モニカさんに手を繋がれて、仲良く歩いてる姿を見送って、俺は城へと戻った。
「ただいま帰りました」
「お帰りなさいませ、リク様」
「おかえりー、りっくん」
部屋に戻って、ヒルダさんと姉さんに挨拶。
いつも俺が帰って来た時、部屋にいるけど……姉さんは女王の仕事、大丈夫なんだろうか?
まぁ、ヒルダさんが何も言わないんだから、大丈夫なんだろうと思う。
「お疲れ様、りっくん。ちょっと遅かったわね? ヴェンツェルはもう帰って来てたわよ?」
「リク様、夕食はどう致しましょうか? 必要であれば、今から用意させますが」
「あぁ、夕食は食べて来たから大丈夫です。ありがとうございます。帰りに皆で夕食を頂いて来たからね、それでこれだけ遅くなったんだ」
ヴェンツェルさんはもう城に帰って来てるらしい。
俺達はゆっくり城下町で夕食を頂いていたから、それなりの時間が経ってる。
帰って来てて当然か。
「畏まりました」
「それよりりっくん、ありがとね。ワイバーンの皮……予想以上の量だわ」
「それはなによりだよ。量が多いおかげで、ちょっと時間がかかったけどね」
夕食の準備が必要ないとわかり、ヒルダさんは部屋の隅に待機……そんな所に行かず、一緒にソファーで寛いでくれてもいいんだけどなぁ……。
侍女という役職上、それはできないか……。
ヴェンツェルさんと新兵さん達が持って帰ったワイバーンの皮は、姉さんの予想より量が多かったみたいだ。
満足気な表情をしてる。
姉さんの役に立てたのなら、嬉しいね。
「加工にはちょっと時間がかかるけど……半分以上の兵士に防具として支給できるわ」
「そう。それなら良かった。……どんな兵士に支給するの?」
「そうね……ヴェンツェルやハーロルト、軍の高官と話し合わないといけないと思うけど……多分、小隊長や中隊長なんかの、隊長クラス以上に支給されると思うわ」
「ふむ……」
「何か、別の考えでもあるの、りっくん?」
予想以上にワイバーンの皮が集まったとはいえ、さすがに兵士全員に行き渡る事はないようだ。
まぁ、10人や20人っていう規模じゃないから当然かな。
姉さんの言う通り、隊長クラスに支給するのもわかる。
隊で行動している時、隊長が真っ先にやられてしまわないよう、しっかり防具は固めておくべきだろうからね。
隊長がやられて隊の指揮ができなくなったら、軍隊として機能しなくなる可能性が高い……というのを以前どこかで聞いた事がある……多分、日本にいた時の漫画か何かだろうけど。
でも、それ以外に狙われて、やられてしまう可能性が高い兵士にも支給してあげたい。
兵士が減らなければ、それは軍全体にとって良い事でもあると思うから。
「そうだね……新兵さん達にも分けてあげられないかな?」
「新兵? それはまたどうして? 新兵と言うだけあって、まだ兵士になったばかり……戦力としては考えにくい人達よ?」
エルサを頭にくっ付けたまま、荷物を置き、姉さんの座ってるソファーの向かいに座りながら言う。
姉さんは、俺が新兵と言った理由がわからないようだ。
さっき考えた理由から、重要度は確かに隊長クラス以上の方が良い……というのはよくわかるんだけどね。
「えっと、新兵って今姉さんが言った通り、戦力としては低いのは当然でしょ?」
「そうね。訓練もまだ始めたばかり……当然戦える能力は低いわ」
「だけど、これから訓練をして、兵士として戦力になっている途中。その途中で、何かにやられてしまわないように、防具を強化するというのはどうかな……と考えたんだ」
「成る程ね……新兵を減らさないように……か。戦闘にになったら新兵は真っ先にやられてしまうわ。それを防ごう、という考えね?」
「うん。新兵が減らなければ、これから先の軍のためにもなると思うんだ」
新兵が少なくなれば、当然また兵士を補充する必要がある。
この国の兵士が志願制なのか、徴兵制なのかはわからないけど、兵士が減らなければそれだけ補充の必要が少なくなると思ったんだ。
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