第233話 魔物の群れとの戦闘
「そういえば、エルフは何で森歩きが得意なんだろう? 集落では住んでる場所と森が近いから、わかるんだけど……別の森でもそうなの?」
俺が知ってる物語の中では、森を始めとした木々なんかの自然と共に暮らしているからだとか、自然魔法が得意だから……とかの理由は色々あった。
でもこの世界のエルフ達は、森を大事にしてはいるけど、そんな感じには見えない。
風の魔法は得意そうだけど、自然魔法というわけじゃ無いからね。
それに、フィリーナ達を見ていると、人間とそんなに変わらない暮らしをしているし……自分達の住んでる森ならともかく、別の森でも色々とわかるものなんだろうか?
「そうね……エルフは人間と違って、森の息吹のような物を感じ取れるの。……あ、そこ、魔物の痕跡があるわ」
「木々の声……と言うと少し大げさなのだがな。森の木がどこにあって、どう育ったのか、森に入り込んだ異物……この場合は魔物だな。細かい場所なんかはリクの探査魔法の方が精度が高いが、それを教えてもらえるようになっている」
「結構、感覚に頼る部分が大きいけどね。苦手なエルフもいるわ。……多分あっちね、あちらの方角に集まっている様子があるわ」
「痕跡も続いているな」
「へぇー、そうなんだ……」
フィリーナとアルネに森の案内を任せながら、説明を聞く。
という事は、俺が集落に行った時、探査魔法を使わなくても魔物がいる場所がわかったのかな?
あ、いや、アルネが精度は魔法の方が高いと言っていたから、どこにどんな魔物が何体いるのか……なんていうのまではわからないんだろう。
だからエルフは、森の中でも迷う事はないんだな。
「そろそろいるはずよ……」
「詳しい数まではわからないが……かなりいるようだな……」
しばらく森の中を進んだあたりで、フィリーナとアルネが止まる。
そろそろ魔物が出てくる頃合いと言う事で、モニカさんとソフィーが武器を構え、臨戦態勢を整える。
俺は、一応こっちに向かってくる可能性もあるから、結界を頭でイメージしながら軽く準備。
俺は戦闘に意識を向けていれば、キマイラの攻撃でも大丈夫なんだけど、ユノも一緒だからね、怪我をしないように、念のためだ。
……ユノならすぐに反応して、避けるか倒すかしそうだけど。
「いるわ……上!」
「上? っ!」
「KISIII!」
フィリーナが叫んだと同時、モニカさんが見上げる頭上から、小さい影が襲い掛かって来た。
「エアーラットね! は!」
「KI……」
襲い掛かって来たエアーラットは、モニカさんが突き出した槍の一突きで、穂先に突き刺さり絶命する。
エラーラットは、異常に耳が発達したネズミだ。
その耳を広げて、ムササビのように木の上から滑空して襲い掛かって来る。
ネズミと言っても、大きさは人の頭くらいあり、その爪に引っかかれたり、噛み付かれたりすると、結構痛い……らしい。
「どんどん来るわよ!」
「援護する!」
「上は任せて! ソフィーは下にいる魔物を!」
「わかった!」
最初に襲って来たエアーラットを皮切りに、森の奥からどんどん魔物がこちらに向かって来る。
槍を持ってリーチの長いモニカさんが、上から来るエアーラットに対処し、剣でリーチが短く小回りが利くソフィーが、地に足を付けている魔物を倒すつもりのようだ。
アルネとフィリーナは、二人が追いつかなかった場合の援護だね。
モニカさんは、槍を短く持てばもう少し小回りが利くだろうけど、槍の長所を殺す事になるし、長く持てば森の木が邪魔をして動きが制限される……エルフの集落では少し戦いにくそうだった。
だから頭上からくるエアーラットに集中して、ほとんど制限されずに剣を振り回せるソフィーに地上の魔物を任せたんだろう。
「はっ! ……ふんっ!」
モニカさんが頭上から襲い掛かって来るエアーラットへ槍をまた突き出す。
直線で来るエアーラットは、避ける事もできず槍に体を貫かれ、さらにモニカさんがその槍を横に振って、ソフィーに襲い掛かろうとしていたエアーラットを叩き落とす。
地面に落ちたエアーラットはまだ生きていたが、動けない状態で、すぐにモニカさんが止めを刺す。
「助かった、モニカ!」
「これくらい何て事ないわ!」
「そうだ、な! はぁ! ふっ! たぁ!」
モニカさんに礼を言ったソフィーは、木々の隙間から襲い掛かって来るウルフを剣で切り裂き、さらに横から来たコボルトに振り向きざま剣を振るって首を斬り飛ばす。
最後に、今まで見た事の無い魔物が襲って来たのを、剣を突き出して、顔に突き刺し倒す。
……あの魔物は確か……モジャラとかいう魔物だったっけ……。
モジャラは全身毛むくじゃらの、毛玉みたいな魔物だ。
エアーラットと同じくらいの大きさで、フサフサの毛に覆われているのだが、その毛の色を自在に変化させる事ができ、地面の色や木々の葉や幹の色に変えて擬態するから、目で見るだけだと発見しにくい。
さらに、擬態してこちらが気付かない間に近付き、勢いよく抱き着いて来る。
毛玉だから、それ自体に危険はなさそうに思えるけど、お腹部分の毛が針のように尖って突き刺すんだそうだ。
人間の体を簡単に貫通するそうで、油断していると結構危険な魔物だと思う。
……まぁ、革の鎧なんかの鎧を着てれば刺さらずに体を守れるんだけどね。
「……そこ! 見え見えよ、カッター!」
「GIII!」
フィリーナが木の幹に擬態しているモジャラを、魔法で倒す。
マックスさんに聞いた話だけど、モジャラの見分け方は慣れれば簡単。
毛に覆われていない目の部分がキョロキョロして、獲物を探しているからだ。
注意深く見ていれば、青い目がわかってそこにモジャラがいる事が確認できる。
……もっとも、フィリーナ達エルフにとっては、森の異物との事だから、別の方法で見分けてるのかもしれないけど。
「危ないぞ、モニカ。ウインドブレイド」
「KIII!」
「ありがとう、アルネ!」
モニカさんが、右手側のエアーラットを槍で倒した瞬間、いつの間にか回り込んでいたのか、後ろからエアーラットが飛びかかって来る。
それに対し、アルネが魔法で突き刺してモニカさんを助けた。
フィリーナが、風の刃を飛ばすなら、アルネは風の剣だな……フィリーナの魔法は相手を斬り裂くため、アルネの方は相手を斬り裂いたり、突き刺したりと自由が利く。
ただ、切れ味はフィリーナの方が良さそうだから、どちらが強いという話でもないんだろうね。
「ふん! はぁ! てやぁ!」
「カッター! まだまだ来るわよ! カッター!」
ソフィーが、まとめて来るコボルトを、右から体を斬り、真ん中のコボルトの顔面に剣を突き刺し、左のコボルトが持ってるナイフで斬り付けて来るのを、右側に飛んで避け、突き刺した剣を引き抜いて、斬り付けて来たコボルトの首を斬り飛ばす。
その間、飛びかかって来るモジャラやウルフは、フィリーナが魔法で半分に斬り裂いて援護をしている。
奥からは、まだまだ魔物の気配が途絶えていない……結構、長い戦いになりそうだね。
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