第232話 次の目的地へ到着



「あそこね」

「みたいだね」


 予想通り、1時間も経たないうちに村の入り口に到着。

 入り口には、軽装で槍を持った人が10人くらい集まっている。

 ……結構物騒な感じだけど……どうかしたのだろうか?


「あのー」

「何だ? この村に何か用か?」

「私達、冒険者ギルドで依頼を受けて来たんですけど……?」

「冒険者の方たちでしたか! これは失礼しました!」


 モニカさんが集まっている人達のうち一人に話しかける。

 最初は訝し気だったその人も、俺達が冒険者だと知って、態度を変えて謝る。

 ……あまり冒険者に見えないのかなぁ、俺達って……。

 まぁ、小さい女の子に見えるユノがいたり、村の人達が冒険者を見慣れなかったから、と思う事にしよう。


「おーい、皆! 冒険者さん達が来てくれたぞー!」

「冒険者だって!?」

「ようやく来てくれたのか!」

「これで村は安泰だ!」


 モニカさんが話してた人が、こちらを同じように訝し気に見ていた人達へ声をかける。

 すると、皆歓迎ムードになって喜んでいた。


「あなた方が冒険者ですか……。失礼しました。私、この村の代表をしております、テオルと申します」

「モニカです、よろしくお願いします」


 入り口に集まっていた人達の中から、初老にも見える人が進み出て、自己紹介。

 代表のテオルさんか、覚えておこう。


「申し訳ありません、あまり大きな村では無いので、大した歓迎もできず……」

「いえ、気にしなくても大丈夫ですよ」

「えーと、それで。冒険者さん達は、村の事情は?」

「ある程度は、依頼書から。村の付近で魔物が大量発生しているとか?」


 テオルさんに案内され、村の中にある家に入った俺達。

 ここはテオルさんの家で、先程奥さんが挨拶をして、お茶を淹れてくれた。

 テオルさんとしては、もっとちゃんと歓迎したかったようだけど、俺達にはこれで十分だ……そんな事を気にする人もいないしね。

 というか、村に入る前からモニカさんが前に立って話してるけど……やっぱりリーダーとしてちょっと不甲斐ない感が否めない。

 まぁ、今回はモニカさんとソフィーが主体の依頼だから……という事で納得しておこう。


「ええ。村の周りを囲む森や林、その中に広く魔物が発生しているみたいなのです。少数ならば、村の者でも対処出来るのですが……」

「数が多過ぎて対処できないのですね?」

「はい、その通りです……。あまり強くない魔物なので、1体や2体程度なら良いのですが……多い時は20体以上の魔物を目撃したと村の者の報告もありました」

「目撃した人は無事だったのですか?」


 あまり強い魔物じゃない……という事は、コボルトとかウルフあたりだろうか?

 ゴブリンもあり得るか。

 なんにせよ、まともな戦闘訓練もしてない可能性が高い村の人達が、弱いとはいえ数十の魔物に取り囲まれたらどうしようもないだろう。


「それは大丈夫でした。目撃した者はすぐに村に逃げ込んだので」

「村に魔物が入り込んだりは?」

「今のところは何とか……魔物は1体1体が弱いせいなのか、人がいる村にはあまり近寄ろうとはしません。ですが……いつ群れで襲って来るかわからないもので……有志を募って村の警備をしていました」


 さっき村の入り口で集まっていた人達は、警備をしていた人達なんだろう。

 村には複数の人間がいるから、弱い魔物はおいそれと近づかないかもしれないけど、群れるとそれも関係なく、襲い掛かって来る可能性が高い。

 村が襲われる前に到着できて良かった。


「王都へと依頼を出しに、村の者を走らせましたが……これほど早く来てくれるとは思っていませんでした」

「使いの方は、無事で?」

「ええ。王都で冒険者ギルドへ依頼を出した後、馬を調達したようで、それで戻ってきました」


 村は木々に囲まれてる場所にあるから、俺達がさっき通った場所も含めて、魔物がいつ襲って来てもおかしくない場所を通る必要がある。

 王都に依頼を出した人が襲われたりしなくて良かった……ゴブリンとかなら馬に乗って走れば、振り切れるから、それも大きかったんだろうね。


「それでは、この村の近くにいる魔物達の詳細を……」

「全てわかるわけではありませんが、私達が見た魔物は……」


 テオルさんとモニカさんとで、依頼の話が進む。

 俺とユノ、アルネとフィリーナは、お茶を飲んでまったりしているだけだ。

 ソフィーは一応、モニカさんの横でしっかり話を聞いてるけどね。


「リクさん、手出しはしないでね」

「わかったよ。まぁ、もしもの時は助けるけど……」

「それで良い。だが、もしもというのも無さそうだ」

「キマイラでは何も役に立たなかったから、私達は見ている側だったけど、今回は私達の番だからね」


 テオルさんとの話しを終え、村の入り口へと向かう途中、モニカさんから俺に手出しはしないでくれと言われた。

 話を聞く限り、この村周辺に数多く出る魔物はあまり強くは無さそうだ。

 ゴブリンでは無かったが、ウルフやコボルトは確認されているそう。

 それと、Dランク指定の魔物である、エアーラットが多く見られるらしい。


 全部Dランクで簡単に相手にできるだろうし、1対1の状況ならEランクでも相手にできる魔物だ。

 ただ、数が多くいるために、Cランク相当の依頼となっている、という事だね。

 1体1体は弱くても、群れて来られたら対処が間に合わず、噛み付かれたりして怪我をする。

 そしてそこからどんどん……という事になりかねないとの判断だ。

 Cランクであり、魔物の集団を何度も相手にした事のあるモニカさんやソフィーなら、問題なくこなせるだろうと思う。


「フィリーナ、アルネ、援護は頼んだわよ」

「任せて」

「エアーラットは素早い魔物だったな。なら、俺達が使う風の魔法が最適だろう」


 モニカさんとソフィーが前衛で魔物に向かって行き、後ろからアルネとフィリーナが魔法で援護をする。

 エルフの集落でよくやってたやり方だね。

 風の魔法は不可視な事以外に、火の魔法とかよりも相手に向かっていく速度が速いから、素早い魔物を相手にするものちょうど良い。


「ユノちゃんは、リクさんと一緒に見ててね?」

「ユノも戦いたいの……」

「今回は我慢してくれ。昨日はリクと一緒にキマイラを倒しただろう? 今回は私達の番だからな」

「……わかったの」


 村の入り口を出たあたりまで来て、モニカさん達はユノを説得。

 戦う気満々で剣を鞘から抜いてたからね、言っといて正解だった。

 ユノがいれば、低ランクの魔物がどれだけいようと一瞬でいなくなるだろうから。


「えーと、テオルさんの話だと、こっちよね?」

「そうだな。村を囲む森の中で……特に東側に多く集まっているようだ」


 村の東に広がる森の中で、よく村人さん達が魔物を目撃する事が多かったそうだ。

 森は村を囲んで北に伸び、俺達が来た南側は木々がまばらになって森では無く林になっている。


「俺が探査魔法で、魔物の位置を調べようか?」

「……リクさんの魔法は便利だけど、今回は見送っておくわ」

「そうだな……今回は森歩きの得意なエルフが二人いるから、その二人に協力してもらおう。その方が私達も森を歩くのに慣れることができそうだ」

「わかったわ。任せて」

「森の事なら、エルフ……というわけだな」


 今回は、俺の探査魔法にすら頼らない方針のようだ。

 森を歩くのは集落の時に散々やったけど、今回はあの時の森とは違う場所。

 場所が違えば、当然木の配置や育ち方、木の種類すら違うから、そういう事に慣れたい……という事なのかな。



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