第209話 パーティの話し合い
「それなら……私は冒険者に関する事ですね。王都に冒険者の知り合いは……少ないが、いないわけではありませんので」
「そう。ならソフィーはそちらの情報収集ね」
「リクさんが貴族になる話で……国にはどんな利点が? 叙爵する人を決める手間というのはわかりますが……嫌がるリクさんにお願いしなくてもいいのではないかと……」
「りっくんの事は、国内では既に有名なの……英雄としてね。他国にも名前が知れ渡るのも時間の問題だと思うは。そして、そんな人物が貴族になるという事は……」
「我が国としては、他国への牽制にもなるのです。英雄が貴族として領地を治める国。そして、ドラゴンも共にいる……と」
「りっくんの名前を利用するみたいで、私はこの考えがあまり好きじゃないけどね」
ソフィーさんは、俺達より長い間冒険者をして来たから、冒険者としての知り合いは多いのだろう。
センテで活動していたから、王都にいる知り合いは少ないかもしれないけど、いないわけじゃないからね、それに頼ってみるのも良いかもしれない。
モニカさんは、俺が貴族になる事での国として何の利点があるのか気になるようだ。
さっき姉さんが話していた、信頼できる相手を探して叙爵するという事の他に、英雄としての名前があるみたいだ。
俺自身は、英雄と言われる事にあまり特別な事は感じて無いけど、他の人の反応を見る限り、大量の魔物を倒した英雄というのは、他国に対して脅威になる事なのかもしれない。
……確かに、エルサが大きくなって攻めたりして来たら、一般の人達は恐れて逃げ出すだろうしなぁ……モフモフだけど。
「成る程……」
「他には……」
「私は……そうね……」
体感で約1時間ほど、皆と話し合う。
特にこれと言った意見は出るわけじゃなかったけど、皆の考えが聞けて有意義な時間だったと思う。
けど、やっぱり会議とかって苦手だなぁ……。
「それじゃありっくん、おやすみ」
「おやすみ、姉さん」
「では、失礼します」
話し合いが終わり、姉さんとハーロルトさんが退室するのを見送る。
ハーロルトさんに至っては、これからさらに会議のまとめだとか、情報の選別だったりとまだ仕事が残っているそうだ。
情報部隊っていうのも、大変そうだ。
……それと比べたら、ヴェンツェルさんは忙しそうじゃなかったけど……。
「それじゃ、私達もこれで帰るわね」
「今日は魔法を使ったからな。多少疲れがあるようだ」
「お疲れ様、フィリーナ、アルネ」
合同訓練の時、細かい魔法を使っていたから、疲れが出て来たんだろう。
エルフの二人も姉さん達に続いて部屋を出て行った。
魔物との戦いと違って、魔法を細かい制御をしながら使っていたようだから、魔力というより精神的な物かもしれないけどね。
どちらにせよ十分休んで欲しい。
「私達は……どうしようかしら?」
「時間的には帰る時間なんだがな」
「……眠いの」
モニカさんとソフィーさんは、これからどうするか相談している。
二人も疲れているようだけど、訓練に慣れているからまだ眠気とかは無いみたいだ。
宿に帰っても暇だから……なのかもしれない……。
ユノの方は、満腹になったうえで、さらに難しい話を聞いていたから眠くなってしまったようで、頭をフラフラさせ始めた。
「二人共、時間があるなら少し、相談しても良いかな?」
「何かしら?」
「リクから相談とは、珍しいな」
「……くぅ……」
ユノには悪いが、この機会に二人と相談をしようと思う。
フラフラしていたユノは、ソファーに横になって寝息を立て始めた……ヒルダさんが毛布を掛けてくれてるな、ありがとうございます。
とりあえずユノは寝かせておき、今のうちに二人に相談しておこう。
「これからの事なんだけど……王都にこのまま滞在するか、ヘルサルに帰るか……どうしようかと思ってね」
「昨日父さんに言われてた事ね」
「ふむ……そうか……ふふ」
俺とモニカさん、ソフィーさんは同じパーティだ。
皆がどう活動するのかを、俺一人で決めるものじゃないと思うからね。
しかし、ソフィーさんが何故か少し嬉しそうだ……何だろう?
「どうかしたんですか、ソフィーさん?」
「あぁいや、リクがしっかりリーダーとして頑張ってるのがわかってな。それに、皆にちゃんと相談するリーダーというのも珍しいからな」
「……そうなんですか?」
一応、俺がパーティのリーダーとなってるけど、そのあたりはあまり良く考えていない。
独断専行をしないように、皆にしっかり相談するように気を付けるくらいだね。
でも、ソフィーさんが言うには、そんなリーダーは珍しいらしい。
「冒険者と言うのは、我が強い者が多いからな。そんな者達がパーティを組めばどうなると思う?」
「……まとまって行動しない?」
「そうだ。パーティを組んだ最初はそれなりに行動するんだが……リーダーやメンバ-の誰かが勝手に決めて勝手に行動して……そうした理由で解散になる事が多い」
「でも、マックスさんやマリーさん、ヤンさんなんかは?」
我が強い、というのはわからなくもない。
ギルドで俺達に絡んできた人をはじめ、自分が一番だと考えている人も多いんだろう。
そういった自信を持ってないと、長年魔物と戦ったり、色んな依頼をこなしたり出来ないのかもしれないしね。
でも、マックスさんやマリーさん、ヤンさんなんかは、長年パーティとして続いてたらしいし、そういった人達がいないわけじゃないと思う。
「あの人達は珍しい例でもあるな。大抵はパーティを組んで解散……というのを繰り返す事が多いみたいだ。よっぽど意気投合していないと、長くは続かない……それを見ていたから、私は今までパーティに入らなかったというのもあるな」
「そうだったんですか……」
「その点、リクはしっかりメンバーの意見を聞いて、方針を決めるようにしているからな。これなら早々に解散何て事にはならないだろう」
「リクさんがワンマンに物を決める姿は……想像できないわね」
マックスさん達は、珍しい例らしい。
お互いがお互いに一筋と見えるマックスさんとマリーさん、そこに冷静に一歩引いたスタンスで接するヤンさん……バランスが取れていたのかもしれない。
それはともかく、俺は皆の意見というのはちゃんと聞きたい。
勝手に決めて、後で怒られるのは怖いから……というのもあるけど、やっぱり一緒に活動していくんだから、意見に耳を傾けるのは大事だと思うんだ。
ワンマンで皆を引っ張って行く俺なんて、モニカさんの言う通り自分でも想像できない。
……こういうのは、事なかれ主義だった以前の世界での生活が響いているのかもね……悪い事だとは思ってないけど。
「さて……これからの活動か……」
「父さんも行ってた通り、冒険者として活動するなら王都にいた方が便利ね」
「そうだね。人が多いという事は、それだけ依頼も多いだろうしね。けど、ヘルサルにいた方が気楽、というのもあるよね」
ヘルサルなら、獅子亭の手伝いをしながら、マックスさんの作る美味しい料理を食べて生活できる。
知り合いの多い街だから、エルサを乗せて歩いていても珍しがられないしね。
でも、王都なら色々な依頼があるから、冒険者として経験を積むには良い事だとも思うんだ。
俺には絶対的に経験や知識が足りていない。
それを考えると、Aランクというのも不相応なんだけど、なってしまったものは仕方ない。
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