第165話 城門近くで合流
「怪我してたんですね。今治します」
「戦闘中だから、今はいいわ。そんな事よりも、リクが戦闘さんに参加した方が良いでしょ?」
「それは……そうなんですが……ふっ!」
「ほら、私よりも軽々魔物を倒すんだから。私に構わず魔物掃討に集中して」
話の途中で、横から襲い掛かって来たオークを、剣を振るだけで腹から真っ二つにする。
それを見ながらモニカさんは、自分に構うなと言っている。
確かにモニカさんの言う通り、早いとこ魔物達を片付けてしまった方が良さそうだ。
怪我をしてる人達は他にもいるだろう。
魔物達がいなくなればこれ以上増える事も無いからね。
「……わかった。でもせめて、城の中に入っててよ。中で治療を担当してる人達がいたから」
城を出る前、大きいホールのような場所で侍女さんというかメイドさん達が、怪我人の手当てをしていたのを見かけた。
俺の魔法と違って、すぐに怪我が治ったりはしないだろうけど、何もしないよりはマシだ。
「わかったわ。これ以上はリクさんの足手まといになりそうね」
「足手まといなんて思わないよ」
「ふふふ、リクさんならそうよね。言われた通り、城に戻るわ。後は任せたわね」
「任せて……はっ!」
城に向かおうとするモニカさんに、襲い掛かろうとしたゴブリンナイトを斬り倒す。
それを見て、モニカさんは微笑みを残しながら城へと駆けて行った。
怪我をしてるから、いつもより遅めだったけどあれなら大丈夫だろう。
「さて、モニカさんの代わりに魔物を倒さないとな……っと!」
呟きながら、剣を振るう。
城門と城の間には、かなりの広さがあり、兵士や魔物が入り乱れて戦ってる。
空から見たらそうでも無かったけど、実際に来てみると激しい戦闘が行われてる事がよくわかる。
「ふっ! はっ! てや!」
俺は手当たり次第、目についた魔物を斬りながら、危なそうな兵士を助けて進み、少しづつ戦闘の中心地へと近づいて行く。
魔物は、ゴブリンを始め、オーガ、オーク、コボルト、ウルフなんかの見た事がある魔物いがいにも、見た事が無く名前のわからない魔物も複数いる。
そのどれもを、剣で切り裂きながら進むと……フィリーナさん達が見えた。
魔法をメインに使ってるし、容姿の事もあるから目立って見つけやすいね。
「フィリーナ! ……アルネも、ソフィーさんも、ここにいたんだね……はっ!」
「リク! カッター!」
「空での魔法は凄かったぞ……ウィンドブレイド!」
「ここで戦ってても、風で飛ばされそうになったくらいだ……はっ!」
皆、襲い掛かって来る魔物を倒しながらの会話だ。
この辺りは、エルフの集落で慣れた事が大きいのかもしれない。
「ちょっと調整に失敗したみたいで……でも、人に被害が出ていないようで良かったですよ」
「本気のリクのすさまじさを見た気がしたわ。ワイバーンがあっさりバラバラになってたのが見えたもの」
「陛下の声が無かったら、かなりの人が飛ばされてただろうな」
「あれのおかげで、皆備える事が出来たみたいだからな」
やっぱり、地上でもすごい風が来てしまってたみたいだね。
もっと、強い魔法でも細かい調整が出来るように慣れないとなぁ。
「モニカとは会ったか?」
「はい。怪我をしていたので、城で治療を受けるように向かわせました」
「そう。油断してたわけじゃないんだけどね……こう魔物達の攻撃が激しいと……怪我をしたから後ろにさがらせたんだけど……」
「外側から矢も飛んでくるしな……おっと……ウィンドブレイド!」
ソフィーさん達は、少し前までモニカさんとも一緒に戦ってたみたいだ。
ここはほとんど戦闘の中心に近いから、魔物達の攻撃が激しい。
会話をしながらも、10を越える魔物を切り倒してる俺達。
そんな中、アルネの言葉の途中で言ってたように矢が一直線に飛んで来た。
それを避けながら、数匹の魔物に向かって魔法を放つアルネ。
こんな状況なら、いきなり矢が飛んできて怪我をしても不思議じゃないね。
「こう人が入り乱れてると、魔法が使いにくいな……」
「そうね……味方を巻き込むわけにはいかないし……」
「あぁ、剣を振るだけなら適当に振ってれば魔物に当たるから、簡単なんだがな」
アルネとフィリーナは少しやりにくそうだ。
人も魔物も密集してるから、魔物だけを狙って魔法を放つのに苦労してるみたいだね。
ソフィーさんの方は、気軽にそう言いながらも的確に魔物の急所を突いて、倒す。
王都に来る前にマックスさんとの特訓をしてたんだろう、まだまだ余裕がありそうだ。
「リク、何とかならないか?」
「……そう言われてもね……便利な魔法なんて早々ないよ」
さっきのワイバーンとの戦いでもそうだった。
何も気にせず蹴散らすだけなら、威力の大きい魔法を使うだけだから簡単だけど、味方を巻き込まないようにしようとすると、色々考えなきゃいけないからね。
「さすがに、この状況だと凍らせるわけにもいかないしな」
「そうだね……兵士さん達まで凍らせてしまったら、魔物達にやられるだけだし」
「リクの魔法に巻き込まれたくないわよね……さっきのを見た後だと特に……」
ソフィーさんと、魔物を倒しながら話す。
人と魔物が交差してるから、迂闊に凍らせる魔法を使うと皆凍らせる事になってしまう。
フィリーナさんは、さっきの魔法の規模を思い出してるようだけど、さすがにここであれと同じ魔法は使わないよ。
「せめて外側からの攻撃が止めばな……」
「目の前の魔物に集中出来るな」
アルネとソフィーさんが、外から飛んで来た矢と氷の槍を避けながら呟く。
弓矢だけじゃなくて、魔法を使う魔物もいるのか……。
「……今って、開いた城門に魔物達が大量にいて、町と城とで挟んでる形だよね?」
「そうらしいな。ここで戦ってると詳しくはわからないが、町の方からも魔物を倒してる人達がいるようだ」
「おかげで、こちらに向かう魔物の勢いが少し収まったからな」
「最初は凄い勢いだったからね。ここに来てすぐは、リクが来るまで持ち堪えられるかわからなかったくらいよ」
町にいた兵士達や冒険者の人達が戦ってくれてるんだろう。
空から見た限りだと、挟んで魔物を押しとどめ、城門辺りでどちらにも行けない魔物達がひしめき合っているように見えた。
城から迎え撃つ人達と、町から追撃する人達で魔物を固めてる状態だと思う。
「今の状況なら、城門にいる人はいなさそうだよね」
「そうだな。そこでは戦闘が行われていないだろう」
「だから、逆にそこから自由に魔物が矢や魔法を撃って来るんでしょうけどね」
成る程……さっきから頻繁に魔法や矢が飛んで来るのは、そこからなのか。
そうする事で、自由に両方の人達へ攻撃出来るのか……魔物達も必死なようだ。
「それなら、そこを魔法で攻撃するのはどうだろう?」
「そんな事出来るのか?」
「聞いた事が無いわ……火の球なんかを飛ばして遠くに攻撃する事はあるけど……」
「その場所だけを狙って……というのはな……魔物達が邪魔で正確な場所も見えないんだ」
魔物が密集してるせいで、大体100メートル先にある城門の様子はわからない。
その状況で、魔法を撃ったとしても、魔物側がやってるように適当に氷の槍や火の球を投げ込むくらいしか出来ないのか……。
それだと、現状の打破には繋がらないな……。
「待てよ……それなら……」
「リクが何か考え始めたわよ?」
「何かとんでもない事をしそうだな……」
「願わくば、俺達を巻き込まない事を考え付いてくれると良いのだが」
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