第163話 新しい魔法を思いついたリク

「エルサ、その魔法は?」

「ん? 風を使った魔法なのだわ。何か思いついたのだわ?」

「どうしたのりっくん。確かに今エルサちゃんが使った魔法は凄いと思うけど……」


 エルサの魔法を見て、何かを思いつきそうだ。


「風の魔法なんだよな? どんなイメージなんだ?」

「今のは……風の刃を嵐のように吹き荒れさせるイメージなのだわ。前にエルフ達の所で使った魔法より、強いイメージなのだわ」

「ふむ……成る程……なっ! っと」

「りっくん、何か思いついたの?」


 姉さんの問いには答えず、俺に襲い掛かって来たワイバーンを斬り落としながら、エルサの言っていた内容を考える。

 エルフの集落でエルサが使っていたのは、風の刃で魔物を切り裂く魔法……今回のよりは風の勢いも、刃の切れ味も弱かったように思う。

 今使ったのは、嵐……つまり暴雨のように不可視の刃でワイバーンを切り裂いて、暴風で吹き飛ばす……という事か。

 ワイバーンの皮は生半可な刃じゃ通ら無さそうだから、強くする必要があったんだと思う。


「そうか……これならいけるかもしれない」

「何か思いついたのだわ?」

「あぁ、エルサのおかげだ。良いヒントをくれたよ」

「私が、なのだわ?」

「りっくん、どうするの?」


 エルサのおかげで、地上の人達に被害を出さない方法を考え付いた。

 襲い掛かって来るワイバーン達に対処しながら、考えを整理するように、問いかけて来たエルサと姉さんに答える。


「俺達の下では、兵士達が戦ってるけど……要はそこにワイバーンを落とさなければ良いんだ」

「そうだけど……でもどうやって? ワイバーンを倒したら下に落ちてくだけよ?」

「さっきのエルサの使った魔法だよ。風でワイバーンを外に放り出せば良い」

「成る程なのだわ。山にでも向かって飛ばせば、下には落ちないのだわ」

「人のいないところにワイバーンを落とすのね。確かにそれなら下にいる人達には被害は出ないわ」

「まぁ、地面とかに穴が開いたりするかもしれないけどね……」


 大きく重量のあるワイバーンが、風の刃で散り散りになるとは言え、凄い勢いで飛んで地面に激突するんだ、穴が開くくらいはするだろうね。


「人に被害が出なければどうとでもなるわ。穴なんて、後で埋めれば良いんだしね」

「女王様がそう言ってくれるなら、遠慮なく出来るよ」


 そう茶化すように言って、イメージを考え始める。

 姉さんは女王様でもあるんだから、国の損害なんかも考えるだろう。

 地面に穴が無数に出来てしまえば、道が通れなくなったりといった何かしらの影響があるかもしれないからね。

 でも、人への被害を減らす事を優先してくれるなら、遠慮をする必要はないだろう。


「エルサ、出来るだけワイバーンの包囲の中心に来るように移動してくれ」

「わかったのだわ」

「りっくん、私に何か手伝えることはある?」


 エルサに指示を出して、俺が魔法を使いやすいように準備をしてると、隣の姉さんが声を掛けて来た。

 はっきり言うと、姉さんが戦闘で手伝えることは何も無い。

 でもそうだね……何か出来る事があるとすれば、あれかな。


「さっきの、皆に声を届けたのって……魔法だよね?」

「そうね。魔法で声を増幅させて、離れた場所にいる人にも声を聞かせるの。演説とかで必要なのよ……さっきは全力でやったから、王都全体に聞こえたはずよ」


 フィリーナも使ってたけど、やっぱり魔法であってたみたいだ。

 ワイバーンを吹き飛ばすのは良いけど、どうしても多少は地上にも影響が出るだろうからね……。


「その魔法を使って、地上にいる人達に報せて欲しいんだ」

「何を報せるの?」

「魔法を使うから……風がどうしても地上にも行くと思う。人が吹き飛んだりしないよう調節するけど、絶対じゃない。それに、いきなり強い風が吹いて皆が混乱しないように、だね」


 魔法には慣れて来たけど、強い魔法を使ってどこまで細かい調節が出来るかは、まだわからない。

 鎧を着てる人達は大丈夫だけど、軽装の人が飛びそうになるくらいの風が吹くのは、覚悟しなきゃいけないかもしれない。

 さすがに、家を吹き飛ばすような影響は出さないようにする。


「わかったわ。りっくんの言う通りの魔法なら、地上にも影響が出るのは当然ね。それじゃあ、準備が出来たら教えて。私が地上の人達に声で報せるから」

「お願い……っと!」


 エルサに吹き飛ばされても、ワイバーンはまだまだ襲って来る。

 会話をしながら剣を振るって斬り落としてるが、やっぱりキリが無いね。

 遠くを見ると、城を目指して来るワイバーンはまだまだいて減った気がしない。

 ……しかし、このワイバーン達は何でここまで執拗に城を目指して来るのだろうか……?

 エルフの集落は魔物が発生した場所の近くだったし、ヘルサルではゴブリンキングが指揮して街を目指してた。

 地上にいる魔物も含めて、こいつらは……。


「りっくん?」

「あぁ、ごめん。ちょっと考え事してたよ……」

「ワイバーンに襲われながら考え事って……随分余裕なのね……普通はそんな事出来ないわよ?」


 隣で姉さんが問いかけて来た事で気付いた。

 今はあれこれ考えてる時じゃないな……まずはこの魔物達をどうにかしないと……考えるのはその後だ。

 呆れてる姉さんの声を聞きながら、さっきエルサが使った魔法を思い出してイメージを始める。

 風の刃……不可視の刃……吹き荒れる嵐……前後左右……上下も加えて荒れた風を……地上には出来るだけむかないように調節しながら……あとは……そうだな……北に見える山に向かってワイバーンが飛んで行くように風を強く意識して……。


「何なのこれ……魔力? 目に見えるなんて……これがりっくんの本当の力なのね」


 イメージをしてる最中、俺の中にある魔力を操作して練り込む。

 無色だった魔力が段々と緑色に染まって行くのを、姉さんが驚きながら見ていた。


「……よし、イメージ完了! 姉さん、皆に呼びかけて!」

「わかったわ」


 頭の中で浮かべたイメージと、練った魔力を維持しながら姉さんに呼びかける。

 油断するとイメージも魔力も霧散しそうだから、それに気を付ける。

 姉さんは、一度深呼吸をした後魔法を使用する。


「……聞け! 王都の民達よ! これより英雄リクの力で極大魔法が使われる! それによりしばらく暴風が吹き荒れる可能性がある! 各自地に伏せ、風に飛ばされないように注意せよ!」


 隣で叫ぶ姉さんの声は、王都中に響き渡った。

 姉さんの声を聞いた途端、地上の人達は伏せたり何かにしがみつく人が出始めた。

 何が起こるのか理解できない人もいるようだけど、これ以上待ってる時間は無い。


「うるさいのだわー」

「ごめんごめん、エルサちゃん。でも、王都に響かせるとなるとこれくらい必要なのよ」

「……耳が痛いのだわ」


 エルサが、姉さんの大きな声に抗議をしてるが、正直俺も耳が痛い。

 さっきと違って、今回は結界で防いでなかったからね。

 これから使う魔法に意識を集中したかったから。


「行くよ!」

「わかったわ!」

「ここらへんで良いのだわ?」

「あぁ、ありがとうエルサ!」


 姉さんとエルサに声をかけ、魔法に備えてもらう。

 エルサが移動して、城の上、囲まれてるワイバーン達の中央に位置取ってくれた。


「リクが魔法を使ったら結界を張るのだわ。巻き込まれるのは勘弁なのだわー」


 俺の魔法がよほど怖いのか、エルサが結界の準備をしているようだ。

 加減ができてるかわからないから、そうしてくれるとありがたい。

 姉さんがエルサのモフモフにしがみついてるのを確認して、魔力を魔法に変え、周囲に放つ!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る