第148話 王城に到着
「リク様、王城への案内は私がします」
「ええと、良いんですか?」
「もちろんです。英雄の案内を任されるのは栄誉な事ですから」
「だそうですけど……どうします、マックスさん?」
「まぁ、案内してくれるって言うんだから任せれば良いだろう。俺とマリーは迷う事は無いが、初めての
リク達は案内があった方が良いからな」
隊長さんが進み出て案内してくれると言う。
どうしようかと、近くにいたマックスさんに聞いてみるとそれで良いとの事だ。
確かに俺は王都が初めてだから、案内してもらった方が良いかもね。
「じゃあ、お任せします」
「畏まりました。それでは、こちらへ」
隊長さんと、二人の衛兵が俺達を先導して歩く。
それに付いて行く形で、俺達はようやく王都へと足を踏み入れた。
「はぁ……ここが王都なのね」
「街並みが整理されていて、壮観だな」
「どこも立派な建物ばかりだね」
「人がいっぱいなの」
モニカさんが街並みに感嘆の息を漏らし、ソフィーさんは感心している様子だ。
俺は今まで見て来た街と比べて、建物の一つ一つがしっかりした造りになっている事に驚いてる。
石造りの家や店ばかりだ……しかも2階建てや3階建てが多い……やっぱヘルサルやセンテとは違うなぁ。
ユノは、行き交う人の多さに目を白黒させてる……確かに人も多いから仕方ないな。
「でもその中でも……」
「ああ、一際素晴らしいな」
「お城なのー」
近くなって来たからか、尚更王城が大きく見える。
モニカさんやソフィーさん、ユノは三人揃って王城を見上げて驚きの表情だ。
もちろん俺も同じ。
マックスさんとマリーさんは、王都に来た事があるから当然慣れているらしく、俺達を朗らかに見ていた。
「ヘルサルの英雄、リク様到着!」
「「「おぉ……」」」
王城の入り口に着いたところで、隊長さんが声を上げる。
それを聞いて、入り口付近にいた兵士達がどよめいた。
王都の中を結構な時間歩いて来たはずなのに、驚いたり感心したりして忙しくて全然時間が経った気がしないなぁ。
どよめく兵士達を余所に、俺達は完全にお上りさんになっていて、建物や王城をキョロキョロと見るばかりだ。
「リク様、こちらで少々お待ち下さい」
「わかりました」
隊長さんは、どよめく兵士達の間を通って俺達を通し、待合所のような建物へと案内される。
多分、ここからは城の人が案内してくれるんだろう。
ここは案内してくれる人が来るまでの間、待つための場所のようだ。
「失礼します」
10分少々待ったあたりで、入り口の扉が声と共に開けられ、一人の男性が入って来た。
「リク殿、ようこそ王都、王城へ。お待ちしていました」
「ハーロルトさん!」
入って来たのは、何度かヘルサルに来てくれて、面識のあるハーロルトさんだ。
皆がいるとは言え、見知らぬ場所で待たされた所に来たハーロルトさんだけに、ちょっと安心感。
「予定通りの到着ですな」
「衛兵の隊長さんには早いと驚かれましたよ?」
「ははは、ヘルサルからとなると夕方に到着するのが常ですから。衛兵達もそう考えていたんでしょう」
ハーロルトさんは、俺がエルサに乗って来ると知っていたから、このくらいの時間に到着するとわかってたんだろうね。
モニカさんを始め、他の皆もハーロルトさんと挨拶を交わす。
「授与式の方は準備が終わりましたか?」
前もって聞いていた予定では、もう終わってるはずだけど一応聞いておかないとね
準備が終わってないなら、城下町を見て回って待たなきゃいけないし。
「滞りなく、全て整っております。ここに来るまでに町の様子は?」
「すぐにここに来たので、あまり見られていませんが多少は」
「それでしたら、人が多いと感じたり、町が華やかに感じたりしませんでしたか?」
「言われてみれば……人が多いのは王都だからと思っていましたが、町は確かに」
「建物が飾りつけされてたわよね」
「花が飾ってあったりもしたな」
「店も、以前来た時より露店が多かったな」
「そうね……行き交う人達も明るい雰囲気だったわ……何と言うか、お祭りのような?」
「楽しそうだったのー」
ハーロルトさんの問いに、皆が口々に感想を言う。
「最高勲章授与は、我が国にとって久しぶりの吉事なのです。町ではそれぞれ民が建物に飾りつけを、商人は機運の高まりを感じてここぞとばかりに、商売を始めています。そうですな……マリー殿の言う通り、お祭りのようになっています」
「そうなんですか」
俺が最高勲章を受け取ると言う行事が、お祭りのように受け止められて、町の皆はそれに乗るように楽しんでるようだ。
お祭りかぁ……この世界のお祭りってどんなものなんだろう……?
日本でのお祭りみたいに屋台とか出るのかな……あ、でも露店とか屋台はこの世界だと普通にあるか。
俺が原因と言えるのかわからないけど、皆が楽しそうにするのは悪い事じゃないね、うん。
「おっと、話し込んでしまいましたね。まずはリク殿の部屋へ案内させて頂きます。長旅……ではなかったんでしたね……まぁ、荷物もあるでしょうから、そこに置いておくと良いでしょう」
「わかりました、案内お願いします」
「リクさんの部屋ってどんなのかしら?」
「王城だからな……きっとどのような宿にも負けない部屋だろう」
ハーロルトさんが俺達を先導して、部屋を出ようとした所で、思い出したように振り返った。
「あぁ、そうでした。皆様、申し訳ありませんが……武器の類はこちらでお預かりさせて頂きます」
「武器をですか?」
「あぁ……王城内だからな、仕方ない」
ハーロルトさんの言葉に、俺は理由がわからなかったけど、マックスさんは納得したようだ。
他にも、モニカさんやソフィーさん、マリーさんもわかっているようで、持って来ていた武器類を外している。
何でも、王族や貴族等、国の重要人物がいる王城内では、一部の者以外は武器の携行は禁止だそうだ。
成る程、防犯のためか……それなら仕方ないね。
俺も先日買った剣をハーロルトさんに預け、代わりに木札を受け取った。
城を出る時には、その木札と交換で武器を返してもらえるそうだ。
「では、参りましょう」
ハーロルトさんに案内されて王城の中に入る。
モニカさんとソフィーさんは、俺が過ごす予定の部屋に興味が有るようだ。
マックスさんやマリーさんは、城へは初めて入ったらしく、内装を見て感心している様子だ。
ユノは……キョロキョロして楽しそうだな。
ちなみにエルサは、王都に入った時から俺の頭でずっと寝てる……飛んで来たから疲れたのかな?
「こちらになります」
俺達が、城内の広さや、高級と思われる調度品に感心したり驚いたりしながら、ハーロルトさんに案内されて少し、俺が過ごす予定の部屋に到着した。
しかし、ここでしばらく過ごすのか……見た事が無い程豪奢な建物で、内部も相応だけど、リラックスして過ごせるかちょっと不安だ。
……エルサのモフモフがあればなんとかなるか、多分。
「おぉ……」
「広いわね……さすが王城」
「これで一人用なのか……」
「それなりに生きて来たが、これ程の部屋は見た事無いな」
「貴族の屋敷でも早々ないわね」
部屋の扉をハーロルトさんが開け、その中に入ると俺も含めた皆が圧倒されたように、口々に感想を述べる。
一人用と考えると、広すぎてどう使うのかわからないような部屋だ。
置いてある家具はあまり多くないが、大きなベッドやソファーが目を引く。
日本の基準で考えると、20畳……いや、もっとありそうだな……。
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