第147話 王都へ向かい出発
「おぉ、これが大きくなったエルサ様の姿ですか……」
「さすがドラゴンと言ったところですな。神々しさも感じられます」
翌日の朝、朝食を食べた後俺達はヘルサルの街を出て、エルサに大きくなってもらった。
これから皆で王都に出発するためだ。
「クラウスさん、トニさん、わざわざ見送りに来て下さって、ありがとうございます」
「いやなに、リク様の門出ですからね。もちろん駆け付けますとも」
「クラウス様には、帰ってしっかり仕事をしてもらいますから。リク様、お気を付けて」
「はい、ありがとうございます。それと、ルディさん達もありがとう……獅子亭の方が忙しいのに」
「良いんだよ。見送った後に頑張るから」
「そうよ。時間には余裕があるから大丈夫よ」
クラウスさん達に挨拶を済ませ、同じく見送りに来ていたルディさん達にも感謝を伝える。
その後、ルディさん達にはマックスさんやマリーさんが激励したりしていた。
「皆乗るのだわー」
「あぁ、わかったよ」
「ドラゴンに乗るのか……緊張するな」
「いつもリクにくっ付いてる、あのエルサちゃんに乗るなんてねぇ」
「私達はもう慣れたわ」
「何度も乗ってるからな」
「空を飛ぶのは楽しいの!」
エルサの声で、俺、マックスさん、マリーさん、モニカさん、ソフィーさん、ユノがそれぞれ乗り込む。
見送りに来たクラウスさん、トニさん、ルディさん、カテリーネさんに留守を任せて、俺達は王都へと飛び立った。
「……どっちに飛ぶのだわ?」
「……北西だよ」
ふわりと空に浮かんだエルサが、どの方角に進むのか迷う場面はあったが、俺達はヘルサルを離れ、王都へと旅立った。
旅と言っても、エルサのおかげで半日くらいで着くんだけどね。
「エルサ、あそこに降りてくれ」
「わかったのだわー。お昼なのだわー」
王都に向かう途中、一度休憩のため木陰がある場所を探して、エルサに降りてもらう。
地面に降りたエルサから、それぞれが降り立ち、モニカさんとソフィーさん、ユノは早速とばかりに昼食の準備を始めた。
……エルサがお腹が減ったとうるさくなる前に、用意しないとね。
マックスさんやマリーさんは、エルサに乗り慣れて無いためか、地面に降りた後に少しふらついていたけど、直に慣れるだろう。
「キューはおいしいのだわー」
「エルサちゃん、ちゃんと他の物も食べないと駄目よ」
昼食時、獅子亭で用意して来た料理を食べながら、キューばかりをかじるエルサをモニカさんが注意をしている。
エルサで移動すると、時間がかからないから保存食を食べなくて良いのが助かるな。
数日かかるの旅だとどうしても、保存の効く物に頼らざるを得ないからね。
「しかし、ほんとにエルサに乗ると早いな。もうこんなところまで来てるとは」
「そうね。半日どころか昼までの時間だけで、ここまで来れるのは便利ね」
マックスさんとマリーさんは、初めての飛行移動に感心して、昼食を取りながらキューをかじってるエルサを見てる。
今はヘルサルから王都までの3分の2程を来たあたりだろうか。
この分なら、後1~2時間で王都に着けそうだ。
「リクと一緒に行動すると、冒険者の常識が崩れそうだな」
「そうね……モニカ、これが常識だと考えては駄目よ?」
「わかってるわ、母さん。リクさんは特別なのよね」
冒険者の常識について、考えない事もないけどエルサはやっぱり便利だからね。
まぁ、エルサが嫌がる事はしないつもりだけど、飛ぶ事が楽しいようだからついつい頼んでしまう。
馬で移動するのも楽しそうだけど、移動が早いに越したことは無いからね。
それに、馬車はお尻が痛くなるし……馬は練習しないと乗れなさそうだ……。
「ここで降りるのだわ?」
「そうだな、このくらいが良いか。頼む、エルサ」
「わかったのだわー」
昼食後すぐにエルサに乗って再び出発。
予想したように、1時間と少しで王都近くに到着した。
他の街の時と同じで、さすがにエルサに乗ったまま王都に入るのは憚られる。
少し離れた場所に降りて、そこからは徒歩で王都へ向かう。
「門が見えて来たな」
「大きいですねぇ」
「そりゃ、この国一番の王都だからね。ほら、周りを囲んでる城壁もヘルサルより大きいでしょ?」
「母さんの言う通りね、ヘルサルの倍近くあるんじゃないかしら?」
王都を囲む城壁を見上げ、大きさを実感する。
モニカさんの言う通り、ヘルサルの倍くらいあるんじゃないだろうか。
魔物なんかが襲って来ても、空を飛んでない限りこの城壁を越える事は出来ないだろうね。
「さすが王都ね、大きさも広さもヘルサルとは違うわ」
「そうだな、王都は初めて来たが……確かに大きいな」
王都の城門へと歩きながら、モニカさんとソフィーさんが話している。
二人共王都は初めてみたいだね。
エルサが地上に降りる前、遠目に見えていたけど確かに大きい。
王都と言うくらいだから、ヘルサルの街と比べるべくも無いのは当たり前だと思うけどね。
でも何より、遠目からでも確認できた王城だ。
王都の中央辺りに聳え立つ王城は、遠目からでもはっきりと確認出来た。
「あれが王城……今からあそこに行くのか……」
「なんだリク、緊張してるのか?」
「そりゃ緊張もしますよ。始めて行く場所ですし……それに、国の偉い人が集まってるんでしょ? 緊張して当然ですよ」
「はっはっは、そりゃそうだな」
マックスさんと話しながらも、近づく王都から目が離せない。
城門の近くになり、城壁にほとんどの視界が遮られながらも、王城の上部が見えるくらいだ。
「城門で衛兵に冒険者カードを見せて、身分確認だな」
「そこはヘルサルと一緒なのね」
「出入りの確認はどこも変わらんさ」
俺達は、ユノ以外全員冒険者だ。
ユノは見た目が成人してない子供だから、身分確認等は大丈夫だろうとの事。
冒険者は冒険者カードを見せる事で身分証明になる。
「確認します」
「どうぞ」
城門でそれぞれが衛兵に冒険者カードを提示する。
さすが王都なのか、衛兵の数が多い。
ヘルサルやセンテは3~4人くらいしかいないのに、ここには10人以上の衛兵が、常時王都に入ろうとしている人の確認をしている。
「……ん?」
「どうかしましたか?」
「いや……ちょっと待ってくれ」
俺の冒険者カードを確認していた衛兵が、何かに引っかかったのか首を傾げている。
皆の方はすんなり確認が終わったみたいなのに、俺だけどうしたんだろう?
「隊長!」
「……どうした、何か問題か?」
衛兵が詰め所のような建物に向かって声を上げると、中から全身鎧で固めた人がのっそりと出て来た。
隊長さんか……鎧、固そうだなぁ。
「……隊長、これを」
「なんだ? ……これは!」
俺の冒険者カードをその隊長さんに見せる衛兵。
隊長さんは、それを見るなりヘルメットの隙間から覗く顔が驚愕に変わって行った。
「……失礼しました。リク様……でいらっしゃいますか?」
「はい、そうですけど」
冒険者カードには本人の名前も入ってるからね、でもなんで様付け?
「お待ちしておりました! おい!」
「は!」
「え?」
どうしたのかと見ていると、隊長さんが他の衛兵達に声を掛け、全員が俺の前に勢ぞろいした。
おかげで俺達の後に王都へ入ろうとしている人達が、確認されずに待ちぼうけだ。
「王都へようこそいらっしゃいました! 英雄リク様。我ら一同、歓迎致します!」
「「「「「歓迎致します!」」」」」
「……えーと」
「まぁ、リクさんだからね」
「そうだな」
隊長さんの号令で、集まった衛兵達が俺に敬礼をしながら声を合わせる。
何が起こったのかと戸惑っていたら、近くでモニカさんんとソフィーさんが諦めたような表情。
お願いだから諦めないで下さいね?
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