第139話 装備購入完了
武器マニアな一面のあるイルミナさんだ、多分この剣を見た時に惚れ込んですぐに仕入れてしまったんだろう。
他の、両斧だとか、お湯の出る槍が店にあるのを考えると、面白そうな武器を仕入れる癖があるのかもしれないね。
「今まで誰も使えなかった物ですが……ヘルサルを守った英雄リクさんなら、この剣を使いこなせるかもしれません。それに、先程聞いた剣の扱い方だと、こういった丈夫な剣が良いかと……」
「そうですね……」
技術とかを学んで無いから、剣の扱いは結構雑な方だと思う。
だから、今まで使ってた剣は刃こぼれしてる。
この剣は刃こぼれしたり折れたりしないという事だから、俺にぴったりだ。
それに、魔力ならドラゴンであるエルサが驚く程の量があるみたいだから、枯渇する事も無いと思うからね。
「しかし、その高名なエルフさんは何だってこんな使える人が少ない剣を作ったんだか」
「伝え聞いた話によると、自分の魔法を色々試したい方だったそうですよ。だから作った後の事は考えて無かったみたいです」
使い勝手の事は考えて無かったのかぁ……それならこんな誰も使えないような剣が作られた事も納得だ。
男なら、自分の力がどれだけのものか試してみたいと思うものだからね……そのエルフが男なのか知らないけど。
「それじゃあ、この剣買いますね」
「本当ですか!? ありがとうございます! ようやく倉庫の肥やしになってた商品が売れました!」
俺がイルミナさんに剣を買う事を伝えると、飛び跳ねるように喜ぶイルミナさん。
誰にも使えないような剣だから、売れなくて困ってたんだろうけど、それを客の目の前で言うのはどうなんだろう……。
「リク、剣を買ったの?」
「ああ。この剣だよ」
商品の武器を見ていたユノが、俺が買った物に興味を持ったようだ。
ユノに剣を見せつつ、イルミナさんに剣の代金を払う。
金貨10枚と、結構な値段だったけど魔法具だから仕方ない。
これでも安くしてる方だとイルミナさんは言ってたしね。
それに、魔法が二つもかかってるような特別な魔法具だからそれくらいかかっても仕方ないと思う。
「この剣すごいの。魔法が二つかかってるの」
「そうみたいだね。何でもすごいエルフが魔法を掛けたって事らしいよ」
「そうなんだー」
ユノには魔法が二つかかってるのがすぐにわかったみたいだ。
俺が見せた剣が気に入ったのか、ユノは自分の身長に近いくらい大きい剣を持ってブンブン振っていた。
……俺が持った時、大きさと分厚さのせいで結構重く感じたんだけど、それを全く感じさせないな……。
ちょっとだけ剣を振るユノに対して冷や汗が流れたけど、気にしないようにした。
「はい、金貨10枚、確かに頂きました」
お会計を済ませ、店を出ようとしたところで気付く。
剣もそうだけど、他の装備を一切見て無かった……。
今の装備で不十分な事は無いんだけど、どうせなら新しい物も見てみたい。
ユノが剣を笑顔で振るのを横目に、店の中を見渡して色々な装備を見てみる事にした。
「鎧かぁ……今の革の鎧も少しくたびれて来たからなぁ……」
「鎧でしたらこちらはいかがですか?」
イルミナさんが勧めて来たのは、金属で出来た全身鎧。
フルプレートアーマーってやつかな?
「……さすがにそれはちょっと」
「……そうですか」
以前ソフィーさんに案内されて行った武具店で着てみたけど、満足に動けなかった。
エルサと契約した今なら、ちゃんと動けるだろうけど、魔物と実際に戦ってみてあんな鈍重な鎧はいらないと感じてる。
エルサ曰く、単純な攻撃くらいなら俺の体に傷を付けられないらしいしね。
だからと言って、何も付けないのは俺の気分的に嫌だから、革の鎧にしようかな。
「これと……これを下さい」
「ありがとうございます」
イルミナさんからお勧めされた鎧はスルーして、俺は動きやすそうな革の鎧を買った。
これなら軽いし、動きやすい。
ついでに、盾と剣しか持っていないユノのために似たような物を買う事にした。
ユノの方は、俺より体を覆う部分が少ないけど、急所である胸部を守れる作りだったからね。
サイズが小さくて、ユノに合う物がそれしか無かったんだけど……。
「それじゃ、イルミナさん。ありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそありがとうございました。またのお越しをお待ちしてます」
「またなのー」
「はい、ユノちゃんもまたね。きっとまた来てね!」
イルミナさんに挨拶をして、満足のいく買い物が出来たと思いながら店を出る。
……ユノに対してだけ、かなり力の入った挨拶だったのは何だったんだろう……きっとユノが可愛いからだな。
店を出て、ユノから剣を返してもらって腰から下げる。
今までより大きくなって、重量もある剣だからちょっと歩くバランスが気になったけど、そのうち慣れるだろうと思う。
獅子亭に帰る道すがら、大通りでおやつ代わりに屋台で食べ物を買いながら歩く。
「ご飯なのだわ!?」
屋台で串焼きを買った時、俺の頭にくっついて今まで寝ていたはずのエルサが急に声を上げた。
お前、食い意地張ってるな……。
エルサにも食べ物を分けてやりつつ、大通りを進む。
ここ何日か、お世話になってるみたいだからと、ついでにアクセ売りのお婆さんの所にも顔を出しておいた。
「お婆ちゃん、こんにちはなの」
「おやおやユノちゃん。相変わらず元気だねぇ」
「すみません、お婆さん。いつもユノがお世話になってるようで」
お婆さんにユノがお世話になってる挨拶をして、獅子亭へと帰る。
お婆さんは、ユノの事を離れて暮らす孫のように思っていて、可愛がる事が最近の楽しみだとの事だった。
ユノが本当のお婆ちゃんのように慕ってくれて嬉しいとも言っていた。
ありがたい事だね。
「ただいま帰りましたー」
「おう、お帰り。……随分ごつい剣にしたんだな」
「ええ。イルミナさんの所で良い剣があったので」
獅子亭に帰り着くと、夕方の営業の仕込みをルディさんに任せたマックスさんがテーブルについてお茶を飲みながらゆっくりしていた。
王都に行く時ルディさん達に店を任せるために、ここ数日は仕込みを全部ルディさん一人に任せてるらしい。
まぁ、最終確認はするみたいだけど。
隣でぐったりしてテーブルに突っ伏してるモニカさんは特訓終わりかな?
「イルミナか……武器について色々言われただろ?」
「そうですね……役に立つのかわからない武器を色々紹介されました」
マックスさんの言葉に苦笑しながら答えた。
色んな武器があるのは良いけど、役に立つかわからない物を喜々として解説してたからね。
「あいつは相変わらずだな……だがその代わり、珍しい武器を扱ってるからな。掘り出し物もたまにあるから、リクにはちょうど良いと思ってな」
「確かに掘り出し物がありましたね。これもそうだと思います」
だからマックスさんはあのお店を俺に勧めたんだね。
俺はマックスさんに、イルミナさんのお店で買って来た剣を持ち上げながら笑った。
これは力任せに剣を振ってしまう俺にぴったりで、掘り出し物と言っても良いと思う。
「今までショートソードばかりだったリクが、随分思い切った剣を選んだんだな」
「そうですね……慣れないので最初は扱いが難しいかもしれませんが……」
そう言いながら、マックスさんに剣の説明をする。
剣にかかってる魔法、二つの魔法が掛かってる事にマックスさんは驚いていたけど、魔法と分厚い剣で丈夫さを求めたと言ったら納得して頷いていた。
それより、説明してる間マックスさんの隣でぐったりしているモニカさんは、ユノにツンツンつつかれてピクピクしてるけど、大丈夫だろうか……?
まぁ、ユノが楽しそうだから良いか。
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