第135話 特訓地獄決定のモニカさん
ソフィーさんが持って来ていた剣を鞘から抜き、刀身を皆に見せながら説明している。
モニカさんと違ってこちらは氷の魔法らしい……確かに火の魔法から身を守るなら、水や氷が良いのかもしれないけど……ちょっと寒そうだ。
氷の魔法がかかってるためか、こちらは刀身が青みがかっている。
これを振るのか……ちょっと格好良いな……。
「モニカもそうだが、今回エルフの集落で戦った魔物の中にゴーストがいたからな」
「そうね。私達はまだ戦闘に役立つ魔法を使えないから……それならせめて装備で対処できるようにね」
「ゴーストか……魔法以外効かない魔物だな……そんな奴までいたのか……」
モニカさんとソフィーさんは、集落でゴーストと戦った経験から魔法具を買おうと考えたみたいだ。
確かに魔法が使えないと、剣や槍は効かないから対処を考えると魔法具を使うのが一番かもしれないね。
「私は魔法が使えないが、魔力はあるからな。魔力量は少ないから回数がかなり限られるが、それでもゴースト等に対処するには十分だろう。……それに普通の魔物相手でも火から身を守ったり、相手を凍らせられれば有利に働くからな」
「私の方は、魔法を戦闘で使えるようになるまでの繋ぎでもあるわね」
「そう言えばモニカは魔法の練習がまだ途中だったわね……」
二人共、これからの事を考えてしっかり装備を整えて来たようだ。
……俺も近いうちに武具屋へ行って、ちゃんとした装備を見てみよう……今の剣と皮鎧は安い物だしね。
安物だから悪いとは言わないけど、命を預ける道具だからちゃんとした物を買いたい。
もちろん、その時はユノを連れて行こう……前行った時は、色々な武器を興味深そうに見てたしな。
「そうね……王都に行くまでまだ時間があるし……それまで私が魔法を見てあげるわ」
「……母さん? 何かちょっと目が恐いんだけど……」
「モニカ……諦めろ……マリーがこうなったら止められん。……俺より厳しい特訓になるだろうな……」
「ちょっと父さん!?」
モニカさんの魔法がまだ未熟なのがマリーさんに火を付けてしまったのか、怪しい笑みを浮かべてモニカさんの魔法特訓を計画してるなぁ……。
「マックスさん、私の方も剣の特訓をお願いします」
「お? おう。わかった。王都に行くまでしっかり特訓してやるからな。もちろん、モニカも一緒にな」
「私、戦闘訓練と一緒に魔法の訓練もしないといけないの……?」
「頑張って、モニカさん」
ソフィーさんはマックスさんとの特訓をするようだ。
まぁこれまでも合間の時間にやってたから、ここは変わった気はしないんけどね。
モニカさんは槍と魔法の訓練をする事になって大変そうだけど……俺には応援する事しか出来ない……。
やる気になってるマックスさんとマリーさんを止めるなんて俺にはとても……。
「槍や剣で魔法が使えるようになっても、本人が使えるようになるに越したことはないしね。戦闘の幅が広がるわよ? さっそく明日、魔法屋に行くわよ」
「ここまでやる気の母さん……初めて見たんだけど……」
「マリーは何故か後輩へ教える事に情熱を燃やすからな……明日から気を失う直前まで魔力を使わされるぞ……」
マリーさんの言う通り、道具だけじゃなく本人も魔法が使えれば確かに幅が広がるだろうね。
明日はモニカさんを連れて行って新しい魔法を選別、試用をしてから実用出来るように特訓するんだろうな。
特訓で大変な事になりそうなモニカさんを暖かい目で見ていたら、隣のテーブルに座っていたカテリーネさんが何かに気付いた。
「あれ? ねぇ、それも新しく買ったの?」
「そうなの、買ったのー」
カテリーネさんが声をかけたのはユノだ。
ユノが首から下げてるワイバーンの革で作られたアクセサリーと、がま口を見てる。
どこか自慢気にユノはがま口と皮のアクセを持ち上げた。
「あらユノちゃん、可愛いわね」
「私が買った物を取り付けてくれたのね。似合ってるわ」
カテリーネさんとモニカさんには好評なようで良かったな、ユノ。
それにしても、ユノにがま口をあげたのはモニカさんだったのか……ユノには似合ってるから、センスは良いのかもしれない。
……がま口を選ぶ理由はわからないけどね。
「ほぉ……それはワイバーンか……良い物だな」
「わかるんですか?」
マックスさんはユノが首に下げてるがま口……を取り付けてる革のアクセの素材をすぐに言い当てた。
「これでも元冒険者だからな。色々な物を見て来てる。ワイバーンの革ならば、魔法具とは言わないまでも十分に良い物だろうな」
「はい。売ってくれたお婆さんは、剣を弾いて、火の魔法で燃えないと言っていました」
魔法がかかってないから魔法具とは言えないけど、それと同じくらい良い物のようだね。
良い買い物をしたようだ。
「へー、これがワイバーンの革なのね」
「触り心地は……他の革製品とかわらないわね」
モニカさんとカテリーネさんはユノを囲んで、そのアクセを見ている。
カテリーネさんが触った感触は他の革と変わらなかったようだね。
「えへへ、良いでしょ」
褒められて嬉しそうなユノを囲んで和やかな雰囲気で夕食は終わった。
今日も美味しい料理をありがとうございます、マックスさん。
夕食後は各自お風呂に入り、いつものようにドライヤーもどきの魔法を使って髪を乾かす。
エルサが寝てしまったので、俺達も寝るためユノと一緒にベッドに入ろうとして気付く。
「ユノ……気に入ったのはわかるけど、それは外して寝ような」
「……わかったの」
革のネックレスをしたままベッドに入ろうとしたユノを止めて、外させる。
ネックレスをしたまま寝たら危ないからね。
寝ている間に首が締まったりしたら大変だ。
よっぽど気に入ったのだろう、ユノは渋々首からネックレスを外し、机に置いてベッドに入った。
「おやすみ、ユノ」
「おやすみなの」
ユノと就寝の挨拶をして、エルサを挟んで寝る事にする。
明日からはしばらく休息だ、依頼も受けて無いからなぁ……モニカさんは特訓で大変そうだけど……。
暇な時間が多いだろうから、獅子亭を手伝うのも良いかもね。
あ、装備を見に行くのも良いか……。
そんな事を考えながら、エルサのモフモフを撫でながら意識が沈んで行った。
―――――――――――――――――――
翌日、獅子亭の昼営業を手伝った後、昼食を取って一息吐いているところへクラウスさんが訪ねて来た。
いつものように秘書であるトニさんもいる。
トニさんはクラウスさんの監視かな?
「お久し振りです、リク様。この度はエルフの集落の救出、ありがとうございました。本来なら帰って来たと知った時すぐに駆け付けたかったのですが……」
「王都への報告も含めて、仕事が詰まっていましたからな。仕事を放り出してここに来ようとするクラウス様を止めるのは大変でした……」
「ははは、お久し振りですクラウスさん、トニさん。仕事はちゃんとしないといけませんよ?」
クラウスさん達と挨拶を交わした後、一応だけど注意しておく。
俺が言う事でも無いかもしれないけど、トニさんが随分疲れた様子だったからね、仕事をさせるのが大変だったに違いない。
今の時間、ルディさんとマックスさんは夕方に備えて厨房で仕込み、マリーさんはソフィーさんとモニカさんとユノを連れて魔法の練習だ。
朝のうちに魔法屋に行って新しい魔法を買って来たらしい。
ソフィーさんとユノは見学で、今獅子亭のテーブルにいるのは俺とエルサだけだ。
昼を食べて満足したエルサは、テーブルの上でお腹を見せながら寝てる……それで良いのかドラゴン……。
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