第129話 それぞれのエルフ達~フィリーナ編・後編~
「私もやるの!」
「ユノちゃん? 貴女は魔法が使えるの?」
リクの魔法で魔物達がいる場所を確認してもらって、ここにいるウッドイーターは倒しても良いだろうとの事だったわ。
だから魔法でさっさと方を付けようとしたんだけど、何故かユノちゃんがやる気なのよね……。
ウッドイーターはオーガを軽々と殴り飛ばす膂力の持ち主……魔法の使えない小さな子が近づいて行ったらどうなるか……考えるだけでも恐ろしいわ。
「ちょっとリク、いくら何でもあんな小さい子をウッドイーターに近付けるのは危ないわよ!」
そんな私の考えを知らずにリクは、ユノちゃんをウッドイーターに向かわせたわ。
私はそれが信じられなくてリクに詰め寄るけど、リクは大丈夫だけ……何か考えがあるのかもしれないけど、もしもの時に備えて魔法の準備をしておかないと……。
私の心配をよそに、ユノちゃんは何でも無い事のようにウッドイーターに近付いてあっさりと切り刻んで見せた。
……自分の眼を疑ったのは初めてだったわ……だって、小さい女の子が何の気なしにウッドイーターを切り刻んでるんだもの……。
確かにユノちゃんにはリクとは違った何か、特別なものがあるように私の眼は見てるけど……ちょっとよくわからなくなって来たわね。
「フィリーナ、アルネ……全部私がやっつけていい?」
「え、ええ……そうね……いやいや、私も戦うわ。……というか……ユノちゃん貴女何者?」
「ユノだけに任せてられんな……俺も戦うぞ」
「私はリクの妹なのー」
ユノちゃんが無邪気に、ウッドイーターに対する処理をして良いか聞いて来るけど、さっきのを見た後であっても、小さな女の子に全部任せるわけにはいかないわ。
私とアルネは、魔法を使ってウッドイーターを攻撃し始める。
ユノちゃんはさっきと同じように軽々と切り刻んでる。
私達が魔法をほとんど使う間も無く、ユノちゃんがほとんどのウッドイーターを倒してしまった……。
かろうじて、1体は私とアルネが連携して倒したけど……あんまり活躍した気にはなれないわね。
「あれはゴースト! こんな魔物もいるなんて!」
アルネの提案で、リクの探査の魔法によってサマナースケルトンの位置を特定して、それぞれの場所へと別れて行動中、今までの魔物達の中にいなかった魔物を発見した。
ゴーストは魔法でしか倒せない魔物なのよね……しかも、火の魔法を放って来るから厄介だわ。
「カッター!」
ここにいたのは1体だけだったから、私一人でも十分に対処出来たわ。
けど、これが夜襲の時のように群れて襲って来たら集落の建物にも甚大な被害だ出るかもしれないわね……。
「オーガとコボルトは倒したわよ」
「こっちもいっぱい魔物を倒したのー」
私がゴーストを対処してる間に、先制とばかりに掛けて行ったユノちゃんとソフィーがサマナースケルトン達を倒してくれた。
まったく、ソフィーの腕も確かだし、ユノちゃんは意味不明な強さだしで、私達エルフのプライドなんてちっぽけだと教えられるわね。
オーガとコボルトの数は少なく、ソフィー一人で対処出来たみたいね……ユノちゃんの方は……サマナースケルトンの残骸が散らばってるわ……周りには私達がここに来るまでに召喚されたであろう魔物が数体転がってるわね。
「これで全部かしら?」
「リクがいないからはっきりとした事はわからないが、他に魔物がいるような気配はしないな」
「全部やっつけたのー」
私達が目標にしていたサマナースケルトンは倒せたようだから、これで数も少しは減らせたのかしらね。
三人で魔物達の残骸処理を終わらせ、集落へ戻る事にした。
リクがいるから、あちらの方は心配していないけど、どれだけの魔物を倒して来たのか少しだけ楽しみね。
集落に戻った後は、リク達に滞在してもらってる石の家に帰った。
途中、エヴァルトと合流して森の状況、魔物が西から襲撃して来た理由の推察を話したわ。
「そうか……だから魔物達は森から来る事が少なかったのか」
「そうみたいね……ウッドイーターがいる事で魔物が迂回してるなんて、良い事なのか悪い事なのか……」
ウッドイーターによって、確実に森の木々は減らされてしまっている。
けれど、そのおかで森から直接集落を襲われていないのだから、何とも皮肉な話だわ。
森と生きるエルフとしては、木々が食べられる事を喜んでいられないんだけどね。
「ゴーストか……また厄介な魔物がいるものだ……」
エヴァルトには、ゴーストがいた事も話したわ。
集落のエルフ達を纏めて指示を出してるから、情報はちゃんと伝えないとね。
「ただいまー」
ゴーストの事をエヴァルトが考えているうちに、リク達も帰って来たわね。
魔物達の数が多い方へ行ったリク達も、ゴーストを倒して来たらしい。
どうやら、今まで集落に来ていなかっただけで、相当数のゴーストがいると考えても良さそうね。
エヴァルトやリク達と、ゴーストがもし集落に迫ってきた場合の対処法を話し合っておいたわ。
備えは無いよりはあった方が良いわよね。
「しかし、これだけ魔物達を倒したのに、減った気がしないな……」
魔物達の襲撃を退けてから数日、私はリク達と一緒に森の中に入って魔物達を減らす活動を続けて来たわ。
けれど、魔物達の数は一向に減った気がしないのよね……。
段々と洞窟に近付いて行ってるのは確かなんだけど。
皆で話してる中、アルネが集落の皆で一斉に森の魔物達を掃討する事を提案して来たわ。
私はまだ、数を減らしてからの方が安全だと思うんだけど……リクはどう考えているのかしら?
でも、リクは私の案もアルネの案も採用せず、もう少しだけ待って欲しいとの事だったわ……探査の魔法で森全体の捜索をして魔物の数を把握したいとの事だけれど……そんな事が出来るのかしら……。
まぁ、リクは契約者であり、私達エルフじゃ出来ない事をいとも容易くやってのけるのだから、出来るんだろうと思うわ。
「……またなの!?」
とりあえずリクの案に乗る事にして、床に就いたはずなのに……集落に魔物の襲撃を知らせる鐘の音が鳴り響いたわ。
飛び起きた私は、同じく部屋から飛び出して来たモニカと一緒にリクの部屋へ。
前回もそうだったけど、今回もしっかり起きててくれて助かるわ。
皆と合流して、今回は集落の入口へ。
ゴーストが火を放ってるみたいだからね、以前のように魔物達の後ろを突く時間が惜しいわ。
入口に辿り着いてすぐ、リクやモニカ、ソフィーやユノといった武器を使って接近して来た魔物と戦える者達は前線へ。
私とアルネは、エヴァルトの指示に従ってエルフ達に混じって魔法を使う役目になったわ。
「今回も以前と同じくらいの数か……」
「今回はゴーストも多いのよ? 前回以上と考えた方が良いわね」
アルネと言葉を交わしながら、魔物達に向けて魔法を放つ。
入口に一番近い場所では、リク達が頑張って魔物を押し止めてくれるから、こちらは奥の魔物へ魔法を放つだけで済んでるのよね……ほんと、助かるわ。
「あれは……」
「ゴーストの群れ!?」
魔法を何度も放って、少し疲れを感じて来た頃……入り口の上空にゴーストの群れが浮かび上がった。
あの数魔法を撃たれたら……!
そう考えても、対処のしようが無い……。
手の空いているエルフ達や私は、ゴーストに向かって魔法を放つけれど、焼け石に水ね……数が多過ぎて減らせてる気がしないわ。
そうこうしている間にもゴースト達は魔法の準備が出来たみたいね。
浮かんでるゴーストの群れの前に、火の玉が一斉に現れたわ。
「くそっ! あれが全部集落に向かったら……!」
「とにかく、出来るだけ数を減らすわよ!」
横で叫んでるアルネに叫び返して、また魔法の準備。
他のエルフ達も、ゴーストに向かって魔法を放つけど、いかんせん数が多すぎたわ。
ゴーストから放たれた魔法は、半分以上が集落の家に当たって燃え始める。
エヴァルトの指示で、魔物を止めるために集まっていたエルフ達はほとんどが消火活動に向かったわ。
消火をせずに放っておくと他の家にまで燃え移ってしまうから、仕方ないわよね。
私達も消化を手伝おうと、そちらへ駆けだすその瞬間……集落の入り口からとんでもない魔力の奔流が吹き荒れたわ……。
「これは……リクの魔力!?」
「なんだって!? 何が起きてるんだ!」
私とアルネは、消火活動を他のエルフ達に任せ、リクの所へと急いだ。
何が起こってるにしても、普通の状況じゃないのは確かだわ。
リクの所へ向かってる途中、集落を包むように魔力の膜が張られたのがわかった。
これは……エルサ様の結界……?
いえ……この魔力はリクの魔力ね……私の眼だからわかる差異だけれど。
「フリーズランス」
結界によって魔物達が阻まれてる事に安心しつつ、私達がリクの所へ着いた時、リクは多重魔法でゴーストを蹴散らすという、これまたとんでもない事をしでかしていたわ。
魔力量からしてとんでもないのに……。
「魔法の多重発動なんて……聞いた事ないわよ……」
「連続使用だけでも驚く事なのに、多重発動が出来るなんて……驚くを通り越して呆れるしか出来んな」
その光景に、私とアルネは驚けば良いのか、呆れれば良いのか……。
それからすぐ、リクの指示で私とアルネや他の皆と一緒に、結界の内側に残っている魔物に向かって行ったわ。
数が少ないから、これくらいなら簡単な事ね!
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