第85話 エルフの集落へ到着
「それじゃあ、二人もエルサに乗って行こう。エルサ、乗せる人数が増えるけど、頼んだよ」
「わかったのだわ。人数が増えるくらいなんともないのだわ。それじゃ、大きくなるのだわー」
俺の頭から離れたエルサが、空中で大きくなる。
ドラゴンの事は多少人間より知っていても、見るのは初めてだったんだろう、二人共大きく口を上げてエルサを見上げてる。
「乗るのだわー」
エルフの二人は恐々といった様子でエルサに乗り込み、体を緊張させてエルサのモフモフの毛にしがみつく。
俺やモニカさん、ソフィーさんもエルサに乗り込んで、いざ出発。
浮かび上がったエルサが、真っ直ぐ南にあるエルフの集落に向けて飛んだ。
途中、段々とエルサに乗っている事に慣れた二人が、速度に驚いたり、初めて空を飛んでる事に感動したりしてた。
フィリーナはエルサの毛がすごいモフモフしてて気持ち良い事に一番感動してたね。
気持ちはわかる。
このモフモフは一度体験すると忘れられなくなるくらい素晴らしいモフモフだからね。
エルサに飛んでもらってしばらく、一度休憩場所に使えそうな所で降りて昼食を食べて一休みした後、再び飛び立つ。
日が一番高い時間くらいに、エルフの集落へと辿り着くことが出来た。
とは言え、いきなりエルフの集落の中にエルサで降り立つなんてしたら驚かせてしまうので、集落から少し離れた場所に降り、エルサは小さくなる。
いつものように俺の頭にドッキングしたエルサやモニカさん、ユノやソフィーさんと少しだけその場で休む。
フィリーナとアルネは一足先にエルフの集落へと戻って事情を説明して来るんだそうだ。
人間が集落に入れるように説明する事と、俺が契約者でドラゴンのエルサがいる事も説明するみたいだ。
契約者に関して、フィリーナとアルネにちょっとだけ強めに変に畏まらないようにしてくれと伝えるようお願いしておいた。
そのまま俺達4人とエルサは、水筒から俺の淹れたお茶を出して飲んだりとまったり過ごしていた。
1時間くらいが経った頃、集落の方からフィリーナが見た事のないエルフ2人を連れて戻って来た。
「おまたせリク。一応リク達の事は皆に話しておいたわ。それでこっちが……」
「リクと言うのは君か?」
「本当にドラゴンとの契約者なのか?」
フィリーナが連れて来た男性エルフの二人は、俺を訝しむように見てる。
まぁ、助けを呼びに言ったフィリーナとアルネが予想より早く帰って来たうえに、ドラゴンと契約した人間を連れて来たなんて、すぐには信じれないのかもしれないね。
「本当ですよ。……エルサ」
「わかったのだわ」
俺はフィリーナ達の時もしたように、頭にくっ付いたままのエルサを持ち上げ、疑ってるエルフ二人の前に持って来る。
そこで手を離すと同時、エルサが翼をはためかせてそのまま空中に留まる。
「……これは……本当にドラゴンなのか……」
「私はエルサなのだわ。見ての通りドラゴンなのだわ」
小さい姿のエルサは、翼が生えてる事以外はモフモフで可愛い子犬にしか見えないけどね。
まぁ、喋るから普通の犬には見えないだろうけど。
しかしエルフ二人には、飛んでる事、喋る事だけで十分だったようだ。
「失礼しました!」
「本当にドラゴンだとは信じられず、失礼な事をしました!」
疑っていた二人は、アルネとフィリーナの時と同じように跪いた。
……だから、それ、辞めて欲しいんだけどなぁ……。
「……はぁ。ほら二人共、さっき話したでしょ。契約者のリクとその契約相手であるエルサには普通の客人として接しろって。ほら立って立って」
フィリーナが間に入って二人の腕を引っ張り立たせてくれた。
二人はそれでも「しかし……」だの「……失礼にならないだろうか?」とか呟いてたけど、普通にしてれば失礼とかないからね。
「大丈夫ですよ。俺に跪く必要はありません。普通に接してくれればそれでいいんです」
「……わかりました」
「……はい」
「まったく。私がリクの事を教えても信じないんだから……」
フィリーナが溜め息を吐きながら言ってる事に対して二人は、「いきなりドラゴンだとか」「早々信じられるものでは……」何て言ってるけど、確かにその通りかもしれない。
俺もエルサと会わなかったらドラゴンが暢気に人の頭にくっ付いてるなんて思わないしな。
「ふぅ、戻るのだわー」
「おかえり」
またいつものように頭にくっ付いて来たエルサをそのまま迎える。
「それじゃあ、話しは通してあるから、集落に行くわよ」
「わかった」
「ええ」
「うむ」
「行くのー」
それぞれフィリーナに返事をして、先を歩くエルフ三人について行く俺達。
そういえば、アルネはどうしたんだろう?
「フィリーナ、アルネはどうしたんだ?」
「アルネは集落に残って、他のエルフに事情説明を続けてるわ。この二人のように信じられないエルフもまだいるし、信じてもさっきみたいに跪いたりしちゃいそうだからね」
「そうか。ありがとう」
「……お礼を言われる程の事じゃないわよ。むしろエルフの集落を守りに来てくれたリク達にこちらがお礼を言いたいぐらいだわ」
「んー、まぁそこは気にしなくて良いよ。俺はエルフの集落が危険だとわかって、知ってしまったからには見過ごす事が出来ないと思っただけだから」
「……変わった人間ね。何の利益も無くエルフを助けようとするなんて……モニカやソフィーもそうなの?」
「私は、リクさんに巻き込まれたからね」
「私もそうだな。まぁ、人助けが出来るならしておきたいと思うが、今回は離れた場所だったからな……正直リクがいなかったら来ようとも思わなかっただろう」
「そうよね。普通は優しい人間でもそんな感じよね……」
モニカさんもソフィーさんも俺に巻き込まれたと思ってるみたいだ。
……二人共、俺がエルフの集落を助けに行くと決めた時、率先して参加して来たと思うんだけどなぁ……。
「ユノは助けたいの。リクと一緒なら無理な事は無いの。だからエルフの集落が危険な事を教えたの!」
「ユノちゃんは良い子ねー。……この兄妹が変わってるって事でいいのかしらね」
うんうん、ほんとにユノは良い子だ。
でもフィリーナ、ユノも一緒にして変わってるなんて言わないで。
俺は普通の平凡な人間なんだから。
俺の考えてる事がわかったのか、エルサが頭で呆れるような溜め息を吐いたのは何だったんだろう……。
そんな風に話してるうちに、エルフの集落へと入った。
集落は人の肩くらいまである木の柵で囲まれている。
柵は頑丈そうな木で作られてて、簡単には壊せないようになってる。
でも、今はその柵が所々切り壊されていたり、潰されていたりしてる。
……多分、魔物の襲撃にあった時に壊されたんだろう。
「ようこそ、エルフの集落へ。歓迎するわ、リク、エルサ、モニカ、ソフィー、ユノちゃん」
集落に入って少し進み、真ん中に井戸がある広場まで来たところで、前を歩いていたフィリーナがくるりと体を翻してこちらを向き、俺達を歓迎してくれた。
広場には他にも数十人くらいのエルフ達がいて、皆が俺達の方を注目してる。
あ、アルネもいた。
「貴方がリクさんですか。ようこそおいで下さいました。我々エルフは貴方達の訪問を歓迎致します」
「ありがとうございます。……えっと、貴方は?」
広場にいたエルフの中から、一人、他のエルフよりも大柄で筋肉質な体をしたエルフが進み出て話しかけられた。
顔が美形で、耳が長い事以外はマックスさんくらい大柄だ。
美形のマッチョとか……ミスマッチも良いとこだろう……。
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