第65話 冒険者パーティとは



「野盗達も昨日の事を体験したらもう悪さをしようとは思わないかもしれんな」

「そうね」

「……更生させる効果としては破格ですね」


 そこまで?

 まあ、もう悪さをしなくなってちゃんと更生するのなら良い事をしたんだよねきっと。


「……ええと、野盗退治の達成報酬でしたね。これは金貨2枚銀貨35枚になります。依頼の報酬と野盗達を捕まえた賞金を合わせた額になります」

「それと、野盗を探してる時に遭遇したフォレストウルフを討伐したのですが」

「フォレストウルフですか。奴らは群れで行動するので低ランク冒険者だと討伐は難しいのですが……リクさんだけでなく、Cランクのお二人なら楽な相手かもしれませんね」

「実際俺以外の二人が討伐してくれましたよ。それでこれが討伐証明部位の前足11本です」

「確認します。……はい、たしかにフォレストウルフの物ですね。それではこちら、討伐報酬が1匹につき銀貨10枚となりますので、合計で金貨1枚と銀貨10枚ですね。こちらになります」 

「はい」


 受け取ってまたモニカさんに確認してもらう。

 モニカさんからのジト目が顔に突き刺さるようだけど、俺が数えるより早いうえに正確だからしょうがないよ、うん。

 あとで、何かモニカさんに買ってあげようと思う……。


「それでは、依頼報告はこれで終わりですね。また別の依頼を見ますか?」

「んー。いえ、今日はこれで帰ろうと思います。また明日以降に目ぼしい依頼を見せて下さい」

「わかりました」


 あまり依頼ばかりやっていても獅子亭を手伝えないしね。

 冒険者にはなったけど、そっちもちゃんとしておきたい。

 まだ獅子亭の従業員だからね。

 それではと、俺達三人は座っていた椅子から立ち上がり、会議室を出ようとしたところで思い出したようにヤンさんに声を掛けられた。


「そういえばリクさん」

「はい?」

「今日中に代官様からの使いがリクさんを訪ねて獅子亭に行かれると思いますよ」

「クラウスさん、ですか?」

「ええ。勲章の件らしいです。本当は昨日ギルドの方に訪ねていらっしゃったのですが、依頼を受けて街から出ていると伝えると、また明日にでも獅子亭に行くとの事でした」

「そうですか、わかりました。ありがとうございます」

「いえいえ、それではまた用があればギルドまでお越し下さい」

「はい、失礼します」

「「失礼します」」

「失礼したのだわ」


 最後だけ今までおとなしくしてたエルサが声を上げたのをヤンさんが朗らかに見てた。

 冒険者ギルドから出る前に、受付があるギルド入り口付近のテーブルで今回の依頼報酬を分け合う。

 全部の合計が、金貨4枚と銀貨120枚だ。

 三等分して二人に渡そうとしたら、二人共あまり活躍をしなかったのだから、リクが多めに貰うべきだと主張して来た。

 とはいえ、ダミソウ採取ではソフィーさん、土を調べるのはモニカさん、フォレストウルフの時は二人の活躍があったんだからと、強引に均等に分けて二人に渡した。

 モニカさんには、報酬を受け取る時に数えてもらった分もあると言ったら、なんとか納得してくれた。

 報酬を分けるのも終わったし、ギルドから出ようと思ったら、ソフィーさんが何やら考えつつ俺に声を掛けて来た。


「……リク、昨日一緒に依頼をこなして来て今更だが、お前パーティはどうするんだ?」

「パーティ、ですか?」


 ホームパーティ?

 いやいや、違うよな。

 ゲームとかで一緒に冒険したりするグループの事か。


「パーティは冒険者同士で作った一つのグループだ。一緒に依頼を受けて仕事をするグループを作ってギルドに登録しておくと便利だな。例えば報酬を貰う時だが、今回私達は報酬を全て受け取ってから自分達で分け合ったが、ギルドに登録する際に報酬分け方を申請しておくと貰う時にあらかじめそれぞれ分配されて受け取る事が出来る」

「ふむふむ」


 登録して分け方を申請する必要があると。

 申請しておくと、例えば今回のように山分けにするのなら最初から三人にそれぞれ分けられた報酬を受け取る事が出来るんだね。


「他にも、別の街に行った時等拠点にしてる場所が無い場合、パーティ人数が入れる宿や店等の紹介もしてもらえる」

「知らない街でギルドから紹介してもらえるなら便利ですね」

「そうだ。初めて訪れる街や村だと何処に宿があるか探さないといけないからな。場所くらいなら聞けば教えてくれるだろうが、複数で行ってもそこに泊まれる部屋が空いてるかはわからないからな」

「成る程」

「リクさえよければ、私とパーティを組まないか?」

「ソフィーさんと?」

「ああ。今まで私は誰ともパーティを組まずに一人でやって来たが、やはり一人だと限界を感じていてな。パーティだと誰かが出来ない事も別の誰かが補う事も出来る」

「そうですね……俺はまだ冒険者になったばかりで色々知らない事ばかりです。なので、色んな事を経験して来てる先輩冒険者のソフィーさんが組んでくれるのなら心強いと思います」

「そうか、良かった」

「……私も。リクさんとパーティを組むわ!」


 ソフィーさんとパーティを組む話で進んでいたら、横からモニカさんが声を上げた。

 モニカさんには色々お世話になってるし、この世界に来てから初めて知り合った人でもあるわけだから、当然断る事は無い。


「それじゃあ、俺とソフィーさんとモニカさんの三人パーティですね」

「そうね。よろしくお願いするわ」

「うむ。これからよろしくな」

「私もいるのだわー」

「ははは、エルサは冒険者じゃないけど、エルサも入れて4人だな」

「なのだわー」

「ドラゴンのいるパーティ……」

「提案したうえ、自ら参加したが……大変なパーティになりそうだな……」


 大変ってソフィーさん……ちゃんとランク相応、身の丈に合った依頼を受けて行くつもりだから大丈夫だよ?

 それに依頼を受ける時は経験豊富なソフィーさんに相談させてもらうと思うし。

 でも、今まで一人でやって来たソフィーさんは何で俺のような初心者冒険者とパーティを組む事にしたんだろう……?

 一人でやっていくのに限界を感じてるって言ってたけど、ソフィーさんなら他にも良いパーティの誘いがありそうなのになぁ。

 ……まあ、エルサをチラチラ見てたからエルサ目当てなのかもしれないな。

 このモフモフは人を魅了するからね!


「では、受付に行って申請をしよう。欲を言えばもう一人後方支援の出来る魔法使いか、前衛で盾を使った引き付け役が出来る人がいたらバランスが良いんだが」

「魔法使いか盾ですか」

「ああ。私は前衛専門だが、敵の攻撃は避けるばかりで、受けたりは出来ない。その代わりスピードを生かして戦うのが得意だ。モニカは槍のリーチを生かして前衛寄りの中衛、あまり敵に接近する役目とは言えないな。後はリクだが……」

「……俺は?」

「実際に見たり聞いたりしたところ、魔法でほとんど何でも出来る。そのうえ剣の扱いが上手いわけではないだろうが、それでも誰にも負けない強さだ。どの役目も出来るが……リクは遊撃が良いのかもな」

「遊撃ですか」

「そうだ。その時の戦闘に応じて前衛として戦ったり、後ろから魔法で援護したりとかだな。遊撃は臨機応変だからな、専門じゃない。なので専門で後方支援をしてくれる魔法使いか、敵の攻撃を受けてくれる盾が扱える人のどちらかが欲しいんだ」

「どちらかなんですか?」

「本当なら両方欲しいが、人数が増えすぎてもな……まあ気心の知れた相手なら大丈夫だろう。適当な人選は揉め事になる事が多いから気を付けた方が良い。さすがにどのパーティにも入ってないこれらの条件に当てはまる人物はそうそういないだろう。だからどちらか片方なら、と言ったところだ」

「成る程。あまり知らない人が急に加入しても良い事は無いのかもしれませんね。……盾か魔法……俺はあまり知り合いが多くないので、あてはまる人物はいませんね」

「私もだ。知り合いでそういった役目の者は知ってるが、皆それぞれパーティに入ってるからな」



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