第64話 依頼達成報告をするため冒険者ギルドへ



 モフモフな夢が見られずに少し残念な気持ちで起きた朝、一緒のベッドに入って寝てたエルサが起きるまでモフモフして癒されておいた。

 朝の準備をして、朝食を取り、マックスさん達にギルドに行くと伝えて、俺とエルサ、モニカさんとソフィーさんで冒険者ギルドへの報告に向かった。

 途中、俺の頭にくっついてるエルサを見て拝み始めるお爺さんやお婆さんもいて少しだけ時間を取られたけど、昼になる前にはギルドに到着。

 輝くような白い毛がモフモフなエルサを頭にくっつけてるとやっぱ目立つのかもなぁ。

 お腹のモフモフを堪能するために辞める気はないんだけどね。


「リク様、ギルドへようこそ。本日はどういった御用でしょうか? 依頼は昨日受けて頂いたと思いますが」

「今日はその受けた依頼の報告に来ました」

「……あの三つの依頼をもう完了させたのですか……?」

「はい。全部終わりましたよ」

「……失礼しました。副ギルドマスターを呼んで来ます。少々お待ちください」

「お願いします」


 そういえば最近、受付の女性が俺の事をずっと様を付けて呼んでるんだけど、何でだろう?

 他の人と比べて、丁寧な対応のような気もするし……気のせいだろうか。

 冒険者登録をするために来た時に受付してくれた人と同じ人なんだけど、その時の対応と何となく違う気がしてた。

 まあ、ちゃんと対応してくれるからそれでいいんだけどね。


「お待たせしましたリクさん。依頼を達成されたようですね」

「はい。昨日で三つとも終わらせました」

「では、報告や報酬の受け渡しを致しますので、こちらに」


 いつものように奥から出て来たヤンさんに案内され、いつもの会議室へと通された。


「えっと、まずは薬草採取の依頼ですね。こちらがダミソウになります」

「……依頼より少々量が多いですが……確かにダミソウでございます。状態も良い物ですし、これは常備薬として使える薬草なので多めの量も買い取りましょう」

「お願いします」


 依頼の量より多くても買い取ってもらえるのか。

 昨日ソフィーさんが張り切って取り過ぎたダミソウの分も持って来れば買い取ってもらえたんだね。

 まあ、持ち運べなかったから仕方ないけど。


「では、こちらが依頼報酬の銀貨2枚と、超過分の買い取り額銀貨3枚です」

「はい、確かに」


 ヤンさんからまず薬草採取の報酬を受け取る。

 次は地質調査の報告だ。

 まずソフィーさんに言って持って来たガラスを出してもらって。


「戦場跡から出たガラスですが、こちらにあるのが全てでもう掘り返しても出て来ないと思います」

「そうですか。これは……すごく透明度の高いガラスですね……ですが大きさがあまり大きくないと……ですが何故もうガラスが出ない事がおわかりで? 1日程度の調査ではあの範囲を調べる事は出来ないと思うのですが……」

「えーと……」

「リクさんが魔法で範囲全ての土を掘り起こしたんです」

「あれはすごかったな。こう、土が勝手に動いてるようで……」

「……そうですか。リクさんはエルサ様との契約者でしたね。ゴブリン殲滅だけでなくそんな魔法も使えるとは……」


 便利なドラゴン魔法のおかげだね。

 どう言っていいか悩んでたらモニカさんとソフィーさんがヤンさんに魔法を使った事をあっさり言ってしまった。

 別に隠すつもりは無いんだけど、俺が魔法を使ったってだけで変な賞賛をされるからね、なんかむず痒い感じ。


「持って来られたガラスですが、透明度の高い素晴らしいガラスではあるのですが……いかんせんあまり大きくないものばかりです。なので買い取り額は少ないでしょうが、全部で金貨1枚とさせていただきますが、よろしいでしょうか?」

「あ、買い取ってもらえるんですね。はい、それで良いです。モニカさんもソフィーさんもいいですか?」

「「はい」」


 依頼書には調査とだけあったから、買い取ってもらえるとは思わなかった。

 買い取ってもらえるなら値段は気にしない。

 というか、大きかったらもっと金額が高かったような言い方だから、お金に困ったらガラスを作って売るって事も出来るかもしれない。

 魔法を使うだけでそんなに苦労する事じゃないから。

 今はお金に困ってないから、そんな商売はしないけどね。

 むしろゴブリン軍討伐の褒賞だとかで増えたお金をどうするかの方が困ってるくらいだし。

 前の世界では考えられなかったお金があり過ぎて困るって状況、ちょっと贅沢な気分。


「それでは、ガラスはもう出土しないという事で、依頼者には報告しておきましょう。この透明度のガラスが産出されるのなら、ヘルサルの特産として栄える事も出来たかもしれませんね」


 透明度の高いガラスは現状の技術だと作れないけど、産出出来るならそれを使て特産品として商売が発展してたのかもね。

 ガラスは高級品なのか。

 まあ、技術革命とかやる気にならないから、これからはガラスが出来てしまう程の魔法は控えたい。


「それで、地質……農業に適している土かどうかの調査ですが」

「はい、それはモニカさんから説明してくれると思います」

「わかったわ、私が説明するわね。土の方は作物が育つための栄養が高く、柔らかいので新しく開墾をするのに最適だと思います。専門の知識を持ってるわけではないので、そういった人を交えて実際の土地を見てみた方が良いかと思います」

「わかりました。依頼者には農業に適している可能性が高いため、詳細な調査が出来る者の派遣をするように伝えましょう。ガラスが産出されなくても、ヘルサルで農業が出来るようになれば街は今よりもっと潤うでしょうね」

「そうですね、現状ほぼ全ての野菜はセンテから買っていますから、作物を育てられれば一部の野菜だけでも、ヘルサルの街で野菜の価格が下げる事が出来ると思います」


 さすが獅子亭の娘。

 飲食店だから、野菜を仕入れる値段にも響くのだろう、獅子亭でお金を管理してるのは主にマリーさんだけど、モニカさんも手伝ってるのをよく見かけた。

 こういう計算はある程度得意なんだろう、俺への報酬も前にしっかり数えてもらったりしたしね。

 それにヘルサルでも一部の野菜が仕入れられるようになれば、獅子亭も助かるのかもしれない。


「農業が出来るようになって、作物が出回るのはもう少し後の事でしょう。とにかく、この調査依頼も達成と致します。報酬は銀貨70枚ですね」

「はい、モニカさんよろしく」

「また私? まあ、いいけど」

 

 俺よりもモニカさんが硬貨を数える方が早いからね。

 決して面倒だとかそんなんじゃないよ。


「確かに、銀貨70枚受け取りました」

「はい。それで最後の依頼ですが、野盗の残党でしたね。最近街道で馬車が襲われて色々被害が出ていたそうですが」

「そうですね。ヘルサルとセンテの間にある森にいるのを発見しました。野盗のアジトと思われる小屋を見つけまして、全員を眠らせて捕縛。連れて帰ってヘルサルの兵士へ受け渡しました」

「はい。今朝方兵士達の方からも報告が来ております。しかし、報告で20人とあったのですが、よく全員を生きたまま捕縛したうえ、1日で連れ帰りましたね」

「そこはまあ、魔法で……」

「……ああ」


 ヤンさんは俺の事情、ドラゴンと契約してる事を知ってるし、俺のやって来た事や魔法の威力を見てるから、もうそれでだけで納得してもらえるようになったようだ。

 遠い目をしてるような気がするけど、俺の事を理解してくれてると思うよ、うん。


「帰りはエルサちゃんにぶら下げて帰ったわよね」

「あれはなぁ、私でもあんな事はさすがに……」

「……エルサ様という事は、飛んだのですか?」

「はい。すごい高く飛んだうえで、エルサちゃんの手に野盗達を引っかけてぶら下げて帰りました」

「……それはまた……」


 なんだろう、ヤンさんが引き気味だ。

 一度に運ぶために便利だからと思ったんだけど、いけなかったかな?



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