第38話 センテギルドへの報告とソフィーさんからの誘い
「Cランク……本当なのか? リクが嘘を言うような人間には見えないが、信じ難いな……」
「本当ですよ。これを見ればわかるはずです」
前例の無い特例だってヤンさんが言ってたからね。
信じられないのも無理はないので、ソフィーさんに冒険者カードを渡して見てもらった。
「……これは……本当にCランクなんだな……疑って済まなかった」
「いいんですよ。俺自身も驚いてますから」
苦笑しながらソフィーさんに返事をしていると、ギルド内にいた他の冒険者のざわめきが聞こえる。
「本当にCランクなのかよ……」
「偽造とかじゃないよな?」
「初期でCランク……そんなのあり得るの?」
「……将来有望ね……今のうちに……ふふふ」
等々、色々と言われてるようだ。
何かちょっと不穏なのも混じってた気がしないでもないけど……。
「リクさん、用を済ませないと」
「ああ、そうだった。ソフィーさんすみません、俺ヘルサルギルドの使いで来てるので」
「む、そうか。邪魔して悪かったな。時間のある時に試験の事を聞かせてもらうぞ」
「ははは、はいわかりました」
聞かせてもらうぞのあたりからまた視線がエルサに固定されてる。
とにかく、周りでざわめいてる冒険者の方達は置いておいて、受付のカウンターの方へモニカさんと移動する。
「冒険者の方ですね、依頼を受けますか?」
「いえ、今日はこちらのギルドに用があって来ました」
「ここにですか?」
「はい。ヘルサルの冒険者ギルドからこちらのギルドへの報告書になります」
受付をしている女性にヤンさんからの報告書を渡す。
「確かに受け取りました。内容を確認いたしますので、少々お待ちください」
受付の女性は奥へと報告書を持って行ったけど、さてどうやって時間を潰そうか。
今のうちに、ソフィーさんに試験の事を話しておくかな……と考えているとすぐに奥から先程の受付の女性と一緒に男性がやって来た。
「君がリク君か。私はこのセンテの冒険者ギルドでギルドマスターをしているベリエスだ。すまないが、こちらで話を聞かせてくれ」
「はい。わかりました」
「はい」
ベリエスさんと受付の女性に案内され、センテ支部の奥へと案内される。
奥へ行く前に、ギルドマスターが出て来た事に驚いたソフィーさんの顔が見えたけど、説明する間も無いので、また今度にしよう。
案内された部屋は机が真ん中にあり、それを挟んで向かい合わせになるように椅子が並んでいた。
ベリエスさんが片方に座り、それに向かい合うように逆側に俺とモニカさんが座ったのを見計らって、受付の女性がお茶を淹れてくれた。
そのまま受付の女性は退室、俺とモニカさん、ベリエスさんの三人だけが部屋に残る。
女性が退室したの見たベリエスさんが話し始める。
「さて、ヘルサルギルド支部のヤン副ギルドマスターからの報告書には、ゴブリンジェネラルが発見されたとあったが、本当か? 疑うわけじゃないんだが、事が事だけにな……」
「はい、本当です。実際に俺とこのモニカさんでゴブリンジェネラルを発見し、討伐しました。討伐部位の確認はヤンさんがしてくれています」
「……本当なのか……」
「はい。ヘルサルギルドでは緊急依頼として、ヘルサルにいる冒険者へ防衛の参加を強制依頼とするようです。それで、防衛のためにこちらのセンテギルドからも冒険者の方達に応援を頼めないかとの事でした」
「報告書に書いてあった通りか。協力するのは当然だ。ヘルサルの街が壊滅する事はセンテにとって悪い事しかないからな。ヘルサルが壊滅した場合、この地域ではセンテが次に大きい街だ。次に狙われるのはこの街なのは確実だろう」
「今は一人でも援護してくれる人が欲しい状況ですね」
「そうだろうな。防衛するために人が大勢いるはずだ。ふむ……」
ベリエスさんが何事かを考え始めている。
俺から伝えられる事は伝えたし、そもそも肝心な事は報告書に書いてあるはずだから、俺からはこれ以上何も言えない。
モニカさんと二人、黙ってベリエスさんの考えが纏まるのを待つ。
「……そうだな、よし」
ベリエスさんが決心したように立ち上がる。
「センテギルドも全面協力をしよう。防衛という事は物資がいるはずだ。低ランクの者は輸送等をさせ、高ランクの者はゴブリン達の討伐に立ってもらう。こちらでも強制依頼だ。ヘルサルの街を見捨てる事は出来ん」
「「ありがとうございます!」」
センテギルドが協力してくれるなら心強い。
「さて、動かんといかんな。私はまずギルド職員達に通達して、冒険者達への依頼を認可させる。その後はこの街の代官や各所を回って協力出来るところを探すとしよう。兵士等もヘルサルに送れると良いのだが、まあヘルサルが無くなったら次はこの街だと脅しておけば大丈夫だろう。二人はヘルサルへ戻って、この事を伝えてくれ」
「わかりました。ヘルサルへの応援、よろしくお願いします。」
「任せておけ。あと、そうだ」
「?」
「その頭の上の……犬? ……この件が落ち着いたらちょっと……撫でさせてくれないか」
「……は、はい。この件が無事に終わったら、存分に……では、失礼します」
モニカさんと二人で頭を下げて部屋を退室する。
ギルドマスターという役職にしてはちょっと頼りなさそうな外見の人だったけど、ちゃんと対応してくれて応援を約束してくれた。
部屋を出る頃には頼りになる印象に変わってたね。
人は見かけによらないもんだ。
しかし……まさかこんなおっさんまでもエルサのモフモフに引き付けられるとは……。
さすがは最高のモフモフ!
エルサから「勝手に承諾するななのだわ!」と俺に抗議をして来ているけど、聞こえなかったフリをしておいた。
ギルドの入り口まで戻ると、またもや冒険者の方達からの疑問の視線。
そういえば、何も説明せずに奥に行ったからなぁ。
ギルドマスターと直に話すとか、皆内容とか気になるんだろうな。
視線の中には俺に対して何者?というのもある気がしたけど、多分気のせいだろう。
「出て来たか。リク色々聞きたいんだが、時間はあるか?」
「ソフィーさん」
「……むぅ」
視線から逃れるようにそそくさとギルドから出ようとしたけど、ソフィーさんに捕まってしまった。
モニカさんが不満気な声を漏らしてる、この視線に耐えるのはちょっと面倒だよね、わかる。
「んー、場所を変えませんか? ここはちょっと……」
と言いながら周りを見たら興味を持った冒険者の方達が周りに集まって来つつあった。
ちょっと圧迫感があるよね、屈強な冒険者の人達複数に囲まれるのって。
「……そうだな。これでは話しづらいか……場所を変えよう、ついて来てくれ」
そう言うとソフィーさんはギルドの外へと出ていこうとしているので、慌ててついて行った。
「二人共、昼は食べたか?」
「いえ、まだです」
「……」
モニカさんが黙ってるけど、どうしたんだろう? さっきから何か考えたり、少し顔が赤くなったと思ったらソフィーさんを睨むように見たりしてたけど……。
「そうか、じゃあついて来てくれ、一緒に昼を食べよう。もちろん食事代は話しを聞かせてもらう代わりに私が出そう」
「いいんですか?」
「ああ、それなりに稼いでいるからな。まあ、獅子亭程美味い店ではないがな」
そう言って笑いながら歩き出す。
獅子亭よりおいしい店ってあるんだろうか?
もちろん、ヘルサルより大きいらしい王都だとか、他の街や国に行けばあるのかもしれないけど、今のところ、俺がこの世界に来て食べた物の中ではやっぱり一番獅子亭の料理がおいしい。
他の料理がおいしくないわけじゃないから、あんまり不満もないけど。
「獅子亭の料理、食べた事があるんですか?」
おや? モニカさんが獅子亭という言葉に反応したぞ?
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