第13話 冒険者ギルド訪問



 「……」


 冒険者ギルドに入ってみた。

 入って正面にカウンターがあり、4人が座っていて銀行の窓口のようになっている。

 入り口からカウンターまでの間に何席かのテーブルや椅子があり、鎧を付けた人や剣を持った人、弓を持った人等何人かが座って話していた。

 まずは窓口に行くのかな?と思いつつ歩き出そうとすると、座って話していたうちの一人に声をかけられた。


「リクではないか。さっそく冒険者登録するのか?」

「ソフィーさん、こんにちわ。いえ、まだ登録するかは決めていませんが、色々と詳しい話しを聞いてみようかと」

「そうか、ならあそこの受付の一番右端だな。そこが登録受付になってるから、そこで色々聞いてみるといい」

「わかりました。ありがとうございます」


 ソフィーさんにお礼を言い、言われた通り右端の受付に向かう。


「こんにちは、冒険者登録の方ですか?」


 受付に近づいたところで、そこに座っていた女性に声を掛けられる。


「いえ、まだ登録をするかは決めていませんが、冒険者という仕事に関して色々と話を聞いてみようかと思いまして」


 そう言いつつ、受付のお姉さんを見て驚いた。

 白い髪が艶やかな頭の上に白い兎の耳があり、目がほんの少し赤みがかっていた。


「あ、獣人は初めて見ますか?」

「……すみません、変な目で見て」


 驚いた事を隠せず、失礼な事をしてしまったと謝る。

 人を見て驚いて、ジロジロと見れば失礼だからね、しかも女性だし、失礼のないようにチラチラと見ないと……あれ?これも違うか?


「いえ、獣人はこの辺りでは珍しいですから。私は兎型の獣人族でミラといいます」

「はい、初めて見ました。あ、俺はリクです」

「リクさんですね。冒険者の方なら見慣れている人も多いですけど、一般の方は見た事がない人も多いようです」


 ミラさんは本当に慣れてるのか、笑顔を崩す事はない。

 訓練された営業スマイル!


「そうなんですね」


「はい。冒険者にも獣人はいますし、私のようにギルドの職員として働いている獣人も多いですから。冒険者ギルドは人種差別をしない組織ですので」


 冒険者ギルドは……ってことは他ではやっぱり人種差別はあるのか……嫌だねまったく。

 それはさておき、ミラさんに冒険者に興味を持っているの事を伝え、どういったものなのか詳しく聞く。


「冒険者登録は基本的に、15歳以上であれば誰でも登録することができます。登録する際に知識や強さを測るため試験をしますが、これは初期ランクを決定するためのもので、結果が悪くても登録できないという事はありませんのでご安心ください。例外は犯罪者で、犯罪歴のある人は冒険者登録はできません。」


 試験か……筆記試験と実技試験ってとこかな?こっちの世界でも試験ってのはちょっと嫌だけど……落ちる事のない資格試験と考えればいいか。

 犯罪に関しては当たり前か。

 犯罪者を冒険者にしてはギルドの信頼にも関わりそうだ。


「試験の結果で初期のランクが割り振られますが、多くは一番下のランクであるFランクになります。結果が良いと最高でDランクまで与えられますね。Dランクは冒険者としては一人前と言われるランクなので、初期にこのランクに割り振られる人は少数で、よほど試験の結果が良くなければいけません」


 その他、色々聞いた冒険者の事をまとめると。

 ランクはS、A、B、C、D、E、Fの順に下がっていき、C以上になるために は一定の依頼達成数と達成率が必要で、B以上では一定期間依頼を達成出来ない場合はランクが下がる。

 依頼に関して、冒険者ギルドで審査をして依頼ランクを設定し、一つ上のランクまでの依頼を受けることが出来る。冒険者ランクがDだとするとC以下のランクのものまでが受けられる。(ただし、一つ上のランクの中でも難易度が高いと思われる依頼は職員によって止められる事もあるらしい)

 ランクを上げるには、依頼を一定数こなす事で上がるようだが、最低でも一回は一つ上のランクの依頼を達成させなければいけない。

 依頼とは別に魔物を討伐し、その素材を手に入れた場合は、ギルドが買い取る。

 犯罪に関して、重罪を犯した者は即登録抹消の後、その者に関するギルドが持っている情報を軍や捜査機関等に渡す。

 軽い罪で本人から聞き取りをし、反省後更生する見込みがあると思われた場合はランク降格をさせて登録抹消まではしない。

 冒険者は単独で依頼に臨むのもいいが、複数人でまとまりパーティという物を組み、役割分担をしたり協力をする事もあるが、依頼が達成されるのであれば冒険者に任せられる(達成報酬は人数分増えたりはしないので、基本的には山分けとなる)

 冒険者ギルドという組織について、冒険者ギルドは国には所属せず、国家間をまたいで活動する組織で、国からの依頼というものはあるが、国からギルドに対して命令を下す事は出来ない、自治組織のようなものになっている。(冒険者本人は国民の一人であるため命令が有効な場合もある)

 これは、冒険者とギルドが円滑に仕事をする事で様々な貢献をし、信頼を得る事で成り立っているため、犯罪等を含め、冒険者がギルドや他の冒険者を貶める行為をした場合、様々な制裁を行う事となる。

 この他、冒険者に関する事、ギルドに関する事、規則等を聞いた。


「なるほど……大きい組織なのですね」

「そうですね。役職のない職員である私くらいでは組織全体がわからない程には大きいですね」

「ありがとうございます。あと、ヘルサルの街にもギルドはありますか?」

「ヘルサル支部がありますね。人口がこの街より多いので、ここより依頼の種類も多く冒険者も多いようです」

「そうですか、俺はヘルサルの街に住んでいるので、登録をするならそちらですると思います」

「わかりました。もし依頼でこの街に来たり、この街での依頼を受ける事があれば、その時はよろしくお願いします」

「はい、その時はこちらこそよろしくお願いします」


 丁寧に説明してくれたミラさんにお礼を言ってカウンターを離れる。


「どうだ?登録する気になった?」

「いえ、まだ説明を受けただけですので、しばらく考えます」


 カウンターを離れた俺に話しかけたソフィーさんにそう返す。


「慎重なんだな。だが冒険者にはその慎重さも必要だ。危険もあるからな」

「そうですね、ゆっくり考えて、自分がやれそうだと思えれば登録したいと思います。あ、ところでですけど」

「ん?なんだ?」

「一緒に馬車に乗っていた商人のハンスさんのお店ってわかりますか?」

「ああ、あの人か。あの人の店はわからないが、武具を扱っていると言っているのは聞いていた、そういう店が集まってる場所ならわかるぞ」

「それじゃあその場所を教えて下さい」

「何だ?冒険者登録はまだなのに武具に興味があるのか?」

「まあ、冒険者に関係なく、自分の身を守る装備をしても良いんじゃないかと思ったので」

「そうだな、最近は野盗が出るという話しも聞くし、魔物もいる。準備しておくのは良い事だ」

「そういう事です」

「ふむ、それなら私が案内しよう。今日は依頼もなくて暇だったからな。同じく暇をしていた者と話していただけだしな」

「それは助かりますが、いいんですか?」

「気にするな、リクには獅子亭のパンを分けてもらった恩もあるからな」


 そう言いながら、ソフィーさんは話しをしていた他の冒険者達に断りを入れた。

 ソフィーさんの申し出を受ける事にして、俺はギルドの外へと出る。

 パンは俺一人じゃ食べ切れなかったから、それくらいで恩というのも大袈裟だと思うけど……綺麗なお姉さんと街を歩けるという事だからいいか。

 一人で歩くよりは寂しくもないし、楽しそうだ。

 …………何か一瞬モニカさんがマリーさん並みに怒っている顔が浮かんできたが、頭の隅に追いやり、気にしない事にした。

 そうして俺は、ソフィーさんの案内で武具店が揃っている場所へと向かって行った。



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