能力
「お前たちには特殊能力を与えてある。気づいているとは思うが」
「やたらと力が強くなったり、いやらしくなったりしているだろう。それは全部お前たちに宿った天使の力だ」
「はい、質問」
陽子が手を上げた。
「神道の神様なのに、なんで部下が外来語の天使なんですか」
「ちょっと記憶が戻ったか。その通り。例によって肩甲骨あたりから羽を生やした天パでポコティン丸出しのガキどもは、我々とは本来関係のない存在である。だが今は、大陸の数と人間の数が減ったこともあり、それにつられてか宗派の数も減った。統合されたものの中に天使も含まれていたのだ」
「大陸の数が減ったっていうのは」
「それについては、おいおいな」
そこを知りたいんだけど、と陽子は続けて訊こうとしたが、スラ姫によって遮られた。
「
「いりませんけど、そんな力」
「なんで?」
まさかいらない理由を問われるとは思わなかったが、スラ姫の顔を見るに本気で不思議がっているようだ。
「戦う理由がないので。あと、普通に生きたいので」
「いや、お前は襲われるし、ここまで知ったからには、もう普通には生きられない。ざんねん」
「なんで?」
「そういう仕組みになっているのだ」
スラ姫は懐からメモ帳を取り出し、目を走らせた。
「お前、サンライトイエローな。戦う時の名前」
「なにそれ恥ずかしい」
「全員分の名前を一生懸命考えたんだから、黙って聞け。次、
大地はいまだ視線を
「お前、すごい防御力のブルーグランド。全員の盾。あとダメージ受けづらい。希望通り人類を守れるぞ」
「人類を守りたい!」
「ヨカッタネー。次、
おずおずと鳴海は口を開いた。
「あの、そろそろ面接に行かないとならないんですが」
「大丈夫。どうせ不採用だから。貴様、グリーンウェーブはヘタレのヘタレ、鼻垂れ坊やなので銃弾でも避けられる回避力と、借金取りからも逃げ回れる最高の逃げ足を授けてやった。ありがとうございますと頭を垂れろ」
悪口のみで構成された能力解説に、鳴海の顔がひきつる。
「拒否します」
「できません。はい次、エロ姉ちゃんはインランピンク」
雪代はスラ姫の顔の高さにしゃがみ込み、笑顔をこしらえた。
「ん?」
「嘘です。バーミリオンストームは超ウッフン系で敵を誘惑します。落とそうと思えば男だろうが女だろうが落とせるけど、もれなく他の人間もたくさんついてきます。変身した時の布地の面積は極端に少ないですが、その方が効果が出るからです。結構強いです」
スラ姫はメモ帳に描かれたイラストを見せた。
「朱色のさらしとまわしで人前に出ろと?」
「うん。大丈夫、破れないから」
「大丈夫じゃないわよ。『ぼくがかんがえたさいきょうのせん隊』みたいな設定を長々と聞かされた上、なんでこんな痴女丸出しの格好を。誰かアンタを叱る保護者とかいないの!?」
「人間じゃないんで……。神なんで……」
少し得意げな顔をした少女の顔をつねりあげてやりたくなったが、雪代はぐっと堪える。逃げればいいだけの話だ。
「あ、そうだ。逃げたりしたら頭が爆発して死ぬよ〜。最後は軍人のおっさん」
「五番目の隊員だから、5,ご、かんまでいいかと思ったんだけど、どう?」
どうと問われても、どうでもいいとしか答えられない。ならいいか、と姫は解説を続ける。
「ごかんま。ご、かんま。ごーかんま。精力旺盛だし、ピッタリだと思うんだ。攻撃力すごいごーかんまね」
「いや、待ってくれ。そんなことしたことないんだが。精力旺盛とか疑われるのも困る」
「事実だしなあ。おっさんが月に何回そういう店に行ってるか数えたんだけど」
雪代が陽子を抱えて距離をとった。
「だ、だが他の隊員は色とか付いているのに、自分だけ数字呼びはどうかと」
「さっきどうでもいいって言ったじゃん。じゃあセクシャルネイビーナンバー5は?」
「まだそっちの方がましだ」
本当はバイオレットが良かったんだけどなとかブツブツ言いながら、姫は話をまとめにかかった。
「では、これからお前たちが何をするか、説明してやる」
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