第4話

にこにこ笑顔の阿部が2人を見おろす。


「阿部…お前なんでともには先輩ってつけるのに俺には…」

「いやーとも先輩がいなくなって寂しいなぁ。その分中村が頑張ってくれると思いますけど」

192cmという恵まれた高身長の阿部は水野と同じセッターで、学生ながら日本代表有力候補として名を連ねている。

水野の身長は181cm。代表として世界と戦うには体格で不利な自分だが、少しでも高く飛べるよう、速く動けるよう、鍛錬は怠っていない。

「中村は確か、俺と同じ身長でリベロやってんだよな」

水野はポンッと、ともの肩に手を置いてグイと自分の方に引き寄せる。

「バレーは高さだけで勝敗は決まらねぇってとこ、かわいい後輩たちに見せてやんなきゃな」

いつだって真っ直ぐに自分の夢に向かう姿。絶対負けないと挑む姿。

この姿をずっと近くで見られたら

この熱量をずっと側で感じられることができたら

それ以上は何も望まない…


「やりましょう、水野さん」

いつだってあの夏を思い出す。

空気、熱量、人々の歓声。

そして今もなお心を掴んで離さない、あなたの情熱を。

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