第2話

翌日

東山大学第1体育館


「おーい!皆んな、集まってくれ!」

キュッキュッと気持ち良い音のするワックスがけの行き届いた体育館。

名だたる実業団チームに選手を輩出し、日本代表になる者も数多くいるバレーボールの名門・東山大学。

桐生ともは2年の時から正リベロとしてチームを支えて来た。


「おう、とも。久しぶりだな」

ひと時だって忘れたことのない懐かしい声に、ともは振り向いた。

「なんだー?そんなに嬉しそうな顔して。この間まで練習してた体育館が、そんなに懐かしいのか?それとも…」

水野はポンッと、ともの肩に手を置いた。

「久しぶりに俺と同じチームになれて嬉しいのか?」

「もちろんっ!」

弾けんばかりの笑顔でともは頷く。

水野はハハッと笑った。

「お前は本当に変わんねぇな。けど」


「プレイが進化してなかったら、俺はすぐに置いてくぞ」

片方の口角をニヤリと吊り上げていても、この人はいつもこうだ。試合の前は特に。

学生相手の練習試合だろうが関係ない。

自分の目指す高みの為には、容赦とか手加減とか、そんなもの微塵も感じさせない闘争心に満ちた瞳。

「もちろんですよ、水野さん」


ああ、この人の

この輝きを追い求めて、自分は今ここにいる。

持っていたものをすべて置いてきて、帰る場所をなくしても、この人の隣にいられたら。

1番近いところで、同じ夢が見られたら…

「俺も、水野さんと一緒に世界の舞台に立ちます」


それを叶えるために、ここにいる。

夢なんかでは終わらせない。

あの夏の日、固く心にそう誓った。

その翌日、バッサリと髪を切ってからは、今日までずっと短いままだ。

「それぐらいの意気込みじゃないと、お前みたいなチビがうちではやっていけねぇよな」


ともの肩から手を離し、水野は背を向けた。

「追いかけて来いよ、とも。俺の背中を。俺は絶対逃げないからな」

「はいっ!」


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