第6話決行の日
「君はまたここに何度か来るだろう。詳しい日取りは我々の誰かが君に教えることにする。つまり、その食べ物の一番柔らかく、美味しく、しかも農夫たちがいない日に、だ」
「でも、どうやって競争などもちかければよいのですか? 」
「ハハハ、あのウサギは暇なのだよ、だから君が目の前を通れば、きっとからかってくる、それが生きがいなのだろう、死ななければ治らないよ。そこで、それなら競争をと言えば、嫌などと言うはずもない。
簡単な事さ」
「そうですか・・・でも負けたら・・・」
「悪いが、元々勝つ可能性の方が皆無に等しい戦いの中で、最悪負けたとしても、君の善戦を森のみんなに見せることができる。それだけで、君の評価はかなり上がるはずだ。それにこれを引き受けてくれたら、我々としてもできうる限りの努力はするつもりだ、これから先、できれば子々孫々」
「どういうことですか? 」
「つまり、君の子供を食べたりはしないと誓おう、まあ、わからない場合は勘弁願いたいが、君と一緒にいる場合は絶対に狙ったりはしない。だが、このことは秘密にしておいてほうが良いとは思うのだ。そうでなければ、君の子供は「自分たちは食べられない」と思い、身を守ることをしなくなってしまう。それは決して良いことではないだろうから」
考え深い一言は、オオカミ氏から発せられた。
「ああ、そこまで考えていらっしゃるとは」
「当たり前だ、実際に君が動くのだから、我々は考えられることをすべて考えなければいけない。どうかな、やっていただけるかな」
最初に私に許しを求めたフクロウ氏が、あの美しい目をこちらに向けて言ったので、
「はい・・・やってみます。最善尽くし、できれば勝ちたいと思います」
「そうか、それは良かった、では心置きなく花の蜜を」
と言ったのは誰だったのか、あっという間に皆いなくなってしまった。私が彼らとの余韻に浸り、蜜を吸うことを忘れていたが、ミツバチの羽音で目が覚めるように、私も彼らと同じことを始めた。
それから一か月と立たないある日の夕暮れ、私は道でばったりウサギと出会った。
「相変わらずのろまだな、何のために生きてるんだ? 」
確かにくだらぬほど頭ごなしの一言に
「そうかな、ではどうだい、あの山まで・・・」
決行は三日後だった。
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