第4話自分の評価


 私はその言葉を聞いて、もう一度周りを見渡した。誰一人私を獲物として見る目の者はいなかったが、特殊な、今まで自分が感じたことのないような心地よさのようなものを感じた。

それは私に対するある種の賞賛であり、信頼であり、希望のようなもの、軽蔑のひとかけらも無く、それが全員の確固たる結論として揺るがない、と決めているようだった。


「正直に話しておいた方が良いだろうと思うのだよ、カメ氏。私たちも最初は君のやっていることは愚かしいと思っていた。だが君が根気よく続け、考え、行動している様子を見るにつれ、並外れた人物だと我々は思うようになった、あの、ウサギとは正反対の。

 それでだ、あのウサギに羞恥心というのがあるのかどうかわからない、しかしながら足の遅いと言われる君と足の速さを競い、君が勝ったら・・・それこそ森中があのウサギの事を二度とはやし立てることもないだろうと思うのだよ。そう思いはしないかい? 」


 それを聞いた私は、驚くなどではなかった。


そんなことはありえない、万が一にも。途中でウサギが猟師やここにいる彼らに捕まりかけたとしても、それは中断であり、それまでウサギが走破した距離と自分のものを比べれば、子供でも勝敗予想は立てられる。

ここにいる愚かではない彼らは一体何を言っているのだろうか、ウサギにプライドを破壊され過ぎて、頭でもおかしくなったのではないのだろうか、と最初は思った。

すると


「カカカ、君がそんな顔をするのも当然だし、予想は付いたよ」


カラスが高らかに笑った。


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