第2話あくまで紳士的に



私が花畑の前で止まると、すぐさま声がした。


「失礼だとは思うのだが、カメ氏。私はあまりに明るい所が苦手なのだ。木の下に移動しても良いだろうか」


 フクロウの言葉は完全に私に対してのものであり、しかも許可まで求めているものだった。その落ちついた声と何よりもその目に、私は完全に魅入られてしまった。

黄色い丸い目、黄色い花の様ではなく、奥深い、底の底までこの色が続いていくようなしっかりとした色、そしてその黄色い中に、月のように浮かぶ真っ黒い瞳。この黒もはっきりとしていて、闇夜や恐怖を導くものではなく、むしろ明るさまで感じられるような、生き生きとした色だった。

この二重の完全な円を見た時、フクロウに狙われたものはその美しさゆえに動けなくなり、捕まってしまうのでは、とさえ思えた。


フクロウは首を傾げたり、ぐるりと回したりし始めたので私は慌てて


「どうぞ、私にわざわざ許しを請われることもないでしょうに」

と答えた。

この私の返答は、ほんの一飛びするフクロウの飛翔の間、他の生き物たちを、穏やかな微笑みで満たした。


「君は本当に礼儀正しい、カラス氏から聞いた通りに」

タカが言うと


「そう、彼こそが適任であると思うのです、いかかでしょうか皆さん」


と意外なほどにカラスは、ここの一同をまとめるようなことを言った。

 私はもちろん何のことだかわからなかったが、彼らが私を

「捕食する」気が全くないことはわかった。だが一体どうして、こんなことを、こんなことになっているのだろうかと、きっとそんな顔を私はしていたのだろう。


「詳しいことは、キツネ氏にお願した方がよいかな」


オオカミの少し低い声が響くと、キツネはまるで姿勢を正すように、少し背筋を伸ばして座った。


「では、皆さんを代表してというのはおこがましいことですが、私からお話させていただきましょう。カメ氏、実はあなたにお願いがあってここでみんな待っていたのです。あの・・・ウサギの事で」


「なるほど」


とすべては上手く繋がらないが、私は心の中で思った。



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