第29話:マジックロストポイント
2月3日13時頃。ぬいぐるみの(持ち主である)少女の痕跡を辿っていく。
他の少女たちの痕跡は全く残されていなかったがぬいぐるみの少女の痕跡だけは微かに残されていた。
やはり計画的に行われた誘拐ではなく、突発的に行ったがゆえにボロが出ているのだろう。
しかし痕跡は、あるところを境に消えてしまっていた。俺はその場所に近づき辺りを見回す。
閑静な住宅街の一角で痕跡は途絶えていた。
この近くに監禁されていたりするのだろうか?
探査の魔法を最大出力で放つ。するといつもと違った妙な反応がある。
正確にいうと反応が全く無いのだ。ある場所だけ区切られて隔離されたかのように。
その場所へ向かうと一軒の家が建っていた。
見るからに真新しい二階建ての家がそこにはあった。
もう一度探査の魔法を発動させる。するとその家の地下部分から妙な反応を感じ取る。
こちらの魔法を阻害されているような感覚だ。
恐らくこれは魔法による結界。犯人は魔法使いで周囲の人間や同じ魔法使いに気が付かれないように結界を張っているようだ。
ここまでは想定内だ。家の中に人の気配がないかを探ってみる。
どうやら家には誰もいないらしい。地下を除いては―
俺は鍵を魔法でこじ開けて家の中に侵入する。
一階の各部屋を調べるとその一室は異様な光景が広がっていた。
漫画の本やアニメ関連のグッズ、フィギュアなどが部屋中、所狭しと陳列されていた。マニアのコレクションルームといったところだろうか。
特にフィギュアに目が行ってしまう。女性のフィギュアがこれ見よがしに並べられている。
そして少女の様なキャラクターがその大半を占めている。
誘拐された対象が少女に限定されていた理由はこれらしい。
(人の趣味趣向をどうこう言うつもりはねぇ。そんなの人の勝手だ。・・・他人に迷惑かけなけりゃぁな)
部屋の奥の本棚にはずらりと漫画本が敷き詰められている。そこで違和感に気が付く。
それを確かめるべくその本棚を宙に浮かべてどかしてみる。
するとその下の床には切込みが入っていた。どうやらここから地下につながっているらしい。
そこに触れると一瞬静電気のようなものが体に流れる。
魔法の結界が貼られているせいだろうか。俺はそこに手を当て強く念じる。
すると俺の魔力に耐えきれなくなったのか結界の一部が砕け散る。
さらにその床が動き出して人一人が通れるくらいの大きさの地下に続く縦穴が姿を現す。
気配を探ってみると穴は数メートル下まで伸びている。
はしごなどの上り下りできる物はないが、その下からは人の反応を感じる。
どうやらこの下に誘拐された少女達が監禁されているようだ。
俺は魔法で光を灯しながらその穴に入り込む。地に足が付いたところで辺りを見回す。
すると複数のドアが設置してありその一つの部屋から5人の気配を感じる。
一体どんな扱いをされているのだろうか。
俺は意を決して扉のドアノブに手を伸ばし、力強く開け放った。
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