第13話:インスタント探偵に俺はなる!
考え事をしながら彼女の作ってくれた料理を頂く。
ご馳走さまでしたと一礼し、椅子に深く座りなおす。
両腕を組みながら思考を巡らせる。そして意を決する。
「親父さんがいない間に仕事の依頼はあったのか?」
「えっと、一人ペットを探してほしいと訪ねてきた方がいらっしゃいました。そういえば父はネットでも依頼を受けていたのでもしかすると何件か依頼がきているかも・・・」
彼女はあたふたしている。完全に失念していたようだ。構わず話を続ける。
「・・・そこで相談なんだが。親父さんが見つかるまでの間、俺に探偵の仕事をさせてくれないか?理由はいくつかある。一つは俺が今無職だから暇だってこと。二つ、普通に親父さんを探しているだけでは見つからない気がするんだ。だから親父さんが探していた事件を追いかけていけばいつかたどり着くかもしれない。俺が探偵として活動していくことで遠回りになるが親父さんを見つけ出すことができるかもしれないと考えたわけだ。三つ、俺が探偵という物に興味を持ったからだ。正直軽い気持ちではあるんだが、この仕事をしてみたいと思ってな。どこまでやれるかは分からないが親父さんを探すついでにやってみようか、ってね。他にも色々理由はあるけど、例えば親父さんがいない間収入がないと君が困るだろ、とかさ。まぁとりあえず、カネの話は置いておこう。探偵なんかしたことないからできるかどうかも分からねぇし。だからうまくいった時、君に判断してもらおうと考えてる。・・・どうだろうか?」
彼女は驚いた表情で話を最後まで聞いていた。そして少し間を空けてから話し始めた。
「・・・私は、父を探してくれるのを手伝ってもらえるのであればそれだけで十分です。方法は慧さんにお任せします。それに父が居ない以上事務所を経営していくことはできません。だから仕事を手伝ってもらえるのであれば私達にとって決して悪い話ではありませんし・・・。でも、探偵のお仕事、できそうですか?私は事務的な事は多少わかりますが実際の調査に関しては全く知りませんし・・・」
俺は苦笑いをしながら答える。
「いやーできるかどうかはやってみなきゃわかんねぇんだけどな。ただ自信が全くないってわけでもないんだ。さっきのペット探しの依頼ぐらいならたぶんできる、と思う」
探偵がどんな仕事をしているかはよく知らないが、魔法でなんとかなるだろうと考えていた。
むしろこの力を活用するという意味では適しているとすら感じていた。
それに社会の歯車の一つとなって毎日同じことをしていく生活はうんざりだった。
だから探偵という未知なる存在に、心惹かれるモノがあった。
自分の裁量で事を運んでいけるのであればそのほうが気が楽だ、と。
「・・・じゃあ、私からも改めてお願いします。探偵のお仕事の事、そして父の事。よろしくお願いします!」
「あんま期待すんなよ?やれるだけはやるけどさ。ってわけでさっそく始めるとしますかね。ペット探しの依頼主と連絡は取れるか?まずはそれからやってみよう」
「わかりました。連絡先は控えてあるのでまだ見つかっていなければだいじょぶだと思います」
そういうと彼女は自宅の受話器を取り電話をかけ始めた。そして慣れた口調で話し始めた。
少しするとこちらを向いて身振り手振りで合図をしてきた。
話の内容からしてもどうやらまだペットは見つかっていないらしい。
依頼はまだ生きているようだ。
「ペットが使っていた物があれば持ってきてくれるよう頼んでくれ」
小声でそう伝えると、コクコクと首を上下させ頷いている。
しばらくすると受話器を置いてふぅと息をついて話し始めた。
「まだ見つかってないので探してほしいそうです。1時間以内にこちらに来てくれるとのことでした」
「そうか、じゃあそれまでの間に他の依頼がきていないかパソコンを確認するかぁ」
「はい、私も気になるので一緒に見させてもらいますね」
一階の書斎に戻りパソコンを立ち上げメールを確認する。
すると数件、依頼と思われるメールが届いていた。
目についたのは浮気調査の依頼だ。これは正直簡単な依頼だ。
対象になる人間に接触し、浮気しているかどうか心を読み取る。
イエスであれば密会の時刻を読み取りその現場を証拠として押さえればいい。
ノーであれば数週間後に調査の結果、浮気の事実はなかったと伝えればいいだけだ。
(これ、割とボロい商売なんじゃね?)
依頼を確認してみた限り、魔法でなんとかなりそうな内容だった。
「何件か来てますけど、どうしましょうか?無理そうであれば依頼の募集を一時取りやめて、既にきている依頼は断ってしまうしかないかと・・・」
「んー・・・まぁなんかなる・・・と、思う」
そうこうしていると先程の依頼主が事務所にやってきた。
応接間に招き入れ、詳しい話を聞くことにした。
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