あかくさざめく

 血を飲むと痩せるのだと友人の友人の従兄弟から聞いた。

 なるほど、納得したものだ。

 どう贔屓目に見ても今まで吸血鬼が美しくないのを見たことがなかった。

 整った顔。死人のような白い肌と対照的な血の通った唇。

 均整のとれたカラダに、長い手足。

 蠱惑な瞳と静かな声。

 象牙のようにツルツルの犬歯。

 あれが人の肌を突き破って、溢れ出た血が収まるのだ。

 吸血鬼はあんなにも血を啜るのにお腹は膨れたりしないのだ。

 どんなにお腹いっぱいに飲んでも、胃は張り出してこない。

 食べても飲んでもそのままに、その体を維持していくのだ。

 赤い血を飲んでも肌は石のように白いまま。

 きっと彼らは血の赤だけを吐いているのだ。

 血の赤が薔薇の花びらに形を変えてほろほろと落ちていく。

 きっと私はああはなれないのだ。

 食べれば卑しくお腹が出て、飲めば醜く膨れるのだ。

 口を開けば雑言だけで、誰の耳にも届きはしないのだ。

 吸血鬼が


「いらっしゃい」


 とだけいったのだ。

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