僕の生まれた日

 アルバムが一冊。

 小さな僕の写真がたくさん貼られている。

 黒いその場所の闇の中から一人の女性が歩いてきた。

 身重の彼女のお腹ははち切れんばかりに膨れている。

 僕が声をかけようとした瞬間、彼女は一人で語りだした。

「あぁ、***(僕の名前だ)私の可愛い子。いつ生まれてくるのかしら」

 語る女性を不思議に思っていると白い光が瞬いた。

 場面が変わる。

 足元が崩れていくように白くなる。

 目の前には僕がいる。手には黒い布でくるまれた何かを持っていた。

「誕生日、おめでとう」

 僕が僕にその布を渡す。僕の声はさっきの女性とまるっきり同じだ。

 不思議で仕方が無かった。

 僕の手から布を受け取る。

 布の中身がもぞもぞ動いた。


 布の中には生まれたばかりの今にも死にそうな僕がいた。


「誕生日、おめでとう」


 見えない女性がそういった。

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