お葬式の話

『あのね、あんまりにも面白いことがあると、笑ってしまうの……私。』

 彼女は深刻そうな顔でそう告げたのだ。


 それを聞いた男は何を言ってるんだと笑った。

 別に馬鹿にしたわけではなく、ただ普通に面白くなって笑ったのだ。だが、女の方は未だ真剣な顔で男に詰め寄る。


『馬鹿にしないでね。私、笑ってしまうのよ』

 何を言ってるんだ。笑うなんて普通のことじゃないか。


 おことはそう返して、女の手を握ってやる。だが、女は未だ浮かれない顔のままだった。


 なにが気に入らないんだい?

『笑っては、いけないのよ?』

 どうして?

『お化けが出たら怖いじゃない』


 いたって真剣な答えだった。それこそ別に女が男を馬鹿にしているわけではない。ただ彼女は深刻に真剣に、それこそそれが命に関わることのように悩んでいるのだ。だが、笑うことがなぜいけないことなのだろうか。

 男はよく笑う人間だった。楽しいことで笑い、面白いことで笑い、悲しい時でこそ笑い、そして悔しいときにも笑う男だった。笑うことが原動力、すなわち何かのスイッチにでもなっていて、彼を動かすのだ、そこらは恐らくロボットなんかと相違なかった。


『私はきっとダメなのよ。』

なぜ?

『だって、面白いことがもしもあったのなら、あなたのお葬式でも笑ってしまうのよ。悲しいはずなのに笑ってしまうのよ。そしたらあなたはきっと、お化けになって私を叱るわ。笑うんじゃないって』

叱らないよ

『そうしてそう言い切れるの?』

そんなの簡単さ。君が笑えば僕も笑うからね。

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