第17話 ノウツの傷とクロナ・S・ローテル
慌ただしいい足音がどんどん地下室に近づき、
厳重に閉ざされ錆びついた扉が勢いよく開き
ドン!!と言う大きな音を立て開いた扉の
方へと部屋中に舞っていた煙が吸い込まれていく。
煙が徐々に引いていき、扉の前には咳込みながら
驚きと心配の表情を合わせたような顔をした少女が
部屋の周りをキョロキョロと見渡し、
リイエンとノウツの2人を見つけるや否や慌ただしく
足音を立てながら急ぎ足で近づく。
「リイエン副団長!?、ノウツ君!?2人共お怪我は?
さっきの爆発音は一体何だったのですか!?」
2人の前に現れた少女の名はクロナ・S・ローテル
明るい茶色の髪の横に羽の付いた髪飾りを付けおり、
見た目がとても可愛らしい少女で白銀騎士団の治療責任者の補佐である。
その手には彼女の武器である目を疑うような大きな
注射器を持ち2人を心配そうに見つめる。
少女と一瞬目が合い目を背けるノウツ、
一方リイエンはいつも通り冷静に立ち振る舞う
「私は大丈夫なので、申し訳ないのですがクロナさん、
ノウツ君を診てもらってもいいですか?」
「ちょ・・・リイエン副団長。
俺もこの通り大丈夫ですよ!もう治りましたって!」
リイエンに対し引かず大丈夫と言い張るもクロナは
ノウツの左腕の怪我を見逃さずノウツに詰め寄ると、
怪我をした左腕を見つめ心配しながら声をかける
「大変!!ちょっとノウツ君その左腕、どうしたの?
大怪我してるじゃない!!早く診せて」
少女の心配をごまかすように大丈夫の一点張りノウツに
対しリイエンが傷の具合を見せるように説得する。
「ノウツ君、その怪我が大丈夫な訳ないじゃないですか
意地を張ってないで、早くクロナさんに診せた方がいいですよ」
クロナはさらにノウツに詰め寄り、説得する
「リイエン副団長の言う通りだよ!ノウツ君。
早く怪我を見せて」
根負けしたノウツは舌打ちをしていやいや止血していた白衣の切れ端を
傷口から解きながら、小声でぶつぶつと文句を口に出す
「・・・え!?ちょっと、この腕・・・」
ノウツの左腕を一目診たクロナは、驚きの表情でノウツの目を見つめる
「なんだよ、見た目ほどの怪我じゃないだろ?
もう痛みもないし、血も止まったから大丈夫だってしばらく寝てれば治る」
怪我の具合を改めて見たリイエンも思わず口を開く
「・・・クロナさん、ノウツの左腕元に戻りますか?」
「最善は尽くします。今すぐ治療に取り掛かりたいのですが、
今先生が不在で・・・」
「リイエン副団長まで、何深刻そうにしてるんですか?
言った通り痛みもないですし、血も止まっているので問題ないですって!」
クロナは少し声を大きくして怪我の具合を説明する。
「大丈夫な訳ないでしょ!!この怪我ノウツ君、
痛みがない?いい、落ち着いてよく自分の腕を見て!」
自分の怪我の状態を改めて見たノウツは見る見るうちに顔が青ざめ黙り切った
(ほ・・骨が、・・・肉が・・)
事態の深刻さ顔に出てクロナの目を見つめ助けを求める表情を見せ俯いた
「ようやく分かった?今の自分がどんな大怪我をしているか、
痛みがない?神経が切れている上に痛みがキャパを超えて
感覚がなくなっているだけ、放って置いたら大変なことになるよ!」
腕の怪我はデット・リングの血器により3分の1程削り切られ、
そこから約5センチ程腕から手の平の方にかけて抉り取られていた。
「・・・頼む、この怪我治してくれ、クロナ!!」
震えた声で俯いたノウツが頼み込むクロナは返事をすぐにすることなく、
振り返りリイエンの方に向き助けを求めた目を向けた
「クロナさん。今ノウツ君を治せるのはあなただけです。
きっとあなたならできるはずです。
・・・お願いします、任せてもいいですか?」
(先生が不在の今ノウツ君を治せるのは私だけ!?
迷っている時間はない!私がやらなきゃ)
「分かりました。やります!立ってノウツ君必ず治してあげるから」
ゆっくりと立ち上がりクロナに小声で礼を言う
「・・・すまないありがとう」
クロナはにっこりと笑顔を返しノウツに肩を貸し
薄暗い地下室にリイエンを残し出ていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます