第15話 対決 ノウツとデットリング Ⅲ
地下室で死闘を繰り広げるデットリングとノウツの戦いを見守りながら、
ピエロの血器が繰り出す攻撃をリイエンは余裕の表情を
見せながら受け流しているとノウツの左手に持ったダガーを見てリイエンは
2人の死闘に決着がつくことを察した。
(おや、ノウツ君はあれをここで使いますか、まぁいいでしょう。
しかし手負いのデットリング相手に
聖剣の欠片を使うとは彼もまだ力不足ですね)
「ひゃ~ははは・・・リイエン副団長様、
私を相手にしているのによそ見はいけないなぁ」
愉快に笑いながらも攻撃の手を休めることなく鋭く尖った爪を
何度も勢いよく振り回しリイエンに攻撃をするピエロだが、
すべて避けられ勢いあまって大振りになった攻撃の隙を突かれ懐に入り込まれた。
「よそ見なんてしてませんよ」
懐に入り込み踏み込んだリイエン、
その状態から繰り出される攻撃はすべて的確に決まっていく。
踏み込みから胸部に強烈な肘打ちが入り、
のけ反るピエロの肩を掴むと自分の方へ引き寄せ
顔面目掛け強力な突きを叩き込む、
その後すかさず足をかけ軽々と投げ倒させた。
その場に倒れ込むやせ細ったピエロの体は
攻撃箇所に亀裂が入りボロボロと結晶化した血器が床に落ち消えていく。
(・・・ひゃひゃひゃ、さすが白銀騎士団の副団長
いや、杭師リイエン・ランスと言ったところでしょうか
さすがにもうこの血器も長くは持たない)
「まぁ、あなたもそこで大人しく見ていてください。
と言うよりこの結末が分かっていてわざわざサーカスの団長である
あなたが我が聖騎士団本部に来られたのでしょう?」
「ひひゃははぁ・・・まぁね、デットリング・・・
Mr.トゥウェイルのシナリオはここで、終焉さ」
仰向けに倒れ込むピエロの血器を哀れそうに見ながら
「サーカスの団長ともあろうあなたが随分あっさり見捨てるのですね」
と言われるもピエロはその場で愉快に笑い動く気配がなくなった。
(・・・ひひゃひゃこの男の強さはやはり異常だ、
私の初撃を受けた時本来なら受け止めた腕ごと落としたはずなのに、
あの手ごたえ・・・それにこの男はまだ武器を使っていない・・・)
その場に立つリイエンと倒れ込むピエロの血器は、
ノウツとデットリングの戦いの終止符を見守る。
デットリング目掛け駆け抜けたノウツそれを待ち受けるように
2つの赤い刃が高速で回転しながら地面を削り抉り続ける。
「クソ吸血鬼!!ここでお前の命はお終いだ!」
叫びながら右手に持った大型の鉈を引きずり火花を散らしながら疾走する
「クッハハハ!!来いよ!迎え撃ってやるぜぇぇ!!」
高笑いしながら振り払った右手と同時に赤い刃が1つノウツ目掛け迫る
(やっぱ、はぇぇこのまま突っ込んだら確実に真二つだ
だがこの速さと威力を利用する)
疾走し右手に持った大型の鉈を引きずりながら、
正面から向かってくるデットリングの血器に向い
加速を利用した全力の薙ぎ払いを側面に繰り出すと
向かってくる赤い刃の方向を大きく変えた。
(クソッ、すげぇ威力だがあと1つ)
デットリングの血器を薙ぎ払った大型の鉈の刃は削られ
切れ味を完全に失ってしまっていたが、
幸い鉈の形はまだ残っていた。
(あの鉈はもう使い物にはならんな、警戒するのはあの汚らわしい短剣のみ。
こっちにはまだ血器が残ってる・・・この勝負俺の勝ちで終わりだ!!)
赤い刃を薙ぎ払った後も止まることなくデットリングに向かって走るノウツに
残っていた赤い刃が立ちはだかる
(やっぱりか、こいつを見た途端あのクソ吸血鬼は異常に警戒したからな、
血器を攻撃と防御で使い分けてくると思ったぜ)
ノウツの思い通りデットリングは完全にノウツの左手に持った
銀のダガーを警戒していた。
それを逆手に取るように、右手に持った鉈をデットリングに向け振り投げた。
「邪魔だぁ!!鈍らが!」
全力で振り投げた大型の鉈がデットリングに届く前に
立ちはだかった赤い刃が弾き飛ばす。
血器が鉈を弾いた際に生じた一瞬の隙、
遮った視界を利用しノウツが間合いに入り込む
(間合いに入り込んだ、今だ!)
ノウツがデットリングの首元目掛け左手に持った銀のダガーで
止めを刺そうと切りかかった。
「クッ!まだぁぁぁ!!!俺の血器で削れて消えろ!」
鉈を飛ばした赤い刃が逆に回転を始めダガーが首元に届く前にノウツに向う。
「甘いんだよ。クソ吸血鬼、自分の血器を過信し過ぎだ」
(俺がこんな小僧に
・・・こんなシナリオ決して俺は認めない、認めないぞ!!)
デットリングに止めを刺すために切りかかった銀のダガーの刃は
見事デットリングの首元に届きデットリングの首を跳ね飛ばした。
(何?景色が逆さま?この俺が・・・しかし何故だ!!
何故俺の血器が間に合わなかった?)
身体を残したまま宙を舞うデットリングの頭部。
はっきり意識を保ったまま景色が反転する中でデットリングは
何故自分の血器が間に合わずノウツの一撃の方が早かったのか、
その理由を目の当たりにする事となった。
(・・・!!そういう事か、だがいつの間に?
まさか!!鉈を弾いたあの時か)
金属を削る音を立てながら、
デットリングの血器は確かにノウツを切りかかろうとしていた。
だが血器の目の前には、返しの付いた中型の槍の様な物が
地面に突き刺さっておりデットリングの血器の進行を妨げていた。
敗因の理由を確認すると同時に宙に舞っていたデットリングの頭部は
ゴンと言う大きな落下音を部屋に響かせ転がった
「・・・クソ吸血鬼が手こずらせやがって」
残された体は首から夥しい血を吹きながらゆっくりと力尽き、
その場に跪くと同時に赤い刃の回転が止まり砕けてゆっくりと消えていった。
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