第8話 化け物の正体と吸血鬼について

少しニヤ着いた表情で店主を指差し

大農園の化け物の正体について話そうとする。

「・・・大農園の化け物の正体ですか?」

店主はつばを飲み込み驚いた表情でレインを見つめる。

「あぁ、あんたもさっきの話じゃぁ大方、

誰が化け物か予想はついてんだろ?」

「えっ?・・・まさか!

半年前にこの街に来たあの男ですか?」

「あぁその通りだ、じゃあその男が何者だったかについてだ

・・・まぁあんたが信じる信じないは別にして

その男の正体は吸血鬼だ」

疑問な様子を隠せないまま店主は答えた

「化け物の正体が吸血鬼!?まさか」

「・・・まぁいきなり言われても普通信じないわな、

でもな残念ながらこの世界に吸血鬼はいる。

奴らを狩るのが俺ら聖騎士団の仕事って訳だ」

頭の整理がつかない店主は少し黙った後静かに口を開いた。

「お客さんが、聖騎士でその中でも化け物退治を

専門としている白銀騎士のハンターだと言うことは

知っていましたが、まさかその化け物の正体が吸血鬼だなんて・・・」

唖然とした顔でレインは驚いた後笑いながら言った。

「こりゃ笑える!!

俺が白銀騎士のハンターだってあんた知ってたのか!」

店主は頷き、レインのコートの胸についている銀飾りを見ながら答えた

「えぇ、最初にその胸の銀飾りを見た時に、

でも化け物の正体が吸血鬼なんで知りませんでした。

それに化け物と呼ばれている吸血鬼の見た目が

私達と変わらない姿なんて」

レインは笑いをこらえ切り、真剣な顔になって店主に説明する。

「まぁな元は俺らと同じ人間だからな。」

店主は衝撃の事実に驚き、いきなり立ち上がり

疑問を抱えた顔のままレインに詰め寄った。

「元は私たちと同じ人間!?どういう事なんですか?

なんで吸血鬼なんかに?」

いきなり詰め寄ってきた店主に対し落ち着くよう

言いながら説明する。

「おぉう近い近い、いや今説明するから落ち着けって!

じゃぁ吸血鬼についてザックリと説明をするからよく聞いとけよ。

あぁー、まずこの世界にいる化け物や異形と言われる者は

すべて吸血鬼と断言できる。

そして吸血鬼ってのはさっき言った通り元人間だ」

店主は落ち着かないままだが椅子に座りレインの説明を黙って聞いた。

「じゃぁなんで人間が吸血鬼になってしまったか、

よく吸血鬼に噛まれた人間は吸血鬼になるって

言い伝えがあるがあれはちょっと違う」

店主はレインの吸血鬼に噛まれた首の傷を見ながら

恐る恐る質問する

「お客さんのその傷、噛まれた後じゃないんですか?」

レインは首の傷を手で押さえながら答えた

「あぁ心配すんなって、この傷は確かに吸血鬼に噛まれた跡だけど

俺は吸血鬼じゃないし別に噛まれただけじゃぁ吸血鬼にはならない」

「・・・では、どうなったら吸血鬼になるのですか?」

レインは首の傷を指さし

「あいつ等は人間の血を吸血し血の契約を

行うことによって血族・・・吸血鬼を増やす。

だからただ噛まれただけじゃぁ吸血鬼にはならない。

血の契約が行われる前ならこの通りただ噛まれただけってわけだ。

ちなみにめっちゃ痛いけど」

レインの回答に店主はさらに疑問な顔をする

「・・・でも、その血の契約をされて吸血鬼になった

場合どうなるのでしょうか?」

レインは図りやすいように指で目と歯を順に差し答える

「どうなるか、まず吸血鬼の見分け方だが、

この街に来たって言う男を見たなら知ってるだろうが

目が赤く光っていたはずだ後は鋭い牙がある事と

血の契約の刻印が体の何処かにあるってとこか」

静かに聞いていた店主は思い出すように頭を抱え

「契約の刻印というのは分かりませんでしたが

確かに赤く光る目、牙もあったような気が・・・」

思い出している店主に説明しにくそうにレインが答える

「さらに難しい話なんだが、刻印ってのは吸血鬼である証であり、

そいつが何世代目の吸血鬼だか分かる印なんだよ

・・・世代ってのはな、始まりの吸血鬼である始祖、

そいつと血の契約を交わした奴が第1世代、

そして第1世代の血族・・・まぁ第1世代と血の契約をした奴が

第2世代になるって訳だ、ちなみに吸血鬼は、

第1から第5世代までいて今回の大農園の一件は

第4世代の吸血鬼が事の発端だったな」

「・・・刻印を見るだけでわかるのですか?」

あくびをしながらレインがどうでもよさそうに答える

「まぁ俺は世代なんてもんに興味ないんだけどな

一応仕事上報告の義務が・・・・・

あっ!!やべぇ、すまん店主少し電話貸してくれないか」

「え?・・・えぇ、いいですけど急にどうしたのですか?」

椅子から立ち上がり、さっきまでとは違い

慌てた様子のレインが答える

「報告の義務ってやつだよ、ウチの副団長様はおっかねぇからな!

あぁ~、やだなぁ」

慌てながらもレインは話を続ける

「そうだ、ちなみに聞いた話吸血鬼ってのは

人間の血を自身に取り入れることによって自身の魂の格ってのが

上がるらしくてな、大農園の一件はおそらく血族を増やすと言うより

そっちの線が高いと踏んでるんだけどな」

レインは拳を握り少し声を大きくし言葉を続ける

「それに奴らは自身の吸血衝動を抑えられないから人を

襲い、殺し、血を吸い続ける。

中には快楽目的で嬉々として人を殺す奴もいる。

だから俺等騎士が奴らを狩る、奴らを全て狩るまで聖騎士は戦い続ける。

命を懸けて大切なものを守るためにな」

黙って聞いていた店主は立ち上がったレインの目を見つめ静かに問いかけた

「お客さんは自分の命と誰かの命を天秤にかける事ができますか?」

レインは眉間に手を当て少しに考えた後に笑顔で答えた

「俺は自分の命も誰かの命も天秤にかける気はないね、

あぁー、答えになってなかったか?

まぁ言っちまうと、俺は誰かのために戦ってるし、

俺自身のために戦ってるってことだ」

店主はレインの言葉を黙って聞いた後目をつむり

小さく頷いた後何も言わずに、電話の方へ案内しようと立ち上がった

「なるほど、お客さんらしいですね。

急いでるみたいですし、電話の方へ案内します。」

「あぁ頼む!」

2階に上がり電話の前に案内され

「では、私は店に戻りますので」

と言い残し電話の前に案内した店主が店に戻ろうと

後ろを向いて歩いていく。

「あんがとな!ちょっと長電話になるかもしんないけど借りるわ」

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