第6話  大切な家族と最高の料理

店主が厨房に入り料理を始めると店内は食材を切る音、

炒める音、揚げる音、様々な音が店内に響きそれと共に

美味そうな料理の香りが店の中を漂う。

「うん!美味そうな匂いだ。待ち遠しいぜ」

レインはテーブルに座り、置いてあるフォークとナイフを両手に持って

店主の作る料理をまだかとばかりに待つ。

調理を始めてからしばらくするとノノと奥さんが

レインの座ってる隣のテーブルに座った。

「お兄ちゃんさっきは助けてくれてありがとうね!」

ノノが笑顔でお礼を言うと隣に座っていた奥さんも

笑顔を見せながらお礼を言った。

「本当にありがとうございました。

あのまま助けてもらえなっかったら斬られて殺されていたかもしれません。

それに、私はまだしもこの子には元気でいてほしいですから。」

レインは持っていたフォークとナイフをテーブルに置き

コップに入っている水を一口飲んで静かに答える

「いやぁ、礼なんかいいって、これでも一応騎士なんでね。

それに、助けが必要な奴を助けるのは当たり前のことだからな。

でもなぁあんたさっきの言い方じゃあまるでこの子のためなら

死んでもいいって言い方に聞こえたぜ?」

ノノの頭をなでながら奥さんが言い返す

「・・・母親ですからね、自分の子のためなら死んだってかまいませんよ。

この子が幸せに生きていけるなら私は・・・」

最後まで言い終わる前にレインが割込むように答えた

「違うな、あんたは間違ってる」

「親が子供のために命をかけることの何が間違っているのですか?」

「子供のために命をかけるねぇ、そこが間違ってるって言てんだよ。

あんたがこの子のために死んじまったらこの子は悲しむだろうし、

この子にとっての母親はあんたしかいないんだよ。

本当にこの子のためを思っているなら、

この子のために死ぬんじゃなくてこの子のために

一緒に生きる方がよっぽどこの子のためになると思わないか?」

奥さんは娘をじっと見つめた後レインの方を向き笑らいながら返す

「本当ですね。あなたの言う通りこの子にとっての

母親は私しかいませんものね。

守ろうばかりしてて大切なことを忘れていたみたいです。

これからもこの子が本当に幸せになれるまで、

守るだけではなく一緒に生きていきたいと思います。」

レインはコップの水を一気に飲み干して頬杖をつきながら奥さんと娘を見つめる。

「あぁ、そうさ誰かのために戦い命を懸けるのは

俺達のような騎士だけでいい」

それを聞いて奥さんが返す

「そんなこと言わないで下さい、

あなたにも大切な家族や大事な人がいるでしょう?

私に言ったようにその家族や大事な人のためにも

あなたは生きなければいけないんじゃないですか?」

レインは目線を下に落とす

「・・・・・大切な家族と大事な人か、昔は確かにいたんだけどな」

聞こえないような小さな声で発した言葉は、

奥さんの耳に聞こえているようだった。

「・・・・・ごめんなさい」

小さな声で奥さんが謝る。

「別に気にしないでくれって!辛気臭いのは無しだ、

あぁーそれにしても腹減ったなぁ。まだ出来ねぇのか?」

「多分もう少しで出来ますよ、あ!そうでしたこれ。」

奥さんは少し気まずそうにしていたが、持って来ていたコートを見て

思い出したように綺麗に畳んだコートをレインに手渡した。

「部屋の前に置いておこうと思ってたのですけどちょうど乾いていたので

渡そうと持ってきてたんでした」

「わざわざすまないな、ありがとう。」

「ノノが綺麗に洗ったんだよ!!」

娘が自信満々に奥さんを押しのけてレインの前に出る

レインは立ち上がりコートを着る

「ホントだメッチャ綺麗になってるな、しかもわざわざ

穴が空いたとこ縫ってくれてるじゃねぇか!ありがとな」

娘の頭をなでながらお礼をした後奥さんの方を

チラッと見て笑顔を見せた


「お待たせしましたお客さん!!」

店主は両手にサラダとスープを持ってきた後すぐに

魚料理と肉料理最後にデザートを持ってきて順に並べた

「うおぉ!!待ってました!!メッチャ美味そうだ」

「はははっ喜んでもらって私もうれしいですよ。

本来なら一品ずつ出すのですが、お客さんはとても空腹のようなので

私もつい気合が入ってしまって同時に出させていただいたのですが

大丈夫でしたか?」

「あぁもちろん!問題ないぜ、むしろこっちの方が

食いがいがあるぜ!!そんじゃぁいただきます!!」

レインは出てきた料理を次々とたいらげていくが、

テーブルマナーが悪い訳ではなくむしろがっついている

割にはきちんとしている。

半分程食べたところで、水を飲み干し感想を述べた。

「いやぁにしても本当美味いな!サラダは彩がよく新鮮で歯ごたえがあって、

スープは具材一つ一つに味が染みわたっていて、

魚は臭みがなくて芳ばしい旨味が口の中で広がって、

肉はジューシーで程よい柔らかさそしてサッパリしたタレがベストマッチしてる、

そしてデザートは甘すぎず口に入った瞬間サッと溶けて染み渡る美味さ。

この食材本当に大農園で取れたもんか?

全てにおいて最高だ!店主あんた腕がいい。」

「お口に合って良かった、お客さんの言う通り

この食材は大農園で取れたもので新鮮な食材なんですよ。

これも大農園の化け物を倒してくれたおかげですよ」

店主はニッコリと笑顔を見せて奥さんと娘の座っている席に腰をかけた。

レインは残った料理をゆっくり味わいながら店主に質問した。

「まだ食ってる途中だけど、

なんで聖騎士に襲われていたか聞いていいよな店主」

「・・・えぇそうでしたね、料理をごちそうした後に話す約束でしたからね」

店主が襲われた理由を話そうとすると奥さんは察したように

娘と一緒に部屋に戻ろうとした

「じゃあノノ、お客さんとパパは大事なお話があるみたいだから

ママと一緒に部屋に戻りましょう」

「うん、わかった。お兄ちゃん!

お話終わったら次は街を案内するね!!」

笑顔で手を振りながら奥さんに手を引かれる娘にレインは軽く手を振り返した。

「あぁ、お願いするよ」

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