第5話 レインとフーガ
向けられた長槍とフーガを睨んだまま店主に
店の中に避難するように言った後持っていた銀の杭を構える
「貴様そんな物で俺に勝てるわけないだろ?
ちゃんとした武器を持て、ふざけてるのか?」
静かに怒るフーガにウィルが叫び注意を促す。
「ま・・・待ってください副団長そいつ・・・
その傷、吸血鬼ですよ!!!」
銀の杭を構えたレインの首元には昨晩吸血鬼から受けた傷が見えていた。
「吸血鬼か、ならばここで殺すのみだ」
長槍が瞬時にレインを突く
「っぶねぇ!」
ギリギリでかわすレインにフーガの追撃が次々に繰り出される。
(ったく、銀の杭だけじゃ、
あいつの長槍を捌くのに精一杯だぜこりゃ)
「よく避けるもんだな吸血鬼、だがこれはどうだ?」
長槍は突きから薙ぎ払いを連続で繰りだされた
(クッソ!避けきれねぇ、こいつ殺す気で来てやがる)
「ガァ!!」
連続で繰り出されるなぎ払いを紙一重のところで避けていたが、
不意の一撃がレインの脇腹に入る
「これで決まりだ」
よろけたレインの心臓に向いすかさず長槍の突きが迫る
(ダメか、お仕置きなんて言ってらんねぇな
一か八かこっちも本気で行くしかねぇ!!)
レインは構えていた銀の杭をフーガの
喉元目掛け投擲する
「・・・・・こんな手を使ってくるとはな、
なるほどなかなかやるな吸血鬼。・・・面白い」
「いやぁ、さっきのはちっとばかし焦ったけどな、
爪が甘いんだよド派手野郎!」
その光景を見ていたウィルがまたもや叫ぶ
「フーガ副団長殿!!」
それは一瞬の駆け引きだった。
レインの投擲した銀の杭はフーガの喉元に到達する直前で
受け止められてしまっていた。
一方フーガの長槍はレインの投擲した銀の杭を
受け止めるため片手を離してしまったことにより、
力及ばずレインの胸元ギリギリのところで抑えられていた。
「爪めが甘いだと?舐めるな!!」
フーガは受け止めた銀の杭をすぐさま持ち替えレインに刺しかかる
刺しかかる銀の杭が迫る中、レインの口元は小さく笑っていた。
「なぁ知ってっか?槍って武器の欠点はなぁ、
槍が伸びきった状態から追撃するには一度槍を引かないと
次の突きが出せないんだよ!!」
(なに!!)
レインは槍を抑えていた両手を一気に自分の真後ろに
引き寄た、体勢を崩したフーガの懐に入り、
上段から迫る銀の杭を両手で受け止め奪い取った。
勢いあまり前方に膝をついた状態で倒れたフーガは
背後をすぐさま確認した。
「おっと、武器を置いたまま動くなよ」
フーガの目の前には先ほど奪い返された杭の鋭い先が向けられていた。
(くっ・・・どう対処する?こいつの気が
一瞬でも他に向いた瞬間、追撃を仕掛けてやる)
「ロメット!、ウィル!、ポルネア!、エオス!こいつを殺せ!!」
フーガは大声でその場の騎士の名前を呼び、命令を下す。
命令に答えるように皆一斉に剣を構える。
それに対しレインは冷静に状況を対処する
「動くなって言ったのが聞こえなかったのか?
全員に言ってんだよ、お前等のボスが串刺しになっちまうぜ?
・・・あぁ杭だから杭刺しか。」
冗談を交えながら脅しをかけているが、
他のことに気を取られる隙は全くなくそれどころか
その場にいる全員の動きにまで注意を払っている。
(・・・こいつなんて奴だ、今この状況で誰か一人でも
こいつを殺そうと動けば殺られるのは間違いなく俺だ)
打つ手のなくなったフーガは反撃の方法を模索するも
状況を打破する手立てが見つからない。
「くっ・・・俺の負けだ」
小さな声で自身の負けを認めるフーガを信じられないというような表情で
他の騎士が見つめる中ニヤリとレインが笑みを浮かべる。
「殺せ、吸血鬼、俺の負けだ・・・
この命、貴様にくれてやるだがこいつらは見逃せ!」
「フーガ副団長殿!?」
他の騎士が一斉に声を上げる。
「副団長殿!!どうか私の命で償い下さい
元はと言えばこの騒動の原因はこの私にあります。
貴方が命を懸けることではございません。
それに貴方はグレイメネス騎士団の時期団長、
こんなところで命を落とすわけにはいかないのです!」
身を乗り出しながらロメットがフーガを説得する
ロメットに対し静かに答える。
「分をわきまえろロメット・・・
この俺が負け貴様の命で償う?
貴様、俺に情けをかけるつもりか?
俺の名を言ってみろ!!」
フーガはロメットに自分の名を言うように命じる。
「貴方の名はフーガ・グレイメネス、我が身を託した
グレイメネス騎士団の副団長でございます」
「そうだ俺の名はフーガ・グレイメネス、
我が父にしてグレイメネス騎士団の
長リーク・グレイメネスの息子この俺が、
部下の命を差し出しのうのうと生きながらえることなど
他の者が許してもこの俺が許さない。」
二人のやり取りを黙って聞いていたレインの笑みは
次第に引きつった表情に変わっていた
(・・・まずぃなこの状況、何がまずいかってまず気まずい
・・・面倒くせぇ奴らだなこいつら)
レインは構えていた銀の杭の杭先を引きフーガから離す
「いやぁ・・・盛り上がってるとこ悪いんだけどさ、
別に俺は殺そうとなんかしてないんだけど
・・・最初にお仕置きって言ったよな」
(殺そうとなんかしてないだと?杭の投擲は明らかに
この俺を殺す気で放ったものだ。この俺に情けをかけるというのか)
「ふざけるな!!俺は負けた。
敗者は命を持って償うものだ情けなどいらん!!」
「おいおい、あんた等のボスは頑固だな、
まったくめんどくせぇ。
今回の一件は取り合えずそこの頑固でド派手な副団長に免じて
見逃してやるからどっかに消えな、
俺は腹減ったから店に戻るぜ、じゃぁな!」
完全に戦う気がなくなったレインは騎士達から背を向け
手を軽く振りながら店の入り口の方へと歩き出す
「まて、吸血鬼俺はまだ・・・」
フーガはレインを睨みながら立ち上がり呼び留めようとする中、
騎士たちがフーガに駆け寄り声をかる。
「副団長、今はこんな者に構っている場合では
ございません大農園へ急ぎましょう。」
深紅の長い髪をした女騎士がフーガに大農場へ急ぐように促す
「ポルネア!副団長殿に指図する気か!」
ロメットが女騎士を怒鳴るとフーガが止めに入り、
ゆっくり歩くレインに言い放った
「やめろロメット・・・おい貴様この屈辱は必ず返す。
次に会う時は正式に命を懸けた決闘を申し込むいいな」
「はいはい、分かった分かった」
店の入り口付近まで近づいていたレインは適当に返事をしながら
もう一度手を軽く振り店のドアを開け入っていった
(命を懸けた決闘か笑えねぇ、
そんなことは命の無駄使いでしかないことに気づかないのかねぇ・・・
まぁこの仕事柄命懸けってのは変わらんけどな)
店に入ると店主一家が窓から様子を見ていた様で
店主がいきなり大きな声を出し無事を確認した
「お客さん!!大丈夫だったんですか?怪我はしてないですか?」
「あぁ、全然問題ない、それより店主腹減ったんだけど
飯作ってもらっていいか?」
「えぇ、大農園から食料を取ってきたので
すぐに調理に取り掛かります」
レインの無事を確認し料理を作ろうと厨房に
入ろうとする店主をレインは呼び止めた
「なぁ店主、俺も腹減ったし料理作ってからでいいから教えてくれないか?
なんで聖騎士なんかに襲われたか」
店主は立ち止まり振り向かえり笑顔で返事をした
「・・・えぇ、この街を救ってくれただけではなく
家族の命までも救っていただいたのです。
とびきりの料理をご馳走した後話しましょう。
少しお待ちください」
返事をした店主は厨房に入り、料理を作り始めた。
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