第4話 夢見る騎士とグレイメネス聖騎士団

深い眠りについたレインは夢を見た。

そこはとても明るく眩しい朝日の下、

幼いころの自分と戦いに向かう自分の兄の夢を

「レインいいか?お前は剣を振るわなくていいんだ。

お前がこんな戦いに巻き込まれる必要なんかない

俺がすべての吸血鬼を葬ってやる。

そしてこの世界を平和にする必ずだ!

父さんもお前も、聖騎士団のみんなも、

もうこんな醜い争いは今日で終わりにしてやる。

じゃあ行ってくる、しばらく待っててくれ」

眩しく手をかざし聞いているレインに向かい

朝日を背に笑顔のまま別れを告げた後、

朝日の射す方へとゆっくりと歩いていく兄の後姿を

レインは追いかける

「待って兄さん!!」

朝日に吸い込まれるように消えていく兄の後ろ姿に

手を伸ばし必死で追いかけるもその手は届かず

兄の姿は完全に消えてしまった。

疲れ果てその場に座りこみ兄を呼ぶ声が夢の中で響く。

兄の姿を消していった眩しい朝日を見つめながら

幼いレインは誓った

「兄さん俺、強くなって兄さんに必ず追いついて見せるから」

そこで夢は終わり意識が戻っていく。

ゆっくり目を開け夢から覚めたレインは天井を見上げ片手を伸ばした

「・・・いやなこと思い出させるぜ、

まったく・・・笑えねぇ、」

小声で呟きながらもう片方の手に持っている銀の杭を握った

(あの時誓ったことは一瞬たりとも忘れたことはねぇ、

もっと強くなって絶対に追いついてやる)

ベットから起き上がり置いてあった時計を見る

(2時間たったのか、起きたら街の案内してもらうって

約束したしなぁ降りて店の方に行ってみるか。あれ?

そういやぁ店主も2時間後にどうとか言ってた気がするな、

まぁいいやとりあえず店の方に行くか!)

時刻は正午前、店の方に行こうと立ち上がると

店の前が騒がしいのに気が付いた。

「なんだぁ?うるせぇなぁ」

閉じていたカーテンを開け窓から外を見る

そこには4人の鎧姿の騎士がいた。

体格のいい中年の男騎士、深紅の長い髪をした若い女騎士、

メガネをかけた若い青年の騎士、薄汚れたフルプレートの

鎧を着た騎士、鎧には大農園にいた騎士と同じ刻印が

施されており店の前で店主一家に剣を向けていた。

そのうちの体格がいい中年の騎士が剣を構え

切りかかろうとした瞬間、

すかさず窓を開け2階からレインが飛び降りた。

着地と同時に切りかかる騎士の前に走り、

切りかかってきた剣を持っていた銀の杭で受け流した。

周りには鉄と鉄を叩くキィィンと言う音が鳴り響く

「おいおいおっさん、一般人にいきなり切りかかるなんて

どこのドアホ騎士だぁ!?」

睨みながら言ったレインに体格のいい騎士の後にいた

3人の騎士も剣を構えた。

先ほど切りかかってきた騎士が大声で怒鳴りを上げる

「ドアホ騎士?貴様、さっきの言葉は我々神聖なる

グレイメネス聖騎士団を愚弄した発言と受け取っていいんだな!!」

「はっ!愚弄した発言だぁ?おいおっさん!

耳の穴かっぽじってよく聞けよグレイなんたら聖騎士団

だか何だか知らねぇけど、

お前らは武器も持たない一般人に危害加えた時点で

聖騎士の名を語る資格なんてねぇんだよ!!」

「おのぉれ!!貴様ぁぁ!!」

怒りに満ちた声で2撃目を切りかかろうと大きく剣を振り上げた瞬間、

騎士達の後方から呼び止める声がした。

「やめろ、ロメット!」

剣を振り上げていた体格のいい騎士の動きが止まり、ゆっくりと剣を下ろす。

残りの3人もそれと同時に剣を鞘に収め後方を向いた後地に伏した

「何の騒ぎだこれは?何があった答えろ」

後方にいた声の主が小走りで近づきながら問いかける。

声の主は、レインとより少し歳が上くらいの美男子で

他の騎士の鎧とは違い、宝石等の装飾が施された

美しい鎧を着こなしており、

片手には彫刻で装飾されたとても綺麗な長槍を持っていた。

「・・・フーガ副団長殿」

先ほどまで怒鳴り声をあげていた騎士の態度が変わり

顔に焦りが見え、すぐさま地にひれ伏す。

「もう一度問うぞロメット何があった?」

以前騎士はうつむいたまま黙っている。

黙ったまま返事がないため後ろにいたメガネをかけた

騎士に質問の矛先が向く。

「黙ったままか?・・・おいウィル何があった答えろ」

「それは・・・・」

質問に対しメガネをかけた騎士がロメットの方を

ちらりと見た後質問に答えようと話し出した瞬間、

ロメットは顔を上げ謝罪の言葉を口にした。

「申し訳ありません。フーガ副団長殿、私が不甲斐ないばかりに・・・」

謝罪の言葉を口にしたロメットだが、それに対してフーガは冷たく返す

「俺が聞きたいのは謝罪じゃない、何があったかを説明しろと言っている」

一人を除いてフーガの圧倒的な威圧感に場が硬直状態に陥っていた。

圧倒的威圧感に屈しない様子のレインがフーガの前に立ち指をさす。

「おいおい!あんた!こいつ等のボスか?

あんたんとこの騎士団じゃぁ武器も持たない一般人に

危害を加えてもいいなんて方針を立てってんのか?」

レインがフーガに突っかかるとその場にいた全員が

二人を見たまま呆然としていた。

「ロメット、この件は父上に報告させてもらう。いくぞ」

突っかかるレインを無視したまま振り返り

その場を去ろうとした

「無視すんなよなぁ、こっちは聞いてんだよ答えろ

偽聖騎士様よぉ」

去ろうとしたフーガだったが再度振り返りレインの前に立ち

長槍の矛先を向け冷静に怒りを見せた

「偽聖騎士か、貴様面白い冗談だ、

このフーガ・グレイメネスこのような侮辱を受けたのははじめてだ」

「・・・ったく笑えねぇぜ。

店主!二人を連れて店の中に入ってな!

このド派手野郎は少しお仕置きが必要みたいだ」

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