第2話 金なしハンターと麦わら帽子の女の子
レインが街に着いたころにはすっかり空は明るく、
朝を迎えていた。
「あぁまぶしいなぁすっかり朝になっちまったか、
まぁ大農場まで半日近くかかるし、しゃーないか」
レインは、大きく口を開けあくびをしながら
「くそ眠ぃ、どっかで宿借りて眠るか
しかし昨日の飯が高すぎてもう軍資金がなぁ・・・
そろそろ騎士団本部に戻んねぇと・・・はぁ~~~、」
と大きなあくびの後大きなため息をついてがっかりしながら空を見上げる。
そんなこんなで街をフラフラ歩いていると宿屋の前に着いた。
「うむぅ着いた・・・しかし格安で宿貸してくれるかねぇ、
この街は元々活気がないのに加え大農園のこともあって何もかも
高値だからなぁ・・・だめならひとまずそこらへんで寝るしかないな、
本部への連絡は早いうちにしたいってのに」
宿屋の前に立って一人ぼんやりしながら呟く、
そうしてレインは宿屋に入り交渉にに入る。
「すいません!宿を借りたいんですが、格安にしてくれませんか!!」
レインは堂々と格安で泊めてくれと交渉とは言えない交渉をするが
案の定店主はあきれ顔ですぐさま答えた
「格安で泊めろだぁ?値段書いてあんだろ!
冷やかしか?金がねぇなら出て行ってくれボウズ」
「あぁぁーー・・・」
反論もない、最初からそう言われる予想はついていたが
ここまでストレートに言われ言葉にならないような声が、喉の奥から出てしまった。あきらめず再度交渉する
「冷やかしのつもりは無いんだ!!少しだけ休憩させてくれるだけでいいから!」
宿主は黙って首を横に振り出口を指さした
「・・・・わかったよ、ったく出ていきますって、」
不機嫌そうにとぼとぼとレインは宿から出ていく
外に出てまた空を見上げると、睡魔がだんだん襲ってくる。
周りを見渡し少し日陰になっている場所を見つけ
諦めたように座り込み目を閉じて、ひと眠りしようとする。
「ねぇ、ケガしてるの?そんなところで寝ちゃダメだよお兄ちゃん」
レインは閉じていた眼を開いて声のする方をぼんやり見つめる
「あっ起きた、お兄ちゃん血が出てるよ?
ケガしてるの?よかったらノノのお家で手当てしてあげようか?」
レインの目の前にいたのは大きな麦わら帽子をかぶった
5歳くらいの女の子で物珍しそうな顔をしレインを見つめていた。
「あぁ・・・血は止まってるから手当は大丈夫だ、
ノノ?ノノって君の名前か?」
「うん!!あたしノノっていうの!お兄ちゃんはどうして
こんなとこで寝てるの??」
レインは少しめんどくさそうに、遠くをみつめ答える
「んー昨日大農園に行ってきて、今街に戻ったところで
すげえ眠いんだよ兄ちゃんは・・・」
とレインは大農園に昨日行ったことを少女に話しながら寝落ちしかける
「えぇ~!!お兄ちゃん大農園に行ったの??
大農園には化け物さんがいるから絶対に近づいちゃダメって
ママが言ってたよ、それにね、この間も騎士様が街に来て
大農園に行ったきり戻ってこないんだよ!!」
少女は驚いたように大声でレインに問いかけた後騎士のことを話した
「・・・あぁ~大丈夫大丈夫、大農園の化け物さんってのはお兄ちゃんが
やっつけたし、騎士様はきちんとお家に帰ったよ」
少女に心配かけないよう、嘘と本当を交えながら少女に説明すると
目を輝かせながら少女が詰め寄ってきた。
「すごぉぉい!!お兄ちゃん!!化け物さんをやっつけたの!?
これでパパのお店にもまたお客さんがたくさん来てくれる!!」
嬉しそうに笑顔で両手をあげながら喜ぶ少女を眠そうにしながらも
レインは微笑みながらみつめる
「パパはね、お料理屋さんで街で一番おいしいって有名なんだよ!!
そうだ!お兄ちゃんもパパの料理を食べさせてあげるね!!ついてきて!!」
無邪気な笑顔のまま座り込んでいるレインのコートを引っ張りながら指をさす。
「・・・眠い・・・」
レインは小声で言いながらゆっくりと立ち上がり少女の向かうがまま引っ張られる
「ここだよ!!パパのおみせ!」
目的地についた。
レインは眠そうに閉じていた眼を開き驚く、
そこは昨日自分が昼に食事を摂り、大農園のことを聞いた店なのだから。
驚いた顔のまま少女に引っ張られ店に入るとドアのベルが鳴り
店の奥から店主の声がし出てきた
「いらっしゃい」
「ただいまぁ!!パパ」
少女は被っていた麦わら帽子を置いて店主のもとに駆け寄りレインを指差した。
「パパこのお兄ちゃんね、すごいんだよ!!
大農園に行って化け物さんをやっつけてくれたんだって!!」
店主は娘の話を聞きながらレインを見て少し驚きの表情を見せたまま、口を開いた
「!?本当なのか?たった一晩しか経ってないのに?」
レインは店主の言葉を聞いて少しニヤリとしながら
「悪りぃなぁ店主、俺は仕事が早いもんでねぇ、
約束通りリーズナブルな価格で料理頼むぜ?」
「もちろんですお客さん。食材が届き次第約束は守らせてもらいます。
お客さんにはぜひ私の作る料理を堪能していただきたい
・・・この街を救ってくれてありがとう」
店主は微笑み頭を下げレインにこころからの礼を伝えた
「パパ、お兄ちゃんと知り合い?」
娘の質問に父である店主が答える
「あぁこのお兄ちゃんはね、昨日来てくれたお客さんなんだよ」
店主と娘が話しているのに対し、またもや睡魔がレインを襲い
立ったまま寝落ちしかけてゆらゆらと揺れていた
「そうだ!!お客さん今から大農園まで馬車を出して、
食材をとってきますのであと2時間ほど・・・・
おぉっと!お客さん!!」
食材を取りに行くという店主が話してる途中で完全に寝落ちしたレインが
頭から前に倒れこむところをギリギリ店主が肩を掴み支えた。
店主は支えた右手に違和感を感じ、ゆっくり確認すると
右手には血が付いていた
「お客さん!!大変だ、ケガしてるじゃないですか!」
「・・・いってて・・・そこ傷口、」
倒れこむレインを支えた手はあろうことか
昨日の吸血鬼に噛まれた傷口の真上だった。
「あぁなんてことを、すいません」
店主は慌てて肩から手を離した
「まぁ大丈夫・・・全然平気」
傷口が開き血が出ているがそんなことよりレインに
とっては睡魔をどうにかする方が優先だった。
「・・・お客さん、お疲れの様ですし食材を取りに
大農園まで行ってくるのでそれまでの間
もしよかったら2階で休んでいて下さい。」
「えっ?いいのか?」
レインが眠そうに聞いた質問に対し店主は勿論とばかりに答える
「もちろんです!料理ができたらお呼びしますので、
それまでゆっくりしていってください」
店主は笑顔でそう言うと、しゃがんみこみ娘の方を向く
「じゃあ言ってくるよ。さぁノノお客さんをまず浴室に案内してあげなさい」
「はぁーい!お兄ちゃんこっちだよ」
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