第88話

「まぁ、そういう感じで報告しておきます。詳しく調べる必要があれば上が別に調べるでしょう。あぁ施設については別に調査隊が入ります。維持するか埋めるかはわかりませんが、今の所入口はあそこと食堂の隠し扉しかみつかっていません。学園の方に迷惑をかけるかもしれませんのでその点ご了承いただけると幸いです。詳しくは後日担当の者がご連絡しますので」

「わかりました」

 そして隊長は最後の問題に取り掛かる。

「これで大体解決ですね。最後の問題となるのはエヴァさんの今後ですが、これについては上からまず本人の意見を聞いてくるようにと言われています」



「とりあえず、帝国にはいろいろ思うところがあるから今の所は恭順するつもりはないわ。ただ、じゃぁどうする、って言われると特に行く宛もないの」

 エヴァはそう言った。

「今更人間相手にとやかく言うつもりはないからこそここに座っているわけだけれど、外にでるのもひさしぶりのことで」

「そうでしょうね。吸血鬼の能力は需要がありますから、世界どこの国や貴族でも受け入れてくれるとは思います。対価を求められますが。そうじゃなく、国に恭順を示さない方向性でいたい、というのも通りますし、そういった形で街中で暮らす吸血鬼もいます。どちらの方向性であっても、危険性がなく法を守るのであれば吸血鬼というだけで討伐されることはありませんよ」

「そう、でも、どうしようかしらね」

 そう言って考えるエヴァ。

 考えるだけで絵になる。

「まぁ、しっかりと考えてください。今更、ちょっと考えたって死ぬことはありませんよ。でも当分の居場所だけはハッキリしてもらいたいんです。騎士団のほうから首都の吸血鬼達に話をしてみましょうか?」

「好意はありがたいわ。でも今の吸血鬼達も困らないかしら?」

 確かに百年墓の中に封印されていたという人の扱いは吸血鬼でも困るだろう

「よろしければ、うちで働きませんか?」

 そんなエヴァを見て学園長はそう言った。


「今回の騒動で警備を強化すべき、という意見が内部からでていてね。まぁ今回の騒動はそこの子たちの自業自得とはいえ、実際不審者がたまに現れるんです。妙なこと考えている男とか。コソ泥とか。いたずら好きな学生とか。吸血鬼ならみんな文句言わないわ。夜間の警備なら問題ないでしょう」

「まぁ、人間なら負ける気はないけれど、いいのかしら?」

 エヴァの疑問。

 ドーリーとVは学園長はなかなかとんでもないことを言う、と思ったが黙っている。

 関係ない事だ

「事情は特殊、とはいえ大体わかってるわ。学校の方は適当な理由をつければいいし、騎士団の方もよろしいでしょう」

「まぁそういうことでしたらこちらとしてもありがたいです」

 あぁ、厄介な人を引き受けることで騎士団や役所の印象をよくする、という意図もあるのかというのはドーリー。

 最強の一角を担うモンスターが学校警備してくれて、なおかつこの国最強のモンスターの印象もよくなる。悪いことではない。


「なら、お願いしようかしら」

「それじゃぁこれで解決ですね。いや、書類仕事の方が面倒だ」

 隊長はそう言って話を終わらせた。

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