第86話


「封印で使ったんじゃないか?」

「封印、エヴァさんのですか?」

 ドーリーのつぶやきにVは答える。

「言ってたじゃないか。死体をささげる秘術だとか」

「えぇ、聖騎士団の連中はそんなことを言っていたわね」

 エヴァの言葉。


「古代の魔法だけどそういう魔法は確かにあるわ」

 Vも知らない魔法だったが、そこは学園長が知っていた。

「死体を捧げて何かしらの効果を得る、簡単に言えば生贄よね。羊の死体ならともかく人の死体をとなると倫理的問題があるし、それに伴う墓荒らしなんかが多発して国が取り締まった結果、大戦前には廃れていたわ。今となっては戦場でも歩き回らないと死体を集めるなんてことは簡単にできないし、殆どは代替えの魔法はあるから本格的に復活する見込みはないわね」

 詳しい説明。正確には一部、かなり特殊な医療系の魔法に残っているがこれもできる限り人道的に死体を集めるように国が監督している。

そこでドーリーはVに聞く。



「俺の知識の再確認だが、魔法、ってそんな何百年も効果が維持できるものじゃないだろう?」

「魔法と言っても様々ですから。でも確かに一定期間を超えたら効果は消えるというのも多いです。まぁその期間も様々で、あの地下墓地にかかっていた魔法は、まぁ少なく見積もっても今日明日に効果が消えるなんてことはないでしょう」

「もし消えたり消えかかっていた場合はどうする?効果を維持したい場合は?」

「一番安易なのはかけ直すことですが、コストが高いです。コストが低い方法として効果を引き延ばす方法もありますが、引き伸ばすたびに魔法の期間はどんどん短くなりますから繰り返すと結果的にコストは高くなる。あぁ」

 質問に答えながらVはドーリーの言いたいことに気づいた。

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