第84話

「昨日の件についてはこれで終了です」

 まず最初に取り組んだのは昨日の件、つまり三人の行方不明事件。

 騎士団を動かすことになったが、比較的裕福なの三人の両親は事件を大事にしたくないという事、また三人も特に、それでいいのかは知らないが、問題にしていないという事。

 また相手がどこの国にも従属していない吸血鬼であることから、司法として取り扱える事例ではなく、といった具合の報告書を隊長が上にあげてこの件は終わり。

念のために三人とその保護者からその旨を一筆かいて貰っている。


「次にエヴァさん。あなたが過去に起こした事件についてですが」

「修道会襲撃?」

 一応の確認としてVが聞く。

「そうです。その件について騎士団の記録を調べさせましたが、まぁその、妙なことに書類上では解決しているんです」

 なんとも言いにくそうに隊長は続ける。

「妙な事?封印も一つの解決ではあると思うけど」

 エヴァはその態度を疑問に思い聞き直す。

「いえ、その、騎士団管轄の記録上ですが、修道会の報告では討伐を完了した、つまり、まぁ本人を前にこう言ってはなんですが、復讐として修道会を襲撃したあなたを殺害、まぁ討伐した。その際、遺体は欠損が激しかった上に問題の発生源に云々、なのでその場で処分をした、という旨の報告を国にあげているんです」

 聖騎士団をはじめとして各種自治組織の管轄だった事例に関連する事柄は現在においては一括し騎士団が管理することになっている。

 そのため修道会などが国に出した報告書なども騎士団が保管することになる。なのでこういったこともわかるわけ。


「記録の間違いがあるんじゃないか?お役所仕事ではよくあることだろう」

 ドーリーが横から口を出す。

「まぁそれも考えたが、騎士団から出された報告書の写しが丸ごと残ってますからそういうのはないんじゃないかなぁ、というのが個人的な考え」

「じゃぁ虚偽の成果報告を帝国に渡した、ってことですか。神様を信じてるのに」

 Vもつい横から口を出す。

 冒険者業界でも適当な成果報告で報酬だけ掠め取る連中がいるが、修道会は信仰者だ。

 その上一般人より監視や監査が厳しいであろう国相手にそんなことをよくやる。

「そうなる。なるけれど、なんでそんなことをするのかがよくわからないんだ」

「それについては、私が説明できるかと思います」

 新人教師はそう口を開いた。


「学園長先生の指示のもと、引継ぎの際の古い書類を片っ端から調べてみたんですが、どういいましょうか、まじめに信仰の道を歩む修道会、ってわけじゃなかったみたいです。水増しした計画や存在しない成果で国からの支援を多めにちょろまかす一方でそれを元手に商売していたみたいで、裏帳簿、っていうんですか?そういう物が見つかりました」

 そう言って三人が持っていた箱の中から紙の束を出して隊長に渡す。

「学校の会計に見せたらその類の物じゃないかと、そういった記録の中に当学園、というのもあれか、修道会がこの土地を選んだ由来的な物も混ざっていまして、そこにはモンスター討伐の成果を認められこの土地に修道会の施設を作る許可をえて、そこに本部を立てたと。そういった旨の内容でした」

 新人教師はそうってほかの書類も引っ張り出す。精査する内容があるかもわからない、と言っても廃棄すべきではないとはわかる紙の束。なので長年地下倉庫に放置されていた。

 だから非常にかび臭い。

「その、エヴァさんの討伐に失敗した、となるとこの許可に関わるわけですし、どうも清廉潔白とは言えない組織だったようですから、虚偽の報告を国に出して納得させた、ということではないでしょうか?」

「そうなると、封印、という解決法も納得できますね。倒せなかったが追い払いました、では何かのきっかけで露見する可能性がある」

 Vはそう言ってその意見に賛成。

「見つかっちゃまずいものを見つからないように埋めたんですか?」

「私、ちっちゃい頃、お父さんお気に入りのコップを割って庭に埋めて隠そうとしたことがありますけど、同レベルですよね。やってること」

 この会合から解放されない、というより面白い話で解放されたくない三バカはそんなことを言って話をまとめた。

 大人たちはあえて何も言わなかったが、三人の意見に心の中で同意。

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