第74話
「それで、えぇっと、どこから話そうかしら。難しいのよ。説明が」
「どこからでも、じゃ困るでしょうし、とりあえず名前教えてもらいませんか」
三人は比較的明るい暖炉の前で座って話し始めた。
この暖炉の煙突はどこに続いているんだろうか、とドーリーはふと思う。この部屋も空気の換気口みたいなものがどこかにあるのか。
ちなみに残りの三人は立って労働している。反省しろ反省。のドーリーの掛け声で強制労働の刑が続行中。
「私はエヴァよ。エヴァ。言ってなかったはずだけど、人間じゃなくて吸血鬼なの」
「それは何となくわかってました」
「人間は壁抜けなんかできないしな」
金髪の女エヴァは二人の反応にふっふと笑って続ける。
「私がなんでここに居るか、は私もよくわからないけど、修道会の連中にここに封印されたのよ。彼女たちの服と同じものを着た男たちにね」
「へぇ、なるほど」
なにか返事をすべきだと思ったので返事をしたが何か間抜けな返事になってしまった。
「あれは、何時の話になるのかしら」
「当時の帝国の皇帝の名前、わかりますか」
昔から帝国の歴史を語る際に使われるのが皇帝の名前。
「我が国では〇〇様が帝国を治められていたころ」という基準は帝国民にしてみるとわかりやすいので歴史学の整備がすすんだ今でも庶民の間では広く使われる基準の一つ。
「確か〰〰とかいうのが即位した頃ね」
そう言ってエヴァは皇帝の名前をあげる。
ドーリーは知らない名前。Vは記憶の端っこあたりにある名前だが何時頃までは特定できない。
「それは大戦初期の皇帝陛下ですよ。即位の期間は短くて大戦がはじまってすぐに代替わりしたはずです。地図の作成や基準の統一などをやったとか」
横から口を出したのが三バカの一人。オカルトだけではなく歴史にも詳しい。
「あの頃ね、私と旦那に対して討伐隊が結成されたの。修道会のね」
「修道会の討伐隊?」
吸血鬼狩りの絵を思い出すドーリー。あぁいう光景ということだろうか?
「そうよ。修道会や教会は年中吸血鬼やモンスターの討伐隊を組んたわ。教会の名誉とか帝国の忠誠とか、なんとか言ってね。今はやらないのかしら」
「大体の吸血鬼は大抵どこかの国に従属してますし、悪い吸血鬼を捕まえるならならまず国の従属する吸血鬼が呼び出されますね。もしくは冒険者」
「そう。まぁ彼らの大半は利権目的だったみたいだけど、その中でも〰〰修道会は吸血鬼退治で有名だったの。その三人の服の所ね。私に差し向けられたのもその一派だった」
「私の旦那はね。私を逃がすために奮闘してくれたわ。でも、正直彼は戦う人じゃなかった。だから死んだ」
吸血鬼には老衰というものはないと言われている。ただ彼らも死なないわけではない。
戦って死ぬか。吸血鬼のみに発症する特殊な病気(吸血鬼の世界では死神と言われているとか)で死ぬかだ。なので寿命を平均すると人間より短いとも、人間より少しだけ長い程度だともいわれている。
言われている、というのはよくわからない部分も多いため。
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