第73話

「それで、なんで強制労働の刑ですか」

三人を横目で見ながらVは女に聞いた。

「聖騎士団の関係者かと思って」

「聖騎士団じゃありませんよ。何回言っても聞いてくれないんです」

「だってさ、新聞?とやらを作ってるとか言われても、その格好で信用する気にはなれなかったんだもの。あの連中は男だけだったはずだけど、身の危険を考えれば多少手荒な真似をしてもいいかなって思えたの。まぁ、飢えないようにいろいろしてあげたじゃない。上から貰ってきたのよ」

 女の口ぶりから見るに、まぁ三人を殺す気はないようだとはドーリーの考え。

 しかし女の話はなにかおかしい。

「聖騎士団は実権がないお飾りか、せいぜい教会内部での風紀取り締まりくらいしかやらないよ。昔ならいざ知らず、今は追われたところで身の危険なんてないさ」

「そうなの?」

「そうさ。皇帝陛下に権力を取り上げられたんだ。いつの頃かまでは覚えてないが、少なくとも俺が生まれる前の話だ」

 三人の学生にとっては歴史の勉強の際にでてくる話。

 女の顔には困惑の色が見える。

「それにあなた、その制服を見て聖騎士団だと思ったんですよね」

「そうね」

「その制服の聖騎士団は今はありませんよ。修道会の聖騎士団の制服だったらしいですけど、時代の流れでよその学校と合併ってことになったらしいです」

 金髪の先輩と初めてあったときに聞いた話を思い出しながらVは言った。

しかしよく考えてみるとこの話はおかしい。宗教団体である修道会がなぜ学校と併合されるんだろうか?とはドーリーの疑問。

「えぇ」

 こうなると女は愕然という感じ。

「そんなことになってるの。どうして?私はここに居るのかしら」

「それは、わからんとしか」

「僕もわかりかねますから、まぁその、よろしければ事情を伺えませんか」


 二人にそう言った相談事を受ける義理はない。しかしここでこの女性の機嫌を取らなければ、三バカ大将と二人は封印された部屋から外にでることができないのだ。機嫌をそこねるわけにはいかない


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る