第75話
「それで、私は」
そう言って黙るエヴァ。少し皮肉そうに笑って続ける。
「復讐を考えて。首都に来て。聖騎士団と戦ったのよ。で、死にはしなかったけど負けて。ここに長い事封印されたようね」
妙に落ち着いている。
封印。墓の奥だけ妙に厳重な魔法がかかっていたのは吸血鬼を封印していたからか、とはVの考え。
まぁでも、100年も地下深くにいたら今更愛しの人の復讐だって気概もわかないか。時は流れる。人は変わる。組織は消える。とはドーリーの考え。
「最近になって封印が解けたようで目覚めてね。でもどうしたらいいのかわからなくて。墓の中や夜中、人に見つからないように外をうろうろしてみたけど、何もわからないの。どうなってるのかしら」
「話のあらすじはまぁわかりました。わかったんですが、うーん。ここに居ても全部説明できるか」
Vはエヴァの話を聞きそう答えた。確かに大体わかったが、いろいろ欠けている。
「えぇ、取り合えず半分興味本位で聞きたいんですが、封印って?」
「長いあいだ寝かされていたの。連中は死体をささげる秘術だとかなんとか言ってた思うけど、詳しくはちょっと」
「そんな魔法あるのか?」
「わかりません。ただ昔の魔法はトンデモない物も多かったって話ですから、あってもおかしくはないと思います。しかし、かなりの期間寝てたわけでしょう?」
それにしては元気そうだ。100歳越えのおばあちゃんとは思えない。
「吸血鬼は寿命や空腹では死なないわ。死ぬのは戦いと死神に肩を叩かれた時だけ。年については、不思議ね。私もわからないわ」
「魔法のせいじゃないか?」
そうなんだろうか?そうしておこうか。という事でVは納得した。
「えぇ、じゃぁまぁ、話の筋をさらう要領で話していきますが、まずエヴァさんが首都の修道会付きの聖騎士団に戦いを挑んで負ける。で修道会は何を思ったかあなたを地下深くに封印した。なぜでしょうか?」
「私に聞かれても」
「封印されたモンスター、って伝説。よく聞きませんか」
三バカも手を休め話に首を突っ込んでいる。
そもそも好奇心旺盛。だから新聞を作っているし、だからここに囚われている。
「どこかのダンジョンに住み着いてるモンスターを倒せないからダンジョンと一緒に封印。って話なら分からないでもないが、外から来た危険をあえて首都の地下で封印する理由はないよな。倒せなければ追い払えばいい」
街角に現れるクマを殺せないからと、その街の地下でクマ飼うなんて判断はしない。応援を頼むか追い払うかだ。
「まぁその辺はおいおいわかるでしょう。それで封印されて150年以上経ちました。はい。150年」
「そんなに?」
「話を聞くと大戦直前か大戦がはじまってすぐ位の話ですから、勘定としてはその位だと思います。それでこの地下墓地に封印されていたわけですけど、長い歴史の間でこの地下墓地は放棄され、修道会がなくなります」
「修道会がなくなる」
どこか悲しそうな声。彼女の記憶と今を繋ぐ唯一の物。
「えぇ、残ってるのは厳ついその制服だけ。何か知ってる?」
Vの疑問に三バカの一人が答える。
「学校の歴史としては知ってますけど、その修道会の名前とかどういう教えだったとかまでは知りませんね。誰もそこまで興味ないし」
「でも吸血鬼退治ではすごく有名な修道会だったのよ。吸血鬼の中でも名前は知られていたわ」
エヴァはそう答える。
それに対してドーリーは一つ質問。
「それ以外には?」
「それ以外?」
「教えとか神様とかさ。宗教組織なんだから戦いだけじゃなくてなんかほかの話題があるだろ?信者の多さとか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます