第71話


時間的には少々さかのぼる。

地上 職員室

「この度はもうしわけございません」

「いや、生徒が行方不明というのは大事ですから」

 この地区を巡回する騎士団で連隊を率いる隊長が言った。

 冒険者二人は巡回中に見つけてくれるだろう、と言っていたが騎士団は首都で女学生が行方不明というのは事件、事故の可能性があるとして通常の訓練を切り上げて捜索隊を作ることにした。

 まぁここまでするのは三人がそれなりに金持ちの家の娘で、しかも学生が多い地区で国からも重視されている女学校の生徒という事も大きい。

 つまりしっかりと対応することで恩を売っておきたいのだ。またこういった事件にもしっかりと対応する、という事で騎士団の評価アップも狙いにある。なので比較的地位が高い連隊隊長も出てきた。

 これが首都の貧民であれば、一人二人消えようがこういった対応は見込めない。


「この界隈では泥棒もありましたしね」

「泥棒ですか」

 具体的な捜索手順や場所の策定は部下に任せている。

 教師たちは騎士団の指示に従い彼らの補助。

 決まり次第捜索に動くことになっている。

 教頭はこの集団の責任者である隊長につくことになった。

 

物々しい体制とは言え騎士団の人間はそこまで大事と考えてない。話を聞いても事件性が見えない。どうせ家出か駆け落ちか、そんなもんだろうくらいのノリ。なので隊長も世間話で接待感覚。



「えぇ、そっちはなんとも奇妙な話で。ほらこの地区の外れに農業を教えてる学校と縫い物や料理を教えている学校があるでしょう」

 そう言って名前をあげる隊長。

「あぁ、わかります」

 この界隈は学校が多いので教師も多く、教職同士の横のつながりも広い。特に家政を教える学校とは授業などで双方協力している関係。

「あそこに泥棒が入って、農業の方では生きた鶏だの野菜だの盗んで」

 食べ物を盗む。というのは別に珍しくない。

 首都はでかいのだ。金持ちや貴族が居ればそれ以上に貧乏人もいる。

「はぁ」

「縫物の方からはモップだのと言った掃除道具に鍋やら包丁やらの料理道具と、あと生徒が作りかけていた布と切り出すときに使う紙、あれって何ていうんでしょうかね」

「型紙ですか」

 縫い物など縁がなさそうな中年男二人だが、教頭は女学校の責任者。休みの先生の代わりに授業をしたりで、基本的な知識くらいは知っている。

「えぇ、そうです。そんなのを盗んだって話で。セキュリティ対策の鍵や魔法やらは一切構わず外から入ってそのまま出て行ったって凄腕なんですが金目のものは無視してですね。しかも妙な話に「諸事情で貰っていきますがこれは代金です」なんて書置きと偉く古臭てちゃっちい金貨が置いてあったって具合で」

「ちゃっちい金貨?」

「これです」


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