第68話

 闇から聞こえる女の声。

 Vは持っていた松明替わりの木の棒の明かりを消して、声の方に投げつける。

 ドーリーは手に持っていた木の棒をVになげて、両手で剣を構えなお

「きゃ!いきなりなによ。失礼じゃない」


「もう、嫌になるわね。挨拶位しなさいよ」

 そんな事をいいながら闇夜から出てきたのは女。

 金髪。長身長髪。黒いシンプルなドレス。「かなりの」と形容しても足りない位の美人。

「冒険者だ。人を探してる」

「冒険者?というか随分と警戒してない?」

「長い間人間が入らない忘れられた墓場の中で、私たちが探してる人間以外の人間が居る。というのは十分警戒すべきことですよ」

 ドーリーから受け取った明かりを前に突き出しながらドーリーの近くにつくV。

 ドーリーは後ろ手でVに先ほどのナイフを渡す。目線は外さない。

 自分はさび付いて鞘から抜けない剣。でも鞘は頑丈な金属なのでこれで叩けば人は死ぬだろう。

「やっぱここ墓場なの。やだ。あの連中死んでもないのにこんなところに閉じ込めてたんだ」

 二人は警戒するが、女はどこか飄々としている。

「別にあなた達を取って食おうって気はないわよ。面白くないし。今はおなかはすいてないの」

「面白くないってね」

「まぁ」

 

 二人は女から視線を外していなかった。が彼らの視線の先から女は消えた。

 意味がわからない。理解の外。


「そちらがやる気ならお相手するわ」


 その声は二人の耳元から。

 すぐ後ろにいる。

 これは人じゃないと感覚でわかる。

 人型のモンスター。血の匂いがするあたり吸血鬼かとはVの判断。


「お言葉に甘えますか?」

「そうさせてもらおう。お前謝れよ」

「さっきは失礼してすいませんでした。ケガとかしてます?治しますよ。魔法使えるんで」

 そう言って武器を捨てるドーリーとV。

「いや、なに、あなた達ずいぶん聞き分け良いわね。戦わないの?男でしょ?」

「戦って金になるわけでもないし」

「金にならない戦いなんかしてもね。戦わないってならまぁお言葉に甘えて平和的解決でいいじゃないですか」

「あぁ冒険者って傭兵みたいな人なの?でも不思議な人ね」

 墓場にいきなり現れるあなたに言われたくない。と二人は思ったが、やめておく。

 どう考えても勝てない相手。装備もないし要らないことを言って機嫌を損ねたくない。すでに失礼はしたが、まぁ相手は気にしてないようだし、あえてとやかく言っても仕方ない。

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