第63話

 射撃場の外れ

 練習の際も近寄らなかった。周りの建物には微妙に遠いし通り道という訳でもないから誰も近寄らない。


「ここです。ここ」

 後輩の案内で連れてこられた先には地下に続く鉄の扉があった。

「なんだ。これ」

「わかりません」

「わからない?」

「なんか昔からあったらしいんですけど、だれも気付かなかったんです。ここにあった建物を壊した後に私たちが気づいたので先生に報告したんですけど、先生たちも知らないとかで。この扉は後からつけたものです。中にも木の扉があるんですけど、その中はよくわからないです」

「まぁ見てみようか」

 そう言って扉を開けるドーリー。


 中は埃ぽかった。

 簡易的に作られた階段。その先に頑丈で安価な木で作られた扉。

 床にはこの扉を付ける際に使ったのであろう、木材のあまりや切れ端が転がっていた。

「工事現場っぽいな」

 ドーリーの感想。広さとしてはドーリーとVが二人並んで歩ける程度の広さがある。

 なので後輩は二人の後ろ。

 明かりは後ろの扉から差し込む光だけ。

「多分発見した後にここら辺だけ簡単に整備したんじゃないですか。で、これ」

 Vは扉の前に落ちていた鎖を持ち上げる。

 簡易な錠が引っかかているが無理やり切られている。

 おそらく魔法。じゃなければ工具。

「そういえば先生たちが相談して詳しく調査するまで立ち入り禁止だとかでなんか工事はしてましいたね。でもそれ以降、調査の人が来たとかは知りません」


 実際調査などしていない。

 予算がない。安全の確認ができない。予算がない。行政に協力を依頼しても後回しにされる。予算がない。

 理由は大体こんな感じ。

 生徒や事情を知らない部外者が立ち入らないように学校整備の予算で入口部分の簡単な整備をして南京錠と鎖で封印はしたが、その封印を解こうという人もいない。


「V、後ろに。物を光らせる魔法あるだろ。三回叩いたらドアを開けるから、そこからアレを投げ込んで道を照らしてくれ。」

「わかりました」

 ドーリーの指示に従うV。

「君、もっと後ろに。で伏せて。〰〰〰〰」

「?わかりました」


 Vの指示に従う後輩。


 ドーリーが音が響くように勢いよくドアをたたく。


 ノックの音

 ノックの音

 ノックの音


 開けられるドア。その陰に隠れるドーリー。

 同時にVによって投げ込まれる木切れ。Vの魔法で明るく光っている。

 そしてドアが閉められた。


 10秒。


「問題ないみたいだな」

 物音がしないことを確認してそう言って再びドアを開けるドーリー。

 その先にはVの魔法に照らされた学生用鞄が三つ。

「やだねぇ。正解だよ」

 ドーリーはそう二人に言った。


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