第58話
この部屋には二人の部屋のようなかばんはない。
ドーリーとVは机の上と本棚を物色する。
「収納になにかないか探してみてください」
Vとドーリーは二人の女性にそう指示を出す。
本棚は先ほどの相部屋と同じようなものだが、こっちには比較的新しい資料が入っていた。あと神秘学や心霊主義、ようはオカルトや神話をネタにした雑誌や小説が入っている。これは私物だろう。
そしてベットの下に椅子が二つ。そして机の中には新しい原稿や記事を制作する道具。
「ここで記事を作って、どっかで印刷してもらってたんだろうな」
何に使うのか分からないペンを片手にドーリーはそう言った。
狭い部屋だ。三人集まれば文字通り額を突き合わせる形になるだろう。
「特にないですね。着替えや日用品だけです」
「そうですか」
Vとドーリーは机の中にメモを見つける。
おそらく次の記事の下書きとその記事を書くための下調べの手順だろう。そもそも取材で事実を確認する前に下書きを書いている時点でおかしいのだが、そういう新聞なのはみんな知っている。
「次の企画は、えぇっと、学園の地下に存在する神秘のダンジョン。そこに眠る古代のモンスター」
そこに書かれている見出しをVは読み上げる。
「今回はインチキ企画だね」
Vが読み上げた見出しを聞いた寮の管理人はそう答えた。
「あの子たちの新聞、適当に書いたインチキ企画とまじめに取材する記事の差がひどいんだよ。まぁそういうごちゃまぜ感が読者に愛される秘訣なのかもしれませんけどね」
「学校から認められている方の新聞は、まぁちょっとお堅いというか、学校と先生の方ばっかり向いていて面白味がなくて。彼女たちの新聞は学校なんか気にせずずっと読者の方を向いてるから、インチキ記事でも愛されるんです」
司書も管理人も三人に悪い感情は持っていないようだ。
「ある意味、あの三人はこの学校の生徒らしいですよ。この学園は自由活発、独立独歩の活動が愛されて認められるんです」
「なるほどね」
以前教頭から受けた説明を思い出しながらドーリーはそう納得した。
学園長も先日は処分しない理由によくわからない適当な理由を並べていたが、結局彼女達の自由な行いが好きというだけなのだろう。とはVの考え。だから自分の財布から金を出してまで僕たちに探させるのだ。
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