第57話

 二人の女性は相部屋の中でそう解説。

 相部屋に並んでいるのはベット、それぞれの机、共有の本棚、そしてちょっとした収納。着替えなどが詰まっていたり、勉強道具が詰まっていたり。

 二人のベットの枕元には鞄。学校指定のものではない。

「お二人はそれの中身の確認を」

「はい」

 なぜか指示される立場になった二人。まぁ文句を言っても仕方ないし、生徒の荷物を冒険者に漁らせるわけにはいかない。

 その二人は本棚を物色していた。

 学校の授業に使うもの、使っていた物で3割。

 ノート、教科書、あと文房具。


 そして3割は、雑誌や書籍類。首都の貴族向けに発行される社交界新聞から大衆紙、高級紙の号外、街角でゲリラ的に張り出される怪しい組織の壁新聞、恋愛小説、古典文学、。変わった所では「文章の書き方」「手紙文例文集」などの本がある

 残りの4割は取材や新聞製作に使ったのだろう諸々の物。

 食堂の半券。近隣の地図。首都や国の地図。誰かを描いた絵。改訂したのだろうか、印刷方法や新聞製作の際の注意事項を書いたマニュアルが何冊。そして記事の下書き。

「まぁ、こういう熱意は認めないとな」

 乱雑に集められ、しっかりと整理整頓された資料を確認しながらドーリはそうつぶやいた。

「そうですね。ただこれ、前に使った記事の物でしょう」

 Vも答えてそう言う。少しだがほこりが被っているし、中身の日付などを読む限り過去の物。


「これは着替えとか、洗面用具、文房具の類が詰まっていますね」

 二人の鞄を物色した寮の管理人と図書館の司書は、そう答えた。

「使った感じはありません」

「そうですか。じゃぁもう一人の部屋に」


この学園の寮で住んでいる女学生たちの中で伝統的に行われる議論の一つは

「相部屋が良いか個室が良いか」

という事である。

 というのも個室はプライバシーが守られ比較的自由だが、その分狭いのだ。

 だったら友達と相部屋を分けてつかったほうが良くない?という意見は根強くあり、それを実践する人も多い。


「せまいな。おれの部屋より狭いぞ」

「一人暮らしで食堂やトイレ風呂は別ならこんなもんでもいいんじゃないですか」

 二人の意見の違いが、この議論が何年も続く原因を端的に表している。

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