第55話

「しかし大騒ぎだな」

 ドーリーとVはそれ以上関わるつもりはなかったが、だからと言ってすぐに立ち上がれる感じでもなかった。

 職員室の真ん中、先生たちはざわざわしたり授業などの準備をしていたり捜索の手はずをととのえていたりする。

 ここで「じゃぁそういう事で」とさっと帰れるほど、二人には度胸がない。

 とは言っても座ていても邪魔なものは邪魔。という事で立ち上がろうとしたときに

「ドーリーさん、Vさん、いいですか」

と学園長に声をかけられた。


「お二人さん、今から何かご予定はありますか」

 学園長と連れ立って歩く廊下、人通りが少ないが、これはみなそれぞれの活動か授業に励んでいるからだろう。

 時間帯的に言えば、先週まで二人に弓を教えていた時間か。

「特に何もないですが」

「俺もない」

 進んだ先は、吸血鬼狩りの絵の前。この隣の扉が学園長室だそうだ。

「でしたら、よろしければですが、あの三人の捜索に協力していただけませんか。人手は多い方がいいですし。厄介事起こす生徒でも生徒ですから」

「そういう話ならまぁ、ね」

「そうだがねぇ」

 二人は正直乗り気ではない。

 その意を汲んで学園長はもう一押し。

「正式な依頼、という訳ではありませんが、協力して頂ければに私の方で少額ですが謝礼を出しましょう。学園の方から出せるかは微妙ですが、親御さんもそういった気がないというわけではないそうで」

 随分と遠回しな言い方だが学園と親については「成果がでれば考えないことはない」という事だろう。

 二人は顔を見合わせ、小声で相談


「どうします?」

「こうなると断りにくいぜ、俺ら一応今でも組合の顔みたいなもんだろ?」

「実際仕事があるわけでもありませんし、あの三バカ大将にも縁がないわけではありませんし」

「そうだよなぁ」


という事で

「そういったことでしたら、まぁ、協力させていただきましょう」

という運びになった。

「ありがとうございます」


 では、まずどこから調べるか、となったとき二人が選んだのは寮の自室だった。

「まず、部屋からだな。予定がわかる物があるかもしれない」

「女学生の自室を男二人で漁る、ってわけにはいかないから、誰か女性の先生をつけてもらいます?」

 二人はそう学園長に依頼し

「では寮の管理人と、あと誰か教師を一人向かわせましょう」

という事で二人は寮に向かった。

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