第42話

最終日


「正直、もう話すネタがないんですよ」

 今までの講習のまとめ、つまり

「怪我無く事故なくを心がける計画」

「手順の軽視をしない」

「応用は必要だけど、何より基本が大事」

とか、そんな感じで話をまとめたVからでた本音。


 そのため、昨日と引き続き冒険者全般の疑問を生徒から聞き、それを解説という感じになった。

 最終日とあってみんな二人に慣れてきているし、先生も関係ない質問でも失礼にならないなら最後位は多めに見ようかという雰囲気。

なので昨日よりもかなり緩めで個人的な質問も増えた。


 例えば


「冒険者って結局なんですか?どうやったらなれますか?」

「冒険者になったきっかけは?」

「彼女いますか?」


といった感じ。


それに対して

「いやなことを聞くなぁ。傭兵やってた頃は居たが、冒険者になってからそんな余裕がなくてね」

「ほとんど同上です。モンスター倒してモテモテじゃないの?まぁそういう「危険で強い男」アピールで女をたぶらかす遊び人みたいな人はいますよ。ただ大概、まぁ、ろくでなしってやつだから憧れ気はしませんね。みなさんもそういう男にはついていっちゃ駄目ですよ」


とか


「学校を諸事情で中退しまして。詳しくは聞かないで。いい話じゃない」

「俺は傭兵団首になったんだよ。専業の連中は訳アリも多いよ」


とか


「冒険者って結局なにかって、なんなんだろうな?」

「法的に言えば第一種と第二種、つまり


・自分でダンジョン攻略やモンスター討伐などの業務を計画する人

・第三者から依頼を受けてダンジョン攻略やモンスター討伐などの業務を計画する人


に分かれますね。冒険者の資格を取ってこのどっちか含まれる仕事をするなら冒険者です。けど「など」が幅広いんだよなぁ。むしろなどに含まれる仕事だけをやるみたいな人もいるし」

「冒険者でも組合に入ってれば冒険者業組合の事務所で仕事を受けられるんだが、これがかなり幅が広いんだよ。行商の警護とか施設の警備みたいな仕事はまぁわかるだろ?。腕自慢が求められるからな。けどどぶ攫いに草刈みたいな雑用、薬草を取ってくるとか特定の食品を確保してほしい、あと誰かに手紙を届けるみたいなやつもあるからな。そんなの別に冒険者じゃなくてもいい?それは俺も思う」

「逆に田舎のモンスター駆除なんか冒険者の資格を持ってない猟師がやることが多いですし、海の漁師の中には海辺のモンスター用の装備をして冒険者顔負けの勝負を繰り広げる人もいますよ。行商の警護とか施設の警備なんかも、別に冒険者以外がやって悪いってことはないですからね。あぁ、冒険者じゃない人が冒険してもなにも悪くないし騎士団に捕まるわけでもないから、極端な話、君たちが今からパーティーを組んでダンジョン攻略に向かってもいいんですよ。あくまでも法的にはであって、無計画に突っ込んだら死ぬだけだからやっちゃだめだよ」

「どちらかと言えば、そういう能力があるやつを国が把握するための制度が冒険者って仕組みって考えたほうがいいのかもしれないかな。俺は傭兵の頃に武器が購入がしやすくなるってことで冒険者の資格だけ取ったんだ。外国に武器を持ち出す際にも手続きがちょっと簡略化されたりするし、武器を使う商売だとなにかと便利なのは確かだよ。だから俺の例みたいに資格だけ持ってるって人は結構いるらしい。なんで専業冒険者としてはまだ新米、Vの方が先輩さ」

「資格の意義としてはそうなのかもしれませんね。メリットの監視の対価としてメリットをあたえる。専業の冒険者の多く、というかほとんどは第二種、つまり組合経由や個人的に発注された仕事を受ける請負業です。第一種もいますけど、こっちは本格的な装備が居るから参入ハードルが高いし、正直リスクが高い。失敗したら即赤字ですからね」

とかいう話をした。


あと

「あ、冒険者のなり方ですけど、組合行って書類出してお金払って講習受けてテストに受かって、あと簡単な面談を受ければ資格は取れますよ。今は2日くらい講義受けるんでしたっけ?僕の時は1日しないうちに終わりましたけど」

「俺がとったときは、10年くらい前だったかな、組合に書類一枚出して住所とか仕事みたいな簡単な面談を受けて終わりだったぜ。厳しくなったな」

 正直かなり緩いテスト内容をついでに紹介した所

「学校のテストも真似しませんか。先生」

との声が上がり

「無理だね」

とはっきりと返されみんなで笑ったもした。


 そして最後に教頭の挨拶、生徒達から簡単な感謝の言葉を聞き、少し早いが講習の終わりとなる。

 これで組合から受けた一つ目の仕事は終了である。

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