第41話


「あのですね、そろそろ何か書いてババーンって感じで配りたいんですよ。最近書いてなくて。ネタがないんです」

「なんで冒険者を口実になにかネタをと」

 冒険者というのは意外と会話スキルが求められる。情報収集は大事な商売。

 その二人の会話スキルを駆使、するまでもなくどうでもいい話で緊張を解いたら本人達からしゃべりだした。

「ネタってね」

 先輩が鞄の中から取り出した焼き菓子、本人曰くお菓子作りにはハマっている同級生から貰った、をみんなで齧りながらドーリーはそう呆れたように答える。


 味の評価は以下の通り

「このクッキー!クッキー?うーん」

「随分と、まぁ、うん、アレンジが聞いた味ですね。これ」

「ストレートに不味いって言った方が正しいんじゃないですか?」

上から後輩、V、三バカの一人。

「いや、弓の大会も応援にきてくれるすごくいい人なんですよ。ほんと。ただ、これだけは、まぁその、どうも、ね、オリジナリティ溢れる味なんですけど、私もこれ(弓を指さす)やってる手前文句をつけるようなことは言えなくて、まぁ、本人の趣味ですから、なんとも」

 総評としては、先輩の友人に敬意をこめて「オリジナリティがある味」としておく。


「まぁ、一つネタができたじゃないか」

 ドーリーは半分齧った焼き菓子を遠くに投げ捨てて

「さすがにひどくないですか」

「君らは半分も食べてないじゃないか。まぁネタはできたろ」

「いや、あの先輩のお菓子作りの腕、記事にしようかって話もしてたことがあるんで」

 ドーリーはあきれ顔。

「まぁ今回のネタは、冒険者、健気な学生三人を襲う、とかでいいじゃないの。ほらネタができた」

 これについて、二人は10秒ほどまじめに考えたが、

「私らの事ですか」

と気づく。

「そうだよ。冒険者に痛めつけられた三バカ大将ここありってな。読者はいい気味だと喜ぶさ」

 ドーリーはそう言って笑い、中断していた講習の再開を二人の生徒に告げた。

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