第27話

3日目 講義


「えぇ、他人の腕をつなげると自殺するという話ですが、僕もその例は見たことないんですよ。ドーリーさん知ってるんですか」

「あぁ、まぁ、知ってるってか目の前でみたんだが、説明が難しいんだな。まぁ、ぼつぼつと話すから聞いてくれ」


「いつだったか、まぁ戦争でさ、新人が前線で斬りあいやって腕を落とされて、後方に担ぎ込まれたんだ。そいつの腕だって腕も仲間が持ってきたから、団の魔法使いがつなげる処置をした。ほら腕を切り落とすくらいの大きなけがだと、大体1週間か2週間は腕が動かないだろ?その新人の場合処置が悪かったのか、治すまでに時間がかかったせいか、1月ほど腕が動かなかったんだ」


「確かに治療処置が悪いと繋がっても完治までが長引きますね」


「まぁそれでも命があって腕がつながってりゃ運がいいさ。その切り合いで死んだ奴だっているんだ。でも、だからこそかな、そいつは傭兵家業が怖くなっちまったらしくてな。傭兵団を抜けたいって言いだした。そういうやつはよくいるし、平時なら脱走するわけじゃないなら抜けてもらって大いに結構、むしろ腕が落ちるほど戦ってやめるならよく頑張ってくれたって褒めて見舞金を出すくらいの組織なんだが、団長は珍しく引き留めた」


「団長は腕が治らなけりゃ次の仕事も決まらんだろうから、それまでは雑用でもしながら所属してろと。今からよその医者探すのも面倒だろうし、時期的に完治するころには来月の給料もでるから見舞金と合わせて当分の生活費なり実家に帰る費用くらいにはなるだろうと。そういう旨のことをいった。新人も新米なのにやめたいって言いだした自分に対して、トップがそこまで気にかけてくれることにえらく感動してな、片腕ながら食堂の雑用やら荷物運びなんかをやって完治、腕が動くようになるまで団に居た」


「でだ、団を抜ける当日、諸々の書類や支払い、あと団から貸してた物の回収なんかをやった。その時に俺も手伝ってたんだが、最後に正式に辞めますよ。という旨の書類にサインするために羽根ペンを手にしたときに、そいつで自分の首を刺した」




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