第26話

「剣や槍まで教えるのか?」

「騎士団の補助職でも剣や槍の心得があると優遇されるんです。あと外国だと女性を前線で雇う所もありますし、女騎士団の入団テストとかありますからね」

「女騎士団のテストなんてお飾りだろ?」

「まぁ普通の騎士団のテストと比べればお飾りみたいなもんですが、それでも最低レベルは達成してないとさすがに落ちるんです。ほかには卒業後の嫁入りが決まってるから趣味でやるって生徒や、代々騎士の家系なので女も覚えるべしと、っと習う者もいます」

「はぁ」

 呆れているのか驚いているのか、ドーリーはそんな返事。

「もちろん受講者や講師の都合もあるので100%希望が通る、なんてことはありませんが、逆に言えばその都合さえ合えばできる限り配慮する方向性ですね。そのほかの課外活動は、法に反さず当学園の名誉を傷つけず、学業の負担にならないという条件の上ですが、おおむね何でも認めています。教会のボランティアや聖歌隊に料理、壁新聞、手芸、運動、彼女たちの弓もそのうちの一つです」

「すごい学校ですね」

 これにはVもあきれ顔。

「これがわが校の自慢、と言ってしまえば聞こえは良いのですが、今の社会においてはこのくらいしないと女子生徒の将来設計をするのが難しいんです。女というだけで雇わない所も多いですし、社会からの重圧もある。生徒の未来までは確約できませんが、それでもこの学校にいるはやりたいことをやり、この学園からでたらできるだけ上を目指してほしいんですよ」

 そう言って教頭はドーリーと向き合い、続ける。

「長々とお話ししてしまい申し訳ございません。事後承諾、という形になってしまいますが彼女たちの弓を見てやってくれませんか。期間が長くなるなどということはありませんからあと3日だけです。いや、何か簡単なアドバイスでもやってくれればいいですから。もちろんご負担になるようでしたら」

「いやまぁ、そういうことなら、はい。わかりました」


「今考えてみるとあそこで理想をならべたのは俺が文句を言いにくいように言いくるめるためじゃないかって思うんだよ」

とその日の晩飯、街の飯屋でVと食事をしたドーリーはいい

「気づかなかったんですか?」

とVに呆れられることになったが、今この時についてはドーリーはそれなりに考えてこの返事をしたし、返事をした以上働かなくてはならないと考えて実際に翌日から二人の指導を始めることになった。と言っても3日間だけだが。

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